真っ白な雪はいつも犬や子供にダイブされる運命
久しぶりに投稿だー!
久しぶり過ぎてヤバい。
stage「森」
side真白 雪
「オラァ! 死ねぇえ!!」
「速いっ!?」
オーガの全体重を乗せた踏み込みが雪で積もった大地を粉砕し、土砂をも巻き上げる。
爆撃のような踏み込みから繰り出されるのは、全身を使った突進攻撃。
足元が滑るはずのこの森の中でこちらへと、急激な勢いで接近してくる!
氷の壁でこの勢いを止めるのは無理か!
「《スライドフリップ》!」
「なにっ!?」
でも、避けられない訳じゃない!
一瞬で間合いを詰めてきたグレンを嘲笑うかように僕の体は横にスライドしてグレンの突進をかわす。
僕は魔法使いだけど固定砲台じゃない。
これでも『動ける』魔法使いなんだよ!
「これでも喰らえ!」
「ぐっ!」
グレンの背中に3発の《アイスボール》をお見舞いする。
「やった!」
「…ルル」
それ、フラグな気がする。
白い煙が晴れていき、現れたのはこちらを嘲るような笑みを浮かべたオーガの姿だった。
「……なんてな。効かねぇよこんなもん」
「なっ!?」
「やっぱりか」
背筋が硬くなっているのかのけぞりもしてないとはね。
まいったね。
ーー思った以上に硬くなってる。
さっきは油断していたこともあり通った攻撃も、警戒している今ではほとんど効かないとは……。
これは下手な攻撃ばかり仕掛けると長期戦に持ち込まれるかもしれない。
「次は避ける暇も与えねえ」
「っ! 《アイスシャベリン》!」
「効かねぇつってんだろうが!」
グレンの身体が大きく左右に動き、魔法を弾き飛ばしながら間合いを詰めてくる。
ルルを担いでいる今、あんまり無茶な動きは出来ない。そもそも魔法使いの僕にはバフが掛かった今でもGの掛かる動きはかなりきつい。
《スライドフリップ》は僕自身に《ライトウェイト》の魔法をかけて体重を軽くした上で一瞬だけ強い風の魔法を吹かせることで僕自身を弾き飛ばす小技だ。
いくら体重を軽くしてるからといっても軽く出来る限界があるし、避けるためとは言え、弾き飛ばす動きに何度も耐えられるとは限らない。
それに何よりもここは森の中だ。
周りに障害物が多いせいか弾き飛ばす方向にはどうしても気を使ってしまうために反応が遅れてしまう。
それはグレンも分かってることだろう。
そして、何発か攻撃を避けていると唐突にグレンがキレた。
「いい加減当たれオラァ!」
ブオン!
空気を割るような豪快かつダイナミックな剛腕が僕の目の前で炸裂した。
「ぐっ……」
地面に舞い上がった雪が僕の顔へと浴びせられ、思わず腕を上げる。
それはグレンから見れば明確な隙でしかない。
「もらった!」
二撃決殺。偶然か必然か、目の前で硬直した雪飛沫の影にグレンの容赦ない右拳が突き刺さる!
バコォ! という岩でも粉砕したような炸裂音が場に轟き、大気を震わせた。
「手こずらせやがって……」
グレンはゆっくりと拳を持ち上げ、ミンチになった雪とルルの存在を確認する。
しかし、拳に血が付いていなかった。
「なにッ!?」
「後ろだよっ!《ファイアアロー》!」
「グおッ!?」
がら空きの背中にさらに2つ魔法を射つ。
「《サンダーバード》!《アクアバレット》!」
「調子にィ、乗るなァァ!!!」
続けて発動。
正直、氷雪属性以外の魔法は得意じゃない。
でも、初級魔法なら無詠唱で行ける。
「《アイスウォール》《アースエッジ》《ホーリーストライク》!」
突撃体勢を壁で阻み、土魔法で足元を傷付けて、動きが鈍くなったところを聖魔法を撃ちこむ。
「うぜぇだけだっつってんだよぉ!」
やはり、多少の傷程度ではグレンを止めるには足らないか。
それに弱点となる属性がないことも理解した。
思った以上にあの再生能力が厄介だ…。
僕はこれまでに再生能力持ちと何度か戦ったことがある。
そのときの経験から弾き出された答えは再生の核となる部位を壊すか、再生させる暇もないほど圧倒的な火力で押しきるか。
「死ぃぃねぇぇぇ!!!」
ちゃぶ台返しのように氷の壁ごと雪をかき集めてそのまま前方へぶちまけてきた!
背後にあった木の後ろに身を隠しつつ、上空から奇襲を仕掛けてきたグレンをじっと睨み付ける。
オーガの異常個体となると、一撃で倒すのは厳しいかもしれない。
それこそ身体をバラバラにしかねない凶悪な面攻撃でもない限りは確実に倒せるとは言えないだろう。
そんな魔法唱えられる隙が作れるのか?
もしそれすらも駄目となれば、残る最後の答えはひとつとなる。
……それは何度も再生能力を使わせて再生が出来なくなるまで戦うこと。
それを選べば確実に持久戦になる。
持久戦は魔法使いにとって悪手の戦術だ。
特にソロで戦う魔法使いにとっての持久戦というのは禁じ手と言っても良い。
何せ、魔力がなくなれば死ぬ。
そう言われているのが魔法使いなのだから。
「潰れろオラァ!」
ドォン!
全身の体重をかけたボディプレスが僕達ごと押し潰そうと炸裂した。
それを横にスライドして避ける。
「だけど、それでも、だよ」
覚悟はとっくの昔に決めた。
冒険者になったあの日から僕の決意は迷うことはあれど変わらない。
それにまだ、一撃で決まらないとは限らない。
思った以上のスペック差に覚悟をし直す必要があると感じただけだ。
「《ウォーターシュート》!」
「いい加減当たれやチビ猫がぁ!!」
グレンは馬鹿の1つ覚えのように突進してくる。
怒りで我を忘れてるのか、水鉄砲など避けるまでもないと思ってるのか避けもしなかった。
ならばと水の勢いを増やし、突進の勢いを抑え付ける。
「ぐっ、ぬぅ…!」
「雪さん! 水をぶつけてるだけじゃ止まりません!」
そんなことは分かってる。
水鉄砲を浴びせるだけじゃ、走る勢いは減らせてもオーガのパワーで押しきられることくらい分かってる。
上級ならまだしも中級の魔法じゃダメージにもならないことも分かっている。
だから、もうひとつ魔法を使う。
「《フローズンブレード》!」
生み出された氷の刃は僕が今まさに放射している水鉄砲の中に生成された。
それらがグレンにぶつかり、小さな傷を作り出す。
「こんな掠り傷程度で俺をどうにか出来るとでも思っているのかぁ!」
思ってなどいない。
今も傷が出来た端から再生しているのだからこれで仕留めることは不可能であることには間違いない。
しかも、思ったより魔力を持っていかれる。
悪手と感じたその時点で一度魔法を切り、グレンが前に倒れかけたところを狙って《アイスシャベリン》を2つ飛ばして、ザクザク刺していく。
打撃系や爆発系の攻撃は効きにくいようだが、斬撃系や突き系の攻撃は有効なようで、刺さったり斬られたりしていた。
ならば、しばらくはこの方法で攻めていくのが良さそうだ。
「ぶっ飛びやがれぇ!!」
「ッ!? 《シールド》!!」
ビリビリッ! と魔力障壁に衝撃が走り、ぶっ飛ばされる。
今のは危なかった。避けた先にパンチが来た。
グレンはクズだけど、馬鹿ではなかった。
僕たちは魔力障壁ごと吹っ飛ばされてしまった。
「きゃあ!?」
「ルル、大丈夫だから!」
中級魔法をものともしない硬い装甲、瞬く間に再生する再生速度、異常なまでの身体能力。
どれを見ても勝てる要素がほとんどない。
事実、ルルを落とさないようにするだけで精一杯だ。
ーーだけどね。
ーーそれでも、負けるわけにはいかないんだよ!
「ルル、ちょっとの間我慢しててね」
「ひゃっ!? 冷たい」
僕はルルを背中に背負い直し少しの間、凍結魔法でルルと僕の身体をくっつける。
魔力触媒をポーチから取り出し、魔力を練る。
「逃がすかぁ!」
ドスドスと猛烈な勢いでグレンが僕たちを追いかけてくる。
邪魔な木を蹴り飛ばし、殴り飛ばし、押し倒してがむしゃらに真っ直ぐこちらへと走るその姿に恐怖を覚える。
一回殴っただけじゃやっぱり満足しないよね。
ーー大丈夫、策はある。
腹に力を込めてグレンを睨み付ける。
「凍てつけっ!《フリージングブリザード》!」
「うぜぇだけなんだよ!」
「それはどうかなっ!?」
もう少しで地面へと落ちる最中、グレン目掛けて氷と風の複合属性魔法を放った。
グレンが一気に加速しようとしたそこを狙って放たれたその魔法はグレンの周りを一気に凍結させた。
なぜ、氷の槍よりダメージのない水の魔法を使ったと思う?
それはお前の手足を凍らせるためさ。
「なっ!?」
「チャンス!」
足の表面が凍って滑り転んだグレンに追い討ちを掛ける!
風魔法でぶっ飛ぶ身体を制御し、グレンに狙いを定める。
練っていた魔力を魔術触媒に込めて、グレンへとぶん投げ発動!
「来い《クリエイトゴーレム》!!」
「ゴーレムだとっ!?」
パキパキパキパキッ!!
触媒を中心に氷で覆われたゴーレムが瞬く間に形成され、さっきまでの巻き返しのようにグレンへと全体重を乗せたボディプレスを落とす。
「ぐはッ!?」
出来立てほやほやのアイスゴーレムがグレンを押し潰し、動きを封じる。
しかし、グレンはオーガだ。
アイスゴーレムは確かにでかくて重いが、オーガのパワーならあのくらいの重量をはね除けるのは簡単なはず。
だからさらにコンボを重ねる。
「《スプラッシュ》!《フリージングバインド》!」
「がぁぁ!? てめ、いい加減に……」
水をぶっかけ、凍結魔法でさらに凍らせ、これでもかと更に拘束を強化する。
それでも奴の馬鹿力なら脱出出来るかもしれないが、それだけ動きを封じられればすぐには逃げられないだろう?
「全てを凍てつかせる絶対零度の氷精よ」
「ッッッ!?!?」
さあ、準備は整った。
奴が脱出するのが先か僕が詠唱を完成させるのが先か!
一方的で理不尽な勝負をしようじゃないかっ!
「我が意に応え、怨敵を氷塊へと変じよ!」
グレンが全身の筋肉を震わせ、氷塊にひびが入る。
怪物め、もう少し捕まっててくれよ。
「巨大な氷塊をも砕く必殺の一撃を今ここにッ!」
アイスゴーレムが押さえ付けてるけど、あの感じじゃもう吹っ飛ばされるかな。
でも、お役目ご苦労。間に合った!
「《タイラントフロスト》ッッッ!!!」
ゴーレムとはよりさらに大きい8メートル以上はあろうかという巨大な氷の巨人がそこに現れた。
現れた瞬間には周囲の温度が急速に冷え込み、巨人の足元をパリパリと凍てつき始める。
それはもちろん脱出しようともがくグレンをも凍てつかせていき、瞬く間にアイスゴーレムをも覆う氷塊へと成り果てていく。
僕はルルを守るため、残り少ない魔力を魔力障壁に回してこの場から一度離れた。
「……ちょっとまずいね」
「マシロさん?」
上級氷雪魔法。
あれは僕が作った魔法の中でもかなりヤバイ魔法だ。
何せ巨人を現出させたその時点で辺りを凍結させてしまうのだ。
ただそれだけでも酷いが、それよりも酷いのは氷塊を文字通り叩き潰すことで発生する寒波を巻き起こすことだろう。
その寒波は空気中の水分を急速に凍てつかせることで発生する冷たい風であり、寒波が過ぎ去るとその風に包まれたものは雪だるまか氷の像と変えてしまう恐ろしい一撃なのだ。
本当ならもっと被害の少ない上級魔法などを使いたかった。
しかし、グレンが持つ脅威的な再生能力とアホみたいな怪力のせいで、この魔法しか有効的な魔法がなかったのだ。
「オオオォォォォ!!!」
巨人が天に吠える。
どう見てもグレンよりモンスターだよあの巨人。
周りからも雪を集めるように設定したからか思ったよりも遥かに大きくなってるね。
大きさにして……20メートル以上は有りそうだね。
「…さすがにやり過ぎかな?」
「あばばばば」
巨人が、両腕を、大きく、振りかぶってーー振り下ろしたッ!
バッッ!!コォォォォオオオオオオオオンッッッ!!!!!
ダイナマイトでも爆発したのかと思うような強烈、凶悪、無慈悲の大音響が大気を轟かせた。
猫又の僕も、犬耳を持つルルもその爆音に思わず耳を塞ぐ。
なんて威力だ!
耳だけじゃなく、全身の感覚までも襲ってきて、消える。
どこが地面なのか、寒いのか暑いのか、どこを見て、何を感じているのか。
それすらも分からなくなるほどの音の暴力。
ハッ!? ルルがヤバい!
既に深手を負っているルルにこれは耐えきれないかもしれない。
全身の感覚が消え失せそうな中、全集中力をかき集め、魔力障壁の密度を上げる。
ルルは、守らないと。
視界がチカチカと付いたり消えたりする中、僕は何者かの影を見た気がした。
書くのが上手くはなってきているが、投稿速度の遅さが致命的すぎる




