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捏造の王国

捏造の王国 その15 隠蔽、忖度、暴走の地方選挙

作者: 天城冴

地獄めぐりの不吉な夢?の余波がいまだにあるガース長官。そんな彼の頭髪をさらに痛める連絡が。ジコウ党選対委員長が野党の選挙カーにヤクザまがいの煽り行為を行ったというのだ!

共産ニッポンに悪質デマをふりまいたデマサイト運営者のジコウ党議員の弟まで呼ばれ、1億円以上の税金を使ったと噂されるアベノ総理のサクラを愛でる会も何とか終わり、新年度のバタバタが一通り片付いたはずのニホン政府官邸。しかし次期総理の本命馬となったはずのガース長官はいまだモノ思いにふけっていた。

「はあ、妙な夢をみたせいか調子が悪いな。悪行の報いで地獄行き、いやバラバラ死体で発見、夢とはいえあまりにリアル、縁起が悪い。いや健康茶でものんで運を取り戻すぞ」

と取り出したのは爪にいいと言われるハーブティー、ホーステール、すなわちスギナのお茶。

「爪と頭髪はおなじケラチンでできている、はず。爪にいいなら、きっと髪にも」

ほのかな期待を胸にガラスのティーポットに茶さじ二杯の茶葉をいれて…

と、いつものように邪魔がはいる。スマートフォンが机で震えている。

「なんだろう、まさか今度の選挙のことか?誰か扇子やカレンダー、酒でも配ったのか」

扇子もカレンダーも時期外れではあるが、ジコウ党議員ならありえるだけにガース長官恐る恐るスマートフォンをとった。

「ちょ、長官、チズオカの選挙で」

「な、なんだ、タニタニダ君」

「選対委員長のダカバシ・ヤダナ議員がミンミン党候補の選挙カーに特攻しましたああ!」

意味不明の叫びにガース長官は思わずのけぞった。


「つまり、ダカバシ・ヤダナ市議は運転中の対立候補の選挙カーの進路妨害をしたうえ」

「運転手の女性を威嚇するような行為を行い、ドライブレコーダーと議員らのスマートフォンにその映像をしっかり撮られ」

「ネットにあげられ、大拡散、大炎上中です」

三副長官が説明しながらパソコンの画面に映し出されたのは40代の男性市議会議員…のはずだが。相手を指さし、髪を逆立て、顔をニヤニヤさせた、運転手を嘲るようなその姿はまるで

「ヤンキーかヤクザかヤク中か、コイツは!」

「長官、そのう、我が党の市議会議員です」

言いにくそうにシモシモダ副長官が口を開く。

「どこの市だ」

怒り心頭、透けた頭皮まで真っ赤になっているガース長官の様子をみて、ニシニシムラ副長官はすっかり委縮して、しどろもどろに説明をはじめた。

「その、ゴテンダ市です。自分でもその動画をスマホに撮ったようで」

「なんで、そんな。誰かに自慢でもするのか、本当に議員か。半グレとかのリーダーじゃないのか」

「地元の青年会議所に所属、ボクシング連盟にも所属しているらしいです、はい」

二つの組織の風評被害はさぞかし甚大だろう。汗をふきふきニシニシムラ副長官が続ける。

「あ、ネットの情報ですが、彼は二年前にも対立候補のデマをまき散らしたらしいです」

「も、もっとマシな奴を選対委員長にできなかったのか」

悲痛な声をあげるガース長官。

静まり返る三副長官。重い沈黙を破ったのはシモシモダ副長官。

「ガース長官、残念ながら、このような人物しかいないのです。デマをまき散らし、選挙妨害をするような人物ばかりで」

「そんな、相手候補に対する妨害を行わせないように注意するのが選対委員長のはず。それが率先して法を破るとは」

嘆くガース長官。

“人材?ジコウ党に人材?

 いやあ、あなた、総理がアレですよ、アレ

率先して法破り、いや憲法をないがしろにするっていう憲法違反やってんですよ“

と、幽かに聞こえる中年女性の声。

(だ、奪衣婆の声?ま、まさか私を見張っているのか)

動揺するガース長官。

「長官?その、どういたしましょう」

ガース長官の顔色を窺うようにタニタニダ副長官が尋ねる。

「とにかくマスコミ各社には箝口令を強いてだな」

「ただこの情報はすでに拡散しております、完全に防ぐことは難しいかと」

苦々しい顔でシモシモダ副長官が答えた。

「で、では新元号発表秘話追加情報をリークして」

「そのう、元号フィーバーはヅカダ国交副大臣の“私、総理と副総理に喜んで忖度します”発言で、しぼみました」

ニシニシムラ副長官が口を挟む。

「そ、そうだったか。あの男、余計なことを言いおって」

「“地元に利益誘導ならまだわかるが、なんで総理に”だの“支援者より大臣職くれる総理を贔屓かよ”と地元でも呆れられております、それに」

(そ、そうだオマケにアベノ総理が“政治家は本当のことを話すべきなのです”などというから、さらに炎上したのだった)

アベノ総理とアトウダ副総理への忖度発言を咎められヅカダ国交副大臣は事実上の更迭となったが、その際アベノ総理が“政治家は本当のことを話すべき”などと発言したものだから、ネット上で騒然。

“やっぱ忖度は本当だったんじゃないか”

“嘘つきが本当のことを話すという、クレタ島のパラドックスならぬ、ニホン島のパラドックス?”

“たぶん、本当と嘘の区別がついてないんだよ、アベノ総理。実は統合失調症なのか”

“それ統合失調症の患者に失礼、あれはただのFOOL”

“マイティフールだもんな。いや地球上から太陽系に範囲をひろげたマイティフールだろ”

などなど、言われ放題。それを打ち消すのに芸能人スキャンダルだのなんだの隠し球を打ちまくりやっと沈静化しつつあるところにこの騒ぎ。

(春の値上げラッシュも、移民受け入れ拡大も、国保料の値上がりも誤魔化せるかと思ったのに、結局すべてバレているし)

地獄行きという不吉な夢にこの騒動。誠に頭が痛く、頭髪に悪い、と思わず手をあたまにやると。

パラリ、パラリ

(い、いつもは一本しか抜けないのに、二本も!)

そしてペタっと三本目の頭髪が手に貼りついた。

「ぎゃああああ」

「ちょ、長官!」

「大丈夫ですか」

「しっかりしてくださーい」

三副長官の声に、我に返るガース長官。

「と、とにかく記事になるのをできるだけ防げ。幸い週末だ、行楽にでかける国民も多い。雨でも晴れでも行楽情報、出かけるとお得な場所の特集を組ませろ、スマホで配布するお得なクーポンを大盤振る舞いさせろ。なんならクーポン券などのサービスにかかる金はこちら持ちでも構わん、なんとしても拡散を防ぐんだ。投票率もあげるな、そうすれば無党派、浮動票がなく、ばら撒き、縁故で組織票をもつジコウ党が勝つのだ!」

「は、はい、なんとか手配します」

と三副長官が返事をする側から、鳴り響く電話の音。

「はい、長官室、え、今度は“総理官邸の面会記録をすべて破棄していた”のがバレました。ネット民の多い大都市圏での票がヤバいです!」

「例のLGBT他差別発言てんこ盛りのミズタ議員が応援演説にでばったため、区民から非難ごうごう。なんとかしれくれとジコウ党区議候補が泣きついてきました!」

「“原発の除染作業の会社で役員報酬が数十億、復興資金横流し疑惑”が日刊紙のニチニチ現代にすっぱぬかれ、フクイチ地方は大荒れです!」

「例の野党に対する悪質デマを流しまくったサイト 政治温故の運営者ですが、その兄であるジコウ党議員と長官と親しいとの報道が!どう誤魔化せばいいかとグンミョウジの支援者の方から連絡です!」

次々とくる都市部、地方からの電話連絡。どれもジコウ党と癒着した会社やら議員やらの汚職、不祥事、不品行などがばれたなどという選挙に響きまくるものばかりだ。ガース長官らは週明けまで隠蔽工作に追われた。


その日、ようやく、ガース長官が自室にもどったのは夜遅く。寝る前のお茶の時間のころだった。

「はあ、はあ、お茶は」

と閉まっていたガラスのティーポットを取り出すと、すっかり湿気をおびたスギナの茶葉。

「と、とりあえず飲んで、う、ま、不味い。これは湿気たからなのか、それともスギナとはもともとこういう味なのか」

それとも自分の体調が悪すぎるのか。悩みつつ鼻をつまみながら健康茶を啜るガース長官であった。


ハーブティー、薬草茶などはお口に苦く、飲みにくく感じられる場合がありますので、何種類かをブレンドするとよいそうです。なおホーステールは爪によいという話も聞きますが、頭髪への影響は不明です。

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