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どのような敵が相手だろうと

女神様のターンです。

『我がララフェ様。また彼の者を観察されているのですか?』


 女神にそう声を掛けたのは、簡単なイメージで言えば天使だ。


「ええそう。彼はとても、とても面白いわ。……あ、今は彼女? なんだけれど~フフッ」


 つい最近、この世界に招待したユウトは、この世界でのスローライフを絶賛満喫中だった。


「ひたすら猫と戯れたり、子供達と一緒になって本気で遊んだり。今は美容革命? 起こしたりしてるわ。ほんと見ていて面白くて、飽きないのよね~」


「あ、さっきはね。ジャム作りもしてたわよ? くすくす」


 ユウトは、普通の転生者とはやっぱり違った。

 初対面の時から、それは際立っていたのだ。


「人間の、三大欲求もいらないとか言い出すし。生殖不要、つまり種の保存本能さえも拒否よ? それでいて、僕は死にたくないです~とか言い出すし。ある意味では、長く生きる事は苦行でしかないのに。どれだけM男君体質なのかしらね?」


『だからこそ、我等【神の使徒】と同じ()()を彼に与えたのですか?』


 ええそうよ。と私は返事をする。


「彼には最初から素質があった。魂の本質的なものね。今まで私が出会った魂の中で一番珍しい魂だったわ」


 だからなのか、ちょっと私は彼に期待している。


 彼が死んだ状況を知って、最初は同情したのもある。

 だからこそ、彼の言い分は私には良くわかった。


 暫くはこの世界で、何も気にせずのんびり生きて欲しい。


 300年、くらいか。そのくらい余裕は()()()()

 だから私は、彼に余計な事は何も言わなかった。


『やはり彼を、こちら側に? 本気なのですか?』


 ええそうよ。


「もう少しだけ、彼には自由に生きてて欲しいわ。そうね、後300年くらいしたら、やる事も無くなって暇になったらきっと、私達に協力してくれると思うわ」


『我が主様。しかしながら、今この世界に起きている現象の数々。あまり状況はよろしくありません。彼が戦力になると言うのであれば、誘導してでも早くこちら側へ……』


「ダメよ! それは駄目。その必要は無いのよ。彼には素質があると言ったわね? それにこちら側の有力な戦力【聖女】とも、彼はすでにエニシを深く結んでいる。きっとこの先も、そういった者達は増えていく筈よ」


 そう遠くない未来に、きっと彼等は充分な戦力となって協力してくれるだろうとの予感がするのだ。


「ユウトは、すでに輪廻からは外れた存在。彼が生きているだけで、周囲は影響を受けていくわ。私が誘導なんかしなくても、彼はきっとすぐこちら側に、そして自分の味方を増やしてどんどん強くなるわ。きっと私と同じような存在にまで成長する筈なの」


『まさか……。あの者が神にまで至ると!? しかしあまりこちらに時間はありません。この世界を守る為に、我が主様と我等の張った多重結界、しかしそこを抜けて侵入している魔物が各地で増えております。そして更に進化した魔物による、ダンジョン《魔物の巣》も問題です。イレギュラー化する、この世界の者達も増加しております。このままではあまりにも……』


「それもわかっています。侵略してくる世界(存在)は恐らく私達と同格以上。守りを全力で固めているこちらには、今はまだ低級な魔物を送りつけるくらいが精々ですが、でも予断は許されない。イレギュラー化については、やはりこの世界のシステム的な問題もあるので。そちらへは地道な対処をする以外はありません」


 まわる世界。輪廻転生するこの世界では、どうしても一定数の外道化が《イレギュラー》発生する。


 魂が変貌し、他の魂を喰らってさらに変質していく存在に《外道》なるのだ。


 それにより、この世界の魂がどんどん喰われ、更に魂の総量が減少していく悪循環となる。


 他の世界から、魂を招待するのにも限界があった。


 そもそも最初から、魔物はこの世界にはいなかったのだ。


 いつの間にか存在し、繁殖しながら強力な魔物へと進化、変貌していく。

 そしてダンジョン《魔物の巣》だ。


 ダンジョンは、この世界の住人達を巧みに誘い込み、容赦なく殺し魂までを喰らう。


 まるで若芽を摘み取る事が目的のような……。


 これを放置する事は出来ない。

 こちらも使徒を随時派遣し、大型化したダンジョンを中心に潰していく事で今は対応させてもいるが、実はキリがない現状だった。


 確かな同格以上の敵の存在。先遣たる魔物の侵入。

 そしてダンジョン化。イレギュラー化が加速。


 これは異世界からの侵略なのだ!


 私達がそれに気が付いてから、守りの為の結界を強化してもすでに遅かったのだ。


「恐らく最初は手下の魔物を使い、この世界の惰弱な部分であるイレギュラー化を誘発させ、世界をシステム的に内部から破壊させ、よしんば混乱した状況の隙を突き、外から強引に侵略してくるつもりなのかもしれません」


 ならば、こちらも相応の戦力を整える必要があった。


 この世界で輪廻転生し続け、魂を磨きに磨いた強力な存在。


「大丈夫、きっと皆一緒に戦ってくれるわ。光り輝く魂を持つ良い子達だもの♪」


 どのような敵が相手だろうと、私が見守り育ててきたこの世界の子供達が、負ける筈はありえません!


 それまで私と貴女達で、この世界を守り切りましょう!

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