まずは銀貨(ドンッ)300枚。更に倍プッシュだ
「まずは銀貨300枚。こちらの孤児院へ、少女ミーナの身請け金として寄付をしますね。こちらでミーナの受け入れ体制が整い次第、少女を引き取ります。そして更に、毎月支援金として銀貨100枚をこちらの孤児院へ寄付します。この孤児院の運営費に充てて下さい。直接私が寄付に来れなくても大丈夫なように、商人ギルドに資金は預けてありますので、院長先生が代わりに寄付金をギルドへ受け取りに来て下さい。ギルドには手配してあります。そしてミーナを私が引き取る時までは、くれぐれも宜しくお願いします」
駆け出しの女冒険者が、孤児の少女1人の身請けに銀貨300枚を寄付する。一般的に言えば、それはありえない破格の条件だ。
しかも【毎月】銀貨100枚の寄付もついている。だがそれらは、今の俺には簡単な事だった。
普通は信じられないだろうが、実際目の前にある【銀貨の山】を目の前にして、それを疑う余地はないだろう。
――本当はもっと出しても良いんだ。ぶっちゃけて言うと、金貨くらいは余裕で出せる。
しかし、それをしてもし【孤児院に捨てれば、その子供は贅沢に暮らせて幸せだ】などと、変な勘違いを周囲の大人達にされては困るのだ。
孤児院の子供達が、不自由な生活をしないで済む様に、俺が支援した筈の金が、結果として親が簡単に子供を孤児院へ捨てる風潮を、進んで作る訳にはいかなかった。
「勿論このお金は、悪事を働いて得た物ではありません。全ての事情は話せませんが【女神様】に誓いましょう。このお金は正当に、私が働いて得た報酬の中から出しています」
聖女候補として、何故かこの院長に勘違いをされている俺。
その俺が、【女神様に誓う】事がどれだけの説得力があるというのか。
――推して知るべし、であった。
「いいかいミーナ? キミがもう少し大きくなるまで、ここでいっぱい勉強して、沢山遊んで、皆と仲良く生活するんだよ? 私の家族に相応しい存在、立派な女の子になったら、私が迎えに来るからね?」と約束した。
たかだか今まで20年、その程度の人生経験や偏った知識しかない、元は男性であるこの俺が、まだまだ幼いこの少女を引き取って、育てるなんて事には無理があるのだろう。
ミーナにとっての、自分の居場所はすでにあり、そこには今でも親代わりの院長達や沢山の友達もいた。
例え俺が、実の親として本心からミーナを自分で育てたいと思ったとしても、安易に今の環境を壊すのはきっと良くないだろう。そう思った。
(一緒に生活しても何とかなる! と思えるくらいまで後もう少しだけ頑張ろう)
最初は、どこか寂しそうな顔をしていたミーナだが、どうやらすぐ理解してくれたようだった。
そして最後にミーナは、笑顔で元気に『うん! お迎え待ってるね!』と元気に笑って頷いてくれたのだ。
……勿論、それまで会わないつもりはない。
ちょくちょく顔を見せるつもりだ。当たり前じゃないか。
とりあえず、王都へ出張予定の1ヶ月前後は顔が出せなくはなるが。
宿の美人女将や、親しい人達にも挨拶周りをし、王都行きの準備を進めていく俺。
念の為に、魔猫はミーナに預けておく。少女の護衛として。
魔猫も、ミーナが心配ではあるようで、居残りに強い不満は示さないでくれた。
本当に優しい猫だ。これなら安心して任せられる。
そして王都へは、俺と魔鼠のモッチーで向かう事になった。
魔鼠は、俺の服や荷物に隠れたりしながら、コッソリと同行した。
『チュチュッ! チュ~!』
俺の肩の上で、気合の入った声で鳴く魔鼠のモッチー。
相変わらず、俺を見つめる視線が無駄に熱い。
魔鼠の内面だが、俺のイメージ的に言えば武士かも?
俺への忠誠心が、熱く強く伝わってくるのが特徴的だな。
そう言えば意外と、これで武闘派なんだよねコイツ。
「モッチーも王都は初めてかい? いいから力抜けよ。そんなんじゃ体が持たないぞ?」
魔鼠だけに聞こえるように俺は呟く。そして撫でる撫でる。
(まあ俺も、王都は初めてなんだけどさ!)
それにもう、この街でやるべき事は全て終わった。
後顧の憂いなしだ。さあ、王都へいざ出発!
――王都へ向かう、俺達の馬車での旅はこうして始まった。
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リザルト
○善行:カルマ値+30 カルマ値が規定値に達した為「恩恵」が強化されました
○称号「merciful」獲得 善行での「カルマ値」ボーナス+5増加
△孤児院へ銀貨300枚寄付 +毎月銀貨100枚も寄付




