プロローグ 【修羅場は抜きでお願いします】
それは、きっと恋愛関係のもつれだったのだろう。修羅場ってやつに違いなかった。
僕の目の前で、激しく言い争っている女性達が3人。
(女が3人集まれば姦しいと言う漢字になるが、その言葉の意味がよく理解出来る事態だな)
そして僕は、何故かその中の女性の1人に刺されてしまい、唐突な死亡が確定したのだった。
【ヒロ君は……私の彼氏なんだからぁ! ブスは死ねッ! お前も邪魔するなぁっ!】(ドスッ)
――あぁ失敗した。とんだ大失態だ。
刺された場所からは、今も大量の血が流れ出ている。本当にヤバイ出血量だ。自分の命が刻々と失われていくのが分かる。あまりに大量の出血で、ショック状態となった僕は意識を失い地面へと倒れ込んでしまう。
……ああ、これは完璧に……死んだ。まさか、まさか齢20歳で死ぬとか! 恨むぜヒロ君とやら。
…………。
……。
……あれっ!?
――何故かは分からないが、僕には再び意識が戻った。
そして僕が目覚めた場所は、視界全てが真っ白な空間だった。
光に満ち溢れているが、眩しくは感じないのが不思議だ。
そして僕の目の前に居る、悲しそうな表情をした綺麗な女性だ。何だか凄く女神様っぽい? 存在が居た。
『私の世界で宜しければ、そこでもう一度人生をやり直しませんか?』
(ふむ……。私の世界へって事は、それって異世界転生って事かな)
「ええ、もうどこでも構わないですよ」
『えええっ!? ちょっと投げやり気味なんです!? もっとこう……目をキラキラさせて、やったー! 異世界転生だ! とか異世界チートスキル下さい! とか何か無いんですか!?』
「……えーっと、僕が刺される原因を作ったヒロ君? とやらはどんな人ですか?」
『クズ男よ』
「即答ッ」
『あの時言い争ってた3人の女の子以外にも女を沢山作ってるわね』
「マジすか……」 ヒロ君自重しろ!
『ええマジ』
「僕が刺された後……。いえやっぱり知りたくない」
『そうね。あまり良い結末は……待っていないわ』
「そうですよね……」 まだ若くて可愛い子達だったのにどうしてこうなった。
『貴方の世界で言う【地獄行き待ったなし】ですわね』
「本当に地獄ってあるんですか」 思わず目を見開いてしまう。
『……地球には無いわね』
「(ガクッ)無いんですか」 じゃあ天国も無いんかーい!
『地球の管理者は放任主義』
「地球の管理者……結構テキトーなんですか」
『そうね。世界を作った後は基本放置みたいね。だから私が干渉しやすかったわ』
「基本放置プレイ……。でもまぁそんなもんですよね」
『そうね。管理者が一々世界に干渉しても良い事にならないのも事実』 悲痛な表情
「何でも神頼みになりそうですもんね」 頼まれる神様も大変だろう。
『ふふ……まぁそういう事ね』
「僕って地球で生き返れないんですか?」 せめて最後のお別れをしたかったな。
『それは地球の管理者の禁止事項ね。だから私でも無理なの』
「伝言とか……。せめて残された両親と最後のお別れをしたくて」
『それも無理ね。ごめんなさい』 女神様も悲しそうにしていた。
「そうですか……」(まぁ仕方がないか。むしろ死んだ俺からメッセージが届いたら混乱するだろ)
「まぁ妹も居ますし、両親は何だかんだで仲良しなので……。心配は無いかなと思いますが」
『そうなんですね……コホン。話を少し戻しましょうかしら』
『貴方は悪くないのに、あんな修羅場に巻き込まれたあげく、逆上した女性にまさか刺されてポックリ逝くだなんて本当に可哀想で。貴方の生きていたアチラの世界ですが、誠に申し訳ありませんが私の管轄外なので何も出来ないので。その代わり、私の世界に特別待遇で招待差し上げますので、そちらで今度こそ幸せな人生送って下さいね』
ちなみにこの女神様は慈母神ララフェ様と言うらしい。その実年齢こそ不詳だが、文句無しに見目麗しい女性だ。
(神様とは言え、年齢に関する話題は避けた方が賢明なのは間違い無い。僕はそんなミスはしない)
神々しいオーラを身に纏った、実にナイスバディな女神様。これこそ【女神様】って感じ。
招待してくれるという別の世界は、ララフェ様が自ら創造し管理する世界らしい。
女神様の惑星【サンサーラ】は、亜人や妖精そして何故か魔物も存在し、武技や魔法も特殊なスキルなどもある、実に夢のようなファンタジー世界なのだそうな。
所謂【剣と魔法の世界】ってやつらしい。なるほどナーロッパね。
(僕はラノベ好きだからね。この辺は一瞬で理解出来る)
元に居た世界よりは、だいぶ文明は遅れているが僕は大丈夫か? いやその前に……。
「そう言えば、僕の他にこの世界で転生している人は居たりしますか?」
『ええ勿論居るわ。尤も貴方みたいに、こうして個別面談などは一切していないわ。最近は特に忙しくって』
「ええ!? じゃあ面談するの僕だけなんですか? それはまた……何故でしょう?」
『それは貴方が、ちょっと珍しい魂をしているからかしらね? 本当に珍しい魂だから、思わずつい(てへペロ)』
『普通の魂だったら、この世界のシステムによって、記憶も含めた全てを【即リセット】で転生させているわ』
『それにこの世界は、まわっているの』
ん、んん? 僕にはちょっと理解不能な事を言い出したな。
「世界が回ってる? それって、どんな意味ですか?」
えっと? ここで突然の説明下手? 女神様しっかり? その説明だけでは、ざっくり過ぎて理解出来ない。回っている? そりゃ元に居た世界も自転していたのは知ってるよ。それの事?
僕が女神様に、追加で詳しい説明を求めたのは当然だろう。
『そうね……。まずこの世界では肉体が死んでも、その魂は残りやがてこの世界で転生するの。そちらの世界で言うと【輪廻転生】と言うシステムを導入してあるの。
そして、それぞれの魂には業(カルマ値)があるわ。前世での記憶や、覚えた技能など全てはリセットされる。基本的に全員が新しく生まれ変わるのだけれど、その魂【カルマ値】だけはずっと引き継いでいくの。
そのカルマ値は、生きている間に善行を行えばプラスされて、悪行を行えばマイナスになる。輪廻転生しながら、そのカルマ値は蓄積されていくわ。
転生時だけではなく、生きている今その時でも様々な恩恵が得られるシステム。
当然、プラスに多いほうが良いわよ私的に(くすっ)』
――今度はガッツリ長文で説明されたな。でもなるほどね?
もしこの世界で死んでも、僕個人のカルマ値は魂に刻まれ引き継がれてまた転生するのか。
累積カルマ値によって、次の人生のスタート条件なども決まる事もあると言う事だし、この世界では力こそ正義! 力こそパワー! 弱肉強食だぜヒャッハー! な悪逆プレイはご法度という訳だ。
もしうっかり死亡した時、カルマ値がマイナスだったりしたらきっと次の人生は過酷なスタートになる訳だ。
好き好んで、誰もそんな人生を味わいたくない。うん気を付けよう! 悪人プレイ、ヨクナイ!
……話題が逸れたな。
それと、カルマ値も規定値以上になると、魂の格が上がる事で女神様のような超越した存在にもなれるそうだ。魂が【神格】を得ると言われた。当然逆もあるみたい。
ううん? それはひょっとして魔王様的な? うっかり魔王様になるとか、ある意味非常に面白そうなムーブになるかもだけどね。
……いやいや、何でもない。この世界ではそれはマズイだろJK。だって女神様が見てるんだもの! 文字通りに!
でもその概念(カルマ値)の存在は、この世界の住人には秘匿されているらしい。ホワーイ!?
も、もしやこれは、隠し要素ってやつなのか? ネタバレキタコレーッ! え? これって、もしかして僕だけ超有利スタート?
何故それを僕に教えたの? 教えて下さい女神様!
『だって貴方はこの世界に、私が直々に招待したからよ。貴方の新しい人生、少しでも幸せになって欲しいと思うのは自然な事』
――女神様は、本当に至高の存在だった! 僕は全力でそう断言する。女神様マジ女神! 大好き愛してる!
話は続いて、死んでも魂が輪廻転生すると言う世界であるのだが、ここ最近何故か世界の魂の【総量】が不足し始めたらしい。
だからその補充の為に、僕の居た世界からも魂を呼び集め始めたのだとか。
地球では魂のサイクルとして死んだらすぐ消滅、代わりにNEWな魂が次々生まれてくるらしい。
温泉で例えるならば、循環ろ過式型の(サンサーラ)と、源泉かけ流し型の(地球)って感じかな。
だから女神様も、どうせ消える魂であるならばと考え遠慮なく地球で魂を集める事にしたと。
そして、特に珍しい魂だった僕が目に留まり女神様にスカウトされたって訳か。
「……だいぶ理解しました。ご説明ありがとうございます」
――こうして僕は女神様の世界〖サンサーラ〗に招待される事になったのだった。
この世界では絶対に長生きする! 平和にノンビリ生きる。ほんとそれ。それには……。
「修羅場は抜きでお願いします」
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まだまだ稚拙な小説ですが、何卒応援宜しくお願い致します。