迫り来る脅威
「まーだあの、クソッタレな結界は壊せないのかしらッ!?」
『ハハーッ。恐れながら申し上げますお嬢様。敵の多重結界による防御結界は、あまりにも堅固です。こちらの攻撃は全て無効化されます。恐らく敵側の戦力は、守りに特化した者達なのでしょう。全力で守りに入られていては、こちらとしても中々打つ手が無いのが現状です。このような報告ばかりが続いて、大変申し訳御座いません! お嬢様』
「ハンッ! まったく亀のように、身を守るだけしか能が無い奴等よな! あの忌々しい結界さえ壊せれば、私が一気に奴等の世界なんぞ、攻め滅ぼしてくれように」
『正にその通りに御座います。その結界を壊す為の策としては、繁殖力だけが取りの、最下等な魔物達を奴等の世界へと無差別に送り込んでおります。現時点では合計10万匹程です』
「……。その内、何匹があの結界をすり抜けられたの?」
『ハッ……。おおよそですが2、300匹くらいかと……』
「10万匹……。それだけ送り込んでやっと300匹程度とはね。最下級の魔物も通さない結界とは、正にクソッタレな性能の結界だね~ハンッ! 気に入らないねェ絶対ソイツは喰ってやる!」
『誠に遺憾ながら……。最下級の魔物でさえ、その程度の数しかあの結界を抜けられませんでした。更に上の魔物は結界に確実に阻まれ消滅してしまいますのは、より上級の魔物を突入させようとした先日確認済みです』
「……私が無理矢理にでも、あの結界を壊す事は出来そうなんだけどね。でもそれをしたら私も多分タダじゃ済まない。思い切り弱体化させられて、あちらはほぼ万全な状態の奴等と戦う事になるね。それはどう考えても悪手。かと言って、お前たちだけでは、結界を壊す前に全滅しちゃうだろうね……。ほんの少しでも壊せたら、御の字って感じ? 全く情けない部下共だねェ~ハンッ」
『それは最後の、最後の手段……。とお考え下さいませお嬢様』
「ハンッ! お前なんぞに言われなくても、わぁ~かってるよ~馬ぁ~鹿! もしもぉ~し? 何なに? お前~もしかして~私に喰われたいのかなぁ? んん?」
『め、めっそうも御座いませんお嬢様。大変失礼致しました』
「ハンッ! まあよい。侵入した魔物共が繁殖し、進化して巣を作れば、奴らのご自慢の結界にも、いずれ綻びが生まれる筈さ。私はそれを待っているだけで良いって事。わーかってるってば~」
『ハッ……。正しくその通りで御座います』
「んで? そう言えばあの……何て言った? たいした能力もないけど、相手の魂を歪ませて変異させる程度の能力しか無いヤツ~? アレもあちらに侵入出来たって話だったっけ? それは今どうなってるのかなぁ?」
『ハハッ! あやつが侵入前の段階で、あちらの世界の住民を、その能力で変質させ暴れさせ、世界に混乱を招くように指示は出してあります。暴れるのは戦力が充分に整ってから、時期は慎重にと重ねて注意をしておきまして御座います。そのくらいは判断出来る頭は持って御座いましょう』
「それは中々の一手よなぁ? あちらの世界の弱みを突いて攻めるのは中々悪くない。どうやらアタイが思っているよりは早く、その時が来るやもしれんの? 楽しみにしてるよ。ハンッ!」
『それまでの間は、こちらも戦力の増強を図り備えましょう』
「うむわかった。報告ご苦労であった。もう下がってよいぞ」
……今日も何とか、主に喰われずに生き延びた。
全身が汗まみれな新人参謀だった。
悪役令嬢キターッ




