マッチョな男達に囲まれた美少女の俺ピンチ!
『オイ、ねーちゃん。ここは街娘に出来る仕事はねーぞ。帰んなぁ~』
現場に到着早々、こんな事を言われてしまったぞ。
……ん? 俺の事かな? いやいやまさかね?
念の為に、キョロキョロと周りを見渡すが、俺以外で集まっているのは、男性のムキムキなマッチョ男ばかりだったんだ。
そして俺は、現場仕事(力仕事でどうせ汚れる)だから普段の冒険用装備ではなくて、ただの街娘風な非常に軽装で来ていたんだね。
うん。確かにそんな風に言われても、ある意味仕方がないのかも知れないな。
それならば、そんな俺でも充分な仕事が出来るという事を、ここでいっちょ皆にアピールしなければいけないという事だ!
何時の間にか、周囲の冷たい視線を一身に集めていた俺は、丁度傍にあった解体途中の壁の前までトコトコと歩き、近くに置いてある大きいハンマーを両手で持ち上げ、そのまま壁に軽く振り下ろしてみた。
「ズッドーンッ!」(パラパラーッ)
中々に派手な音を立てながら、半ば壁だった物はその俺の一撃で粉々になって吹き飛んだ。
『マ、マジかよ!? この姉ちゃん半端ねえな』
思わず騒然とする、ムキムキマッチョな男達。
(……ちょっとやりすぎたかな? チラッ)
と俺は、内心の動揺を隠しつつも周囲の男達に対して言った。
「こう見えても、私は力持ちさんなので、全然大丈夫なんですよ~?」
よし! ここで完璧な営業スマイルの出番だ! ニコッ
……。
そして誰も、俺に文句を言う奴は居なくなった。
よし! よしよしよし! アピール成功! Yes! イッエス! (心の中でガッツポーズ)
元々実力主義なのが現場だ。
ちゃんと仕事が出来る能力があれば、後はすんなりと受け入れて貰えたのだった。
こうして俺は、自分の力をコントロールしながら、家を壊したりその瓦礫を運んだりと、八面六臂の働きをしていく【パッと見ただの街娘で美少女】の俺だった。
そして何と、その日の内に廃屋の解体作業全体が終わる次第となった。
現場監督にも、俺はすっかり気に入られた。
ムキムキマッチョな男達に囲まれ、俺は無駄にワッショイワッショイされている。
……ちょっと絵面に問題ある(笑)
この後の、打ち上げ会のお誘いや依頼の達成報酬の増額なんかも打診された。
迷わずに俺は、ギルドから持ってきた依頼票に監督からクエスト達成のサインを貰い、有り難く追加報酬を支払う旨まで追記して頂いたのだった。
打ち上げ会のほうは、この後も実は予定が《猫探し》あるからと、やんわりと断った。
『また次の仕事があれば、絶対に嬢ちゃんを指名依頼をするからな! また頼むぜ!』
という現場監督の言葉が、素直に嬉しかった。
――冒険者として、初の依頼達成。しかも大成功だ。
俺はこの、自分の小さな胸を熱くして感動した。
良い仕事をした後のお酒は、きっと最高だろうな~。
そう言えば、こっちの世界にも美味しいお酒とかあるかな?
この体になってから、食欲・性欲・睡眠欲が一切無くなったのだが。
だからと言って、何も食べない、飲まない、寝ないというのは非常にマズイだろう。
(味覚自体はあるので、食事を楽しむ事は出来る)
正体が人ではないと絶対知られてはならない。
細心の注意を払い、前世だった俺の行動を忠実にトレースしてきた。
1日3食と適度な睡眠、仕事の合間の休憩も積極的に取った。
この俺に抜かりはない! この調子なら大丈夫な筈だ。
とか考えながら、本日何度目かの魔猫とのコンタクト《意識共有化》を図った。
仕事休憩の合間にも、眷族化した魔猫と連絡を取りつつ、その進展状況の『非常にフワッとした』報告を毎度受けてはいたのだが、きっと多分恐らくは順調のようだった。だから俺は、こちらは廃屋の解体クエストが完了したぞ~と、眷属の魔猫に意識を飛ばしておき、先にギルドに行き報酬を受取ってからそちらへ合流すると、魔猫に向けて再度意識を送ったのだが……?
これを、何と言えば良いのだろうか?
俺は眷属【魔猫ブルーアイ】の、予想外の実力を思い知る事になった。
――最初から【餅は餅屋】とは思っていたけどね!
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リザルト
テレッテッテッテー♪
○スキル:建築破壊Lv1 獲得
○称号「破壊者」獲得 破壊行動に関するダメージに追加ボーナスが発生します
○スキル:運搬Lv1 獲得
○スキル:槌術Lv1 獲得
○スキル:手加減Lv1がLv2に上昇