将を射んと欲すれば先ず馬を射よ
でも将を直接狙えるなら、その方が早かったりしますよね?
『……で? これがその美容品とやらか。なかなか種類があるようだな?』
商人ギルドマスターの《バーコード頭》は『ふーん、これがね?』くらいの表情で、俺の美容品各種を見ている。
「はい、薬効などはこちらに。取り扱いの説明書もご用意させて頂きました」
そしてすでに、ギルドマスター専用の応接室の机の上には、ズラっと俺の商品が全て並べられている。
俺は張り切って商品PRを始めた。
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そして時は少し遡る。
俺は商人ギルドへ到着し、さっそくメンバー登録してから軽く受付嬢へと商品のPRをしてみた。
美容ジェルを試しにと、肌に塗ったその女性受付職員はすぐ両目をカッ! と見開いた。
『これは、大変に、実に素晴らしい商品です! 是非改めて、当ギルドマスターと商談下さいませ!』と言われたのだ。
そしてその受付嬢は、物凄い勢いでギルマスとのアポイントメントをもぎ取り、こうしてギルドTOPと俺が直接商談という形で、あっという間でこの状況となったのだ。
『ギルドマスター。こちらの商品の、美容の効果は私も確認しました。そして! この! 私のお肌を見てください! これは、実に、大変素晴らしい物です! 絶対これは売れます! たとえ金貨を出しても、買うと言う王族や貴族達がいるでしょう。正直申しますと、この商品を扱う事で当ギルドが、一体どれ程の利益を上げられるのかさえ、全く予想が付きません! そのくらい革命的な商品です!』
受付女性職員は、非常に手厚い援護をしてくれた。ありがたいものだ。
『なんと! それ程の物か! キミがそこまで言うのであれば、確かにその通りなのだろうな!』
――いいぞ。話の流れが良い感じだ。
『この商品の、レシピを聞く訳にはいかないだろう。だがこれだけの商品、いくらで売る? 今はどのくらい在庫があるのだ? 仕入れたのか? 自分で製作したのならその必要な時間は? 原料の確保はいつでも出来るのか?』
ギルマスからは、矢継ぎ早な質問がされる。いよいよ本腰になってきた感じだ。
「はい、素材などの確保は問題ありません。今回は試供品として、小瓶でお持ちしましたが在庫としてはこのくらいの大きさの【大瓶】でそれぞれ3つ御座います。大瓶1つでこの小瓶100個分程の量です。製作には3日あれば同じくらいの物と量が私で作れます。値段設定はこの【小瓶1個で銀貨1枚】を考えていますが。いかがでしょうか?」
スラスラと、そんな言葉も出てくる。
(いつの間にか、商談に有利なスキルも発現している)
ちなみに、毎日徹夜で製作などは避けたいので、サバを読んで製作には3日は掛かると明言しておいた。
「美容クリームは就寝前に、ジェルは起きてからのお手入れに向いています。美容丸薬は1日1個、お好きな時に服用で構いません」
美容クリームは、小瓶1個で銀貨1枚。香り付きは銀貨2枚。1瓶で1か月分くらい1人で使える筈だ。
美容ジェルも、小瓶1個で銀貨1枚。香り付きは銀貨2枚。これもクリームと同じく1ヶ月分くらい。
無香料タイプを一般品。香り付きのほうは高級品として説明した。
「美容丸薬は、この小瓶に30個入ります。これで1か月分。お値段は1瓶で銀貨1枚。薬効だけでなく味や香りにも拘っております。きっとお子様なんかにも喜ばれます。オヤツとしては、少し贅沢な品ではありますね」
きっとセレブな家庭なら、お子さんにも食べさせそうである。何と言っても、栄養満点で健康にも良いからね。
薬効石鹸も1個、銀貨1枚。香り付きは銀貨2枚。使用する頻度にもよるが、これはだいぶ持つだろう。
薬用シャンプーとトリートメントとコンディショナーはセット販売だ。
それぞれ1人分で1ヶ月くらいの量になっている。
家族全員で使うと、すぐに無くなるかもしれないが。
(まあこの辺は、そもそもがセレブ用だしな)
1セットで銀貨3枚。香り付きは6枚だ。
俺の部屋には、これらの在庫がそれぞれ大瓶3個ある。
大瓶1つで小瓶100個分。つまり各種の在庫は小瓶300個分。
石鹸もそれぞれ300個。シャンプーセットも300個
(このくらいが俺の製作1日で作れる今の量だった)
「今日は試供品だけ、置いていきます。無料なので是非使ってみて下さい。また後日伺いますので、その時に正式なお返事と契約をお願いします」
そう言って、俺は商人ギルドを後にしたのだった。
そして後日談としては、ギルドマスターの奥様がその試供品を実際に使ってみて、その効果に大興奮。そして大絶賛を頂いた事で、無事に正式契約となった。
その後、ギルマスとは詳細な打ち合わせを何度もした。
その際の契約条件として、この商品の製作者名は秘密にする事。
納品時も色々と偽装し、俺への面倒毎を避ける事。
今後は、在庫が無くなりそうになった商品だけ、大瓶3個単位で作る。
その製作依頼は、最低5日前には連絡を貰う事にした。
そして本当に、急な依頼は当然割り増し料金追加だ。
小瓶などは、数をそこまで俺が用意出来ないので、大瓶のままギルドへ卸す形。
大瓶もギルド指定の物を、全て支給して貰う事になった。
ギルドはそこから、用意した小瓶に移し変え販売するようだ。
その分の色々な手数料も込みで、卸した商品の金額の20%をギルドに支払う事で本契約をした。
代金はニコニコ現金一括払いのみ。
つまり今回は……。
美容クリーム大瓶3つ(小瓶300個分)で銀貨300枚の、香り付きが銀貨600枚。
美容ジェルも同じく300枚の香り付きが600枚。
サプリメントが300枚。
石鹸300枚の香り付きが600枚。
シャンプーセットが900枚と香り付きで1800枚。
しめて【銀貨5700枚】(金貨で換算57枚)である。
ジャラジャラ~チーン!
そこから手数料20%の、銀貨1140枚を引かれた結果【銀貨4560枚】の収入となる。
大量の銀貨では、持ち運びに不便なので金貨で45枚と大銀貨6枚で受け取った。
……盗まれたら大変だぁ。
お金はコッソリと、擬態へと収納する。ふぅ~(汗)
ううむ、いきなりの大金を得てしまったな。むふ。
これで毎月、コンスタントに商品が捌けたら、製作依頼は月に一度(そして1日)で済む。
これならば、俺の冒険者生活にも支障はない筈だ。
定期収入としても、毎月それなりに見込める。
これはちょっとした、お金持ちになってきたのでは? まず当面の軍資金は得たのだ。
――そろそろ、次の目標に取り掛かるとしよう。
そう次は……。
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リザルト
○スキル:口八丁Lv2に上昇
○スキル:交渉Lv2 に上昇
○スキル:ポーカーフェイスLv1 獲得
○称号「マーチャント」獲得 関連行動に成功率ボーナスが追加されます
○報酬:金貨45枚 大銀貨6枚 獲得




