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美しき炎の魅技  作者: ナレコ
8/14

トラうましか

sideトリスタ

stageトリスタの屋敷


「それで…見神の容態はどんな感じなんだ?」


シルフィの言うも憚られる恐ろしきお仕置きを受けた後、俺はシルフィと見神の様子を見ていた。

見神は酷い汗っかきなのか物凄い汗を流していた。

しかも、悪夢でも見ているのか凄く苦しそうな顔をしていた。

大丈夫だろうか?


「そうね…。このまま看病すればたぶん良くなると思うわ」

「そうか! よかったぁ」


そこまで悪い病気とかではないらしい。

それは朗報だった。

しかし、何故急に体調を崩したのだろうか?

やはり、初めての雪で興奮し過ぎて知恵熱でも起こしたとかだろうか?

もやしだなぁ。


「ただね…」

え、なにその不吉な言葉。


「どうも見神は精神が弱ってるみたいなのよね…」

「精神が弱ってる?」

「ええ、私もそんなに詳しい訳じゃないんだけど、見神の様子からしてトラウマみたいなのを思い出した感じがするのよ」

「トラウマ…か」


トラウマを思い出して精神が弱るか。

つまりあれか。

トラにウマを食われたショッキング映像を見て精神が弱ったのか。え、なにその博愛主義。


「…何かくだらないこと考えてない?」

「マさカ! ソんなコとチッともカんがえてナいよ!」

「ところどころでなんか片言な気がするけど…まあいいわ」


あ、あぶねー! ふざけてたら、いつの間にか顔に出てたらしい。

いやー、取り繕うのも罠部屋で寝泊まりですな!


「じー…」


ぎゃー!!すみませーん!


「こ、こほん。それで、他に何か分かったことは?」

「私からはもうないわ…。出来ることはするつもりだけど、人の過去なんて無闇に探るものじゃないし」

「そうか…」

「トリスタは何か知ってる?」

「いや…俺にも何がなんだか…」

「そう…困ったわね」


見神は大事な友人だ。何とかしてやりたいとは思ってる。

けれど、原因も分からないんじゃやりようがない。

どうしたもんか…。


俺達は見神の前で頭を捻っていた。

何とももどかしいが、何も出来ることがないんじゃあな…。


「「はぁ…」」

「どうやら我の助けがいるようじゃのう?」

「「!?」」


誰だ!?

声に振り向くと、夜の闇のように黒いマントがはためかせていて姿が見えなかったが、この登場の仕方と声で何故か誰だか分かってしまった。


「お前かホルルト!」

「ちょっ!? こらー! 人がせっかくかっこよく名乗り上げようと思っとったというのにネタバレするとは何事じゃー!!」


お笑いトマトイーターの癖にそんな登場の仕方をしようとするとは何事かと逆に問いたい。

しかも、こいつってこういうとき基本役に立った覚えないんだよなぁ…。


「ぐぬぬ…! 下等生物の癖になんじゃその眼は! 我はホルルト・ロートモ・ヒルリアーベンなのじゃぞ!」

「誰が下等生物だ。このトマト馬鹿が」

「誰が馬鹿じゃ、この愚か者! 今すぐ頭を地面に付けて謝らんと我のナイスでクリティカルなアドバイスを教えて上げないんじゃぞ!?」

「どうせ、トマト料理たらふく食べさせるとかだろう?」

「はんっ! やはり低脳よ! 高貴なる我が至高の考えが思い付きもしないとは!」


…いちいちうざいなこいつ。


「じゃー、なんだよお前の考えって」

「フッフッ、それはじゃなー「夢見の宝玉さ」って、それ我のセリフぅー!」


窓を見るとそこには雪のように白い猫の亜人が立っていた。

いや、猫じゃない猫又だ。よく見たら尻尾が2つもある。

そして、ロリだ。俺よりちょっと身長が低いくらいの元の世界基準で小学5年か6年くらいの幼女だ。


というか寒くないのかあの格好。見た目魔法使いみたいな軽装備の青百合柄のローブを羽織ってるだけで、あの中ワンピ1枚とかふざけてるにもほどがあるぞ。


まあ予想は出来る。たぶん、それ以上装備をガッチリすると装備が重くて動けなくなるからってのは。

だとしても、もう少しどうにかならなかったのか。


それにしてもあの猫又ロリ…何て言ったっけ?

確か『夢見の宝玉』だったか?

ホルルトの奴も反応から察するに当たりっぽい感触があるが…。


「シルフィ、知ってるか?」

「…ええ。旅をしていたときに少しね」


シルフィは知っているらしい。


「何でも、他人の夢の中に入れるアイテムだと…聞いているわ」

「他人の夢の中に…?」


そんな夢みたいなアイテムがあるとはな…。

というかそんなものがあったら俺ヤバイんだが。

最近、淫魔に襲われていたからか自棄にエロい夢ばっかり見てんだよな。そんなもの俺が寝てるときに使われたら精神的に俺が死ぬっ!


というか、なんでこの前旅先で泊まった宿にサキュバスが出るんだよ!

鋼の奴は即座に起きて脳天踵落とし決めていたらしいが、俺は気付くのが遅かったせいかなんか変な魔法掛けられたままになってんだが…。

しかも、そのせいなのかどうかは知らんがレトアの奴が最近ますます暴走するようになっちまって…。


「うわぁぁぁぁ!!」

「ぎょふっ!? び、ビックリさせるでないこのたわけ者っ!」

「な、なんだいいきなり…?」

「恥ずかしー!!」


レトアはまれに感情が昂りすぎて大暴走するときがある。

普段はド天然元気炸裂天真爛漫頭ふわふわゆるゆる娘で、どんなに恋愛っぽいフラグがあろうとその持ち前の純粋さと残念さで回避しまくる奇跡の女だが、何故か。本当に何故なのか俺にだけごくまれに恋愛スイッチが入ることがある。

スイッチが入る瞬間は全く予想が出来ず、突然来ることが多い。


そして、スイッチが入った奴は凄まじくストレートだ。

俺へと急接近したかと思えば、思いっきり抱き締めて自らの思いのままにありとあらゆる感情を俺にぶつけまくってくる。

もちろん、レトアは俺に対して殺さない程度には加減してくれる。だが、絶対に気絶させるほど一気にぶちまけてくるので、周りが抑えるか奴が興奮するのを止めるまで俺は失神し続けるしかなくなってしまうのだ。

じゃあ、逃げればいいじゃんと思うだろうがそれは出来ない。


何故なら、奴はラストホープとまで呼ばれたリビングドール。俗にホムンクルスとも呼ばれる人造強化人間なので、ただの人間である俺が逃走しても身体能力に差がありすぎてあっさり追い付かれるし、例え隠れたとしても、女の勘というやつなのかそれとも素の感知能力の高さなのか絶対に発見してくる。故に回避も出来ない。

幸いなのかレトアにヤンデレ要素はない。というかあったら物理的に死ぬ。死んでしまう。


ちなみに原因は分かっている。恐らくは昔、俺が調子に乗りすぎて下ネタやらなんやらをふざけて教えていたせいなのだろう。

今思えばなんかそんなことをレトアに教えていたような記憶があるのだ。

自業自得とはいえ、これはないと叫びたい。


そんな悪夢を思い出した俺はまさに無我夢中でそれを叫んでいた。


「俺って奴はなんてことを、しちまったんだぁああ!!!」

「はぁ…落ち着きなさいっ!」

シルフィの脳天レッグハンマー(足をハンマーに見立てて頭をぶっ叩く強力な蹴り技)が俺の頭に炸裂した。


「いっっっっつぅーーー………って、レッグハンマーはないだろっ!」

「そこはせめて脳天空手チョップくらいにしてって? そのくらいじゃ落ち着きそうにないんだもの」

「うぐ…」

「それで、『夢見の宝玉』をどうするって?」


シルフィがさっきの俺の狂乱を無かったことにして話を続けようと二人に会話を促す。


「えー…と?」

「いいのか?」

しかし、やはりすぐには状況が飲み込めなかったのかロリ二人は俺の様子が気になるようで会話をする気にならないようだった。

シルフィは溜め息を1つ吐いて、頭を抱え込む俺を見やる。


「トリスタはもういいわよほっといて。また暴走したら叩いて直すだけだし」

「ひでぇ…」

「事実よ。…続けてもらえる?」

「分かった…のじゃ」「分かった…よ」


シルフィのお陰か、そのあとの話は驚くほどさくさく進んだ。

いつもならホルルトの馬鹿が馬鹿をやらかすのだがそのくだりすらないため、本当によく話が進んだ。


「なるほどね…。つまり、『夢見の宝玉』を使って、見神のトラウマを克服させるのね?」

「はい…。しかし、そう上手くはいかないと思います…」


猫又のロリは俺をちらっと見る。


「どうして…って、聞くまでもないか」

「察する通りなのじゃ…あくまで『夢見の宝玉』は夢の中に入るだけのアイテム。つまり、悪夢はどうにか出来てもトラウマそのものをどうにか出来るアイテムとかではないのじゃ」


そこでホルルトもドヤあと俺を見る。


「それって、ただの一時しのぎにしかならないんじゃないの?」

「はい。でも、夢の中で少しでも改善出来るなら本人の自信にも繋がりますし、前より克服しやすくなるんじゃないかなって思います」

「確証はない、か…。それでもやらないよりかはましか」


そして溜め息を付きながらシルフィもやっぱり俺を見る。


「ところでトリスタ」

「なんでしょうか?」

「あんた…ねぇ…」


ーーがらっ


「飯の時間だ…ぞ?」

「わふっ…いきなり立ち止まらないでくださいよー! …って、あれ? 何してるんですかトリスタ」

「…首が痛いぜいなばうあー」

「痛いならさっさとシルフィに謝ってヒールしてもらえ」


がらっーー


おっしゃる通りで

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