その瞳で何を?
嘘つきなAとの付き合いは今年で30年目、わたしはもう彼がいないと私生活に支障をきたすほどに彼に依存している。
Aが晴れだという時は、大体雨が降ることが多い。気は利くのだが、彼との関係は疑いの目を持たないとやっていけない。全てを鵜呑みにすると、今みたいにびしょ濡れになるのだから。
「今日晴れるって言ったよね」
「ごめんなさい」
「わたしがタオル持ってこなかったら大変だったんだよ?」
「うん」
覇気のない生返事を一つ二つ。
あまり怒りすぎてもAの気持ちが沈むだけなので、ここら辺で留めておいた。
「全くもう」
そして今日は私の40回目の誕生日。
Aが何をしでかすか分からないから、私は彼にバレない様に事前にチェックする。
ドッキリほど恐ろしいものはないからだ。
「そっちには何もないよ」という場所ほど怪しい。隈なく触って調べないといけない。
「何してるの?」
「わっ、急に声かけないでよ」
「そこには何もないって言ったでしょ」
「でも嘘つくじゃない」
「もうつかないよ」
「信じられ……」
また怒りそうになった時、Aが何かを首にかけた。チェーンの中心には花の様な飾りが付いている。
「ネックレス……?」
「お誕生日おめでとう!」
「ありがと……」
直球で来られると、恥ずかしくなる。
「私まだかわいい?」
「かわいいよ。ほんと」
「うそ、脈が早くなった」
「ほんとほんと!かわいいよ。世界一可愛い!」
「嘘おっしゃい」
そのまま私は眠りについた。
Aは悲しそうな顔で私を見ている。
大丈夫、私はこの日を心待ちにしていたのだから。
「今からB子さんにコールドスリープを施します。これからの未来、彼女の視力が回復する方法が見つかるはずです」
無機質な箱の中、小さな嘘つきのAIはB子さんに寄り添いながら眠りについた。
文芸学科と呼ばれるものがあるのですが、そこの過去問は突飛なものばかりです。基準果たしてなんなのやら。
勉強をしていてよく分からなくなることもあります。
あーあ、受かってるといいなぁ。