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超能力者は異世界で、  作者: 加藤純
2/7

002 思い起こす。

 初めて、ハッキリと意識して使ったのは、五歳の頃。

 幼稚園に巣を作ったつばめを、テラスでみんなで見ていた時のことだった。

 雛鳥ひなどりの一匹が、不運にも巣から落ちてしまったのだ。

 僕はとっさに助けようとして手を伸ばした。右手だけ。パーの形で。

 その結果、雛鳥は巣から十数センチぐらい落下して、逆再生のように巣へと押し戻された。それを見たまわりのお友だちから「飛んだ!」と声が上がったが、起こった現象を理解できるはずもないので仕方なかった。

 ただ、一緒にいた担任の先生の顔だけは鮮明に覚えている。鳩が豆鉄砲を喰らった、というのはあんな顔なんだろう。


 それからというもの、歩き始めた子どもが、歩き続けて走れる様に成るがごとく。僕はつとめて超能力ちからを使うようにし、半年後の就学時にはもう、手に持てる物ぐらいならば自在に動かせるほどになっていた。


 さて、そんな子どもがいたらどうなるか、まるで想像にかたくないはずだ。

 それから小学校を卒業するまでの六年間で、早くも僕の人格と対人能力は形成されたと言える。

 頼まれても素直に応えられなくなった訳である。

 思い出すのも嫌だが、簡単に表せば「よこしま」「金」「人」だ。

 そして中学生としての三年間は全国を転々として過ごした。出来るだけ親しい間柄を作りたくなかったからだ。

 親しい人がいない代わりに時間ができたので、この頃はもっぱら超能力を伸ばすことに明け暮れた。

 テレビに始まり、洗濯機、冷蔵庫、箪笥たんす、車。家中の物は楽に持ち上げられるようになった。

 人目をしのんで外に出ると、砂を自在に動かしてみたり、空を飛んだり、燕と速さを競ったり、思い付いたことは何でも試して実現した。

 高校が決まる頃にはもう、人目を避ける事よりも、周囲に影響がでないよう特訓する場所を見つけることの方が難しくなっていたので、僕は暇を見つけては海へ行き、空を飛んで沖に出ると、鯨の群れを海水ごと空に浮かばせたりしていた。もうこれくらいでは汗一つかかなかった。

 それから三年、さすがに隠れる事にも慣れて引っ越しをすること無く、無事に高校三年生になった僕はさらに腕を上げている。当然だ、もはや鯨はダンベルない。気まぐれに遊びに行くぐらいだ。


 最後に、僕の最大の幸運は両親に恵まれたことだろう。

 信じられない事に、両親は一度も僕をうとんだり、呪ったりしなかった。

 それどころか僕が超能力を使うことを認めてくれて、励ましてくれて、ずっと支えてくれたのだ。

 特訓するところを僕が見つかってしまい、逃げるように帰った時など「え~また引っ越さなきゃ行けないじゃん」なんて言いながら、ウキウキと「次は海の近くがいい」とか「温泉地とか良くない?」とか、まるで旅行を楽しむようだった。

 ……僕が、今もなお人の頼みを聞いて、無下むげに断ったりしないのは、『人』に対する思いを決して絶望させなかった二人のおかげだと思っている。

 思いきって伝えたら、本人達は「えーそうかなぁ」なんて考えたらしいけど。




 ――そんなわけで、これが僕。

 僕が頼みを聞くのもやぶさかではない理由。

 一応、補足しておくと、頼みを受け入れたとしても超能力を使わないことが多い。事実ここ三年間では二回くらいしか使わなかった。……超能力が必要な頼み事って普通されるものじゃないしね?



 では、この僕に対して、女神(仮)がするお願いとは?

 超能力が必要なのはもう明らかだ。 

女神(仮)自己修復中...

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