閑話~空前絶後の超絶美少女、冒険者ユウコの日常~
「ん、これくらいで良いかなっとぉ~!」
そんな独り言を呟きながら、冒険者装備に身を包んだ超絶美少女(自称)の俺は、今回の依頼である《薬草採取》に必要な薬草の葉を、柔らかな布のようなもので包んでから、用意した腰袋へ丁寧に収納していく。
これを冒険者ギルドへ届ければ、ギルド職員にも褒められる『丁寧で完璧な』薬草採取依頼の完了って訳。うんうん良い仕事してるね。
それにしても、やっとこの世界の生活にも、慣れてきたなぁ。
朝起きたら、朝食を食べて冒険者ギルドに行き、気に入った依頼があればそれを受け、なければ近くの森に入り採取や狩猟を行い、そして遅くとも夕方前には街へ帰って寝る。
それが俺の、いや私のここ最近の日常だったりする。
まぁ、薬草採取くらいのクエストでは、例え完璧な仕事をしたとしても、追加の報酬などは殆ど期待出来ないけどね。
でも、ギルドの職員からの《信頼》みたいなものは上がるんだ。←マメ知識ね? これ大切だよ。
職員の信頼が上がる度に、明らかに俺への対応態度が良くなって行くのを、最近特に実感している真っ最中だったりするのだ。
比較的、美味しいとされるような依頼も、優先して紹介してくれたりもするから侮れない。
(やっぱ地道にコツコツって、大切なんだよね~)
ぶっちゃけ冒険者と言えば、荒っぽい感じのイメージだろう。
実際にその通りだったりするので、その仕事ぶりはかなり雑だと言わざるを得ない。
だからこそ、地道にコツコツ。丁寧で完璧な依頼の遂行こそ大切なのだ。
採取の為に、すっかり土で汚れた手を軽くパンパン叩きあわせ、近くにある川で汚れた手や採取道具などを綺麗に洗い流した後、のんびりと活動拠点である街へと戻ろうかな? と考えていた時だった。
「しかし平和だね。意外と魔物も出ないし」【フラグ】
――そう呟いた直後だ!
『わぁああああああ! (怖いよ~)助けて~魔物が~!』
子供の叫び声を、俺の美少女イヤーがキャッチしたのだ。
……トラブル発生!?
薬草が生えているこの場所は、かなり森の奥の方にあった。
この辺になると、猪や熊といった野生の獣だけではなく、時折ではあるが小鬼〖ゴブリン〗と呼ばれる魔物とも遭遇する事もあった。
直線距離で言えば、確かに街からはそう遠くは無い場所。
だが、だからこそ森の中、魔物が出るような場所での薬草採取などは、冒険者に依頼するのが普通であり、子供がこんな所まで来る事は絶対にない……筈だった。
――いやいや、普通ありえない。
「子供の声!? こんな所にまで一体何故!?」
超絶美少女の俺は、子供の声が聞こえてくる方へ、急ぎながらも慎重に意識を研ぎ澄ませ、出来る限り静かに移動を開始していった。
そしてすぐに、目標の子供達の姿を見つけたのだった。
(おー、いたいた。子供達ハッケーン!)
大きな声で泣き叫ぶ、小さな子供が2人。
――そして、そのすぐ前にはゴブリンが居た。
『グエッ!』
『ゲッゲー!』
『ゲグギギッ!』
などと、奇怪な声を上げるゴブリンが3体だ。
手にした小さな棍棒(その辺の木の枝)を振り回し、子供を怯えさせて楽しんでいる様子だった。
(ゴブちゃん達も、随分ご機嫌だな~おいィ?)
……このままでは、当然子供達が危険だ。
俺は1匹のゴブリンに、素早く背後からの奇襲の一撃をかけつつ、子供達へ向けて大声で叫んだ!
「そこの子供達! 今すぐ走って街へ逃げて!」
ゴブリン達は、背後から突然の大声に驚いたようだった。
(貰った~っ! えいっ! 隙あり~っ!)
ゴブリンの1匹は、慌てて後ろを振り返った所で、俺の一撃を受け首が落ちた。
(まず1匹! 次は、お前だっ! ザシュッ)
美少女な俺の無双が始まった。
……だが、何かがおかしい。
冷静に観察していれば、子供達もそう思ったかもしれない。
俺の基本の装備は長弓だった。
しかし今、俺の手には何も握られてはいない。
両手をそれぞれ、手刀のように構えてはいるが、普通は手刀でゴブリンの首を一撃で落とせはしない。
しかし実際に、数分も掛からずにゴブリン達は、揃って俺に首を一撃で落とされ全滅してしまったのだ。
――その切り口は実に滑らか。
鋭利な刃物で、抵抗もなかったかのように一太刀と言う感じだ。
奇襲のせいもあっただろうが、ロクに反撃も出来ずに全滅するゴブリン。
(もしかして、ゴブリンって……弱すぎ?)
魔物としては、確かに弱いとされるゴブリンではあるが、その首を一撃で落とされ、ものの数分で全滅というのは些か異常だろう。
仮にそれが、高位の冒険者ならば納得も出来る。
しかし、俺の首から吊り下げられた、冒険者ランクを示す証。
それはアイアンのプレート。
下から数えて2番目の、初心者を示すランクだった。
(どう考えても、超絶美少女冒険者の俺って、実は相当強いんじゃないか? いやいやどうなの?)
俺自身、実際にこうして人型魔物と戦うのは初めてだった。
『おねえちゃ……ん?』
子供の声が、俺の美少女イヤーに、聞こえてきた。
きっと、子供達は恐怖でずっと動けずに、ずっとそこにいたのだろう。
それも無理はない。
……一応、漏らしてないかな子供達。うん、大丈夫。
「2人とも、怪我はしてない?」
なるべく、優しい声を掛けてやる超絶美少女の俺。
子供には優しくするよ? そりゃーね。
元々嫌いじゃない。前世では手の掛かる妹もいたし。
――暫くして、やっと安心した表情を浮かべる子供達。
「よしよ~し。怖かったかな? 超絶美少女のお姉ちゃんが、悪い魔物は全部倒したからね。もう大丈夫だよ~?」
怪我もなく、子供は2人とも無事のようだ。
手早く《戦利品》を集めながら、一安心する。
助かった、という安心感からか、グズグズ泣きだした子供達を、俺は優しく宥めながら、やれやれ仕方ないなと思う。
――詳しい話を聞くと、子供達2人は孤児だった。
その孤児院で、大好きな院長先生の誕生日が明日だった。
毎年この時期になると、この辺にだけ咲く花がある事。
孤児院では、母親代わりのその院長先生が、その花の匂いなどが大好きであり、この時期になれば、市場などにその花が並ぶのを、とても楽しみに待っている事。
その花は、値段が少しお高めであり、お金の無い孤児達では買えなかった。
2人は、花の咲く場所をそれとなく周囲に聞いた所、その花は今の時期だけ、この辺に咲いている事を知り、大好きな院長先生に〖沢山の花束〗をプレゼントする為、誰にも知らせず内緒で、その花を採取しに来たみたいだった。
(大好きな、お母さんへ誕生日プレゼントの為か。
これは頭ごなしには叱れないな。
花束をプレゼントした後に、こんな危ない事をするな! とか。
きっと院長先生に、2人は叱られるだろうけれど、それは自業自得だけど。
もう仕方ないから、今回だけ手伝ってあげようか)
実際に、周囲を少し探すだけで、その花はすぐに見つかった。
そして俺は、街へ帰る為に子守よろしく、グズる子供達と一緒に歩き始めたのだった。
帰り道は順調で、野生の獣も何も出てこなかった。
――子供達は、街へ戻るとすぐ明るく元気になった。
孤児院の、入り口近くまで2人を送ると、俺に別れの挨拶として大きく片手を振りながら、俺への感謝の言葉を何度も口にし、プレゼントの花束を大事そうに抱えながら、2人は仲良く孤児院の中へと入って行った。
「ふふっ。今日も良い事をした。1日1善達成だなっ♪」
そしてこの後、ギルドに薬草も届けて無事に以来達成。
その報酬も受け取った。
「今日も良き一日だった! そして良い仕事した後の、ご飯は格別に美味いのだ! ひょっとすると無限に食えるよね!」
(ガツガツガツと、とても外見からは想像出来ないくらい大食いする美少女の俺だった)
この空前絶後、超絶美少女の最高にクールな冒険者が俺。
鉄級冒険者の〖ユウコ〗それが主人公である、俺の今の名前だった。
~空前絶後の超絶美少女、冒険者ユウコの日常の1コマ~
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リザルト
テレッテッテッテー♪
○スキル:擬態戦闘Lv1がLv2へ上昇しました
○スキル:子守Lv1がLv2へ上昇しました
○称号「クビキリ」獲得 部位破壊「クビ」の成功率と与ダメージが増加します
○称号「ゴブリンハンター」獲得 ゴブリンとの戦闘では1%の追加与ダメージが発生します
○ゴブリンの魔石x3 討伐証の右耳x3 &討伐Exp+45x3獲得
○薬草採取クエスト達成x3による報酬「全部で大銅貨3枚&ギルド貢献度+15P(ギルド職員信頼度+30)」
○(子供の救出)善行:カルマ値+15(5x2+5P)