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美しき炎の魅技  作者: ナレコ
13/14

雪景色は世界が変わるファンタジー

エタってすまん。だが、諦めず更新するよ!

stage「トリスタの屋敷 玄関口前」

side流瀬 鋼


 シルフィとファンプを連れてエルフの森でガマ油を取ってこいと、いつものように無茶ぶりな話を依頼された。

 シルフィは分かるが、ファンプを連れていけとはどういうことだ?

 それにエルフの森にカエルの魔物なんていたか?

 分からん…全く分からんが、とりあえずあの馬鹿が持ってきた話だ。またどっからか探してきたんだろう。


 俺は日が昇り、太陽が見えて来たのを見た。

 二人とも何故か朝は早い。だから、二人を呼ぼうと思った。思ったが、行動はしない。いや、出来ないと言った方が正しいだろうか。

 なにせ俺の隣には熟睡中の業の者が立ったまま寝ているからだ。

 よくもまあ、マイナス何度かも知れない真冬の夜空の中で寝てたなと思う。


 いくらジャケットを貸したからと言っても、それでも外だぞ?

 そいつは廊下で毛布一枚で寝てんのとほとんど変わらない。

ーー普通なら風邪引くとかそんなレベルじゃなく凍えて死ぬような気温だぞ?


 外にいることが多い俺ですら体を動かしながら何とかってもんなのにこいつ震えもせずにそのまま寝てやがる。

 ここまで堂々と寝るのはさすがに呆れて感心すらする。

 だが同時にすごい馬鹿だとも思った。人のことは言えんが。


 外は相変わらず雪が降っている。

 この寒さに一体何人の浮浪者が死んでいくか考えると隣のこいつが死んでるのではないかと思った。

 だが、震えもしない彼女の呼吸は一定で、全く動じてない。


「凍死しないのが不思議なくらいだな」

「そう思うなら屋敷にあげなさいよっ!」


 ドカッ! とダイレクトキックを腕で受けてシルフィのツッコミを受け流す。


「ちょうどいいときに来たな。悪いがトリスタに話しておいてくれるか」

「真面目かっ! というかこうなるなら町の宿屋の1つや2つ紹介しときなさいよ! お金がなくてもギルドを紹介すれば1日くらい無償で泊めてくれるでしょうが!」

「…そんな制度があったのか?」

「あるわよ! 約100年前に勇者がこの世界に来てから少しした時に国で大々的に発表してたじゃない!」


 ギルドの話なんかまともに聞いてなかったし覚えてねぇな。依頼も基本的に野外での活動が多かったし、どっかでそんな話もあったかもしれないが、町の中より外の方がいくぶんかやり易かったせいか野宿ばっかで泊まるという発想すらなかったな。

 と言うか…


「100年前の話なんざ人間の俺が覚えてるわけないだろうが…」

「あ、そうだったわね。一応、鋼は人間だったかしら」

「一応は余計だ」


 普段どう思われてるのか少し気になるが、気にしないことにする。

 それよりも気になるのはシルフィは100年前にあった情報を更新してないことだった。ギルドや地区によっては制度が違う場合があり、この辺りは国と国の境に近いことから普通のギルドと制度がかなり違って、案外制度が厳しい部分が多い。その割には雰囲気はゆるゆっるだがな。

 しかし、そんなことよりももっと気になるのはーー


「その猫、まだここにいるのか?」

「猫じゃない雪だよ」


 むっ、と顔をしかめてその白い猫又はシルフィの後ろから現れた。

 …シルフィにしてもトリスタにしてもなんで猫が好きなんだろうな。


「雪ぃ? 妖精か何かか?」

「雪妖精か何かと間違えてないかい? 僕は真白 雪。こう見えても冒険者だよ」

「猫又の冒険者ねぇ…見たことないな」

「僕は君のことは知っているよ、泥血の剣鬼さん」


 ホルルトは血みどろとか言ってたが、他にもあるのかよそのなんか黒い二つ名。


「どうでもいいが、俺の二つ名有りすぎだろ。誰が作って広めてるんだ?」

「そこのところは僕にも分からないよ。僕も聞いただけだしさ」

「聞いて分かるなら苦労はしないわな」


 自分でやらかしたことは知っているが、そこまで有名だと表の依頼がやりにくくて仕方ねぇわ。だから一人で依頼をこなしていくばっかでしかないんだがな。

 雪の奴は若干の警戒をしながら俺を見ているようだが…別に俺自身は何かするつもりはない。

 噂は噂とでも思ってくれれば問題ないが、実のところ俺の噂にはいくつか本物も混じってるから全部が全部否定できる訳でもない。だから宙ぶらりんになってる噂もまた多い。


「で、雪はここへ何しに来たんだ?」

「友達の家に遊びに来ただけさ」

「友達ね…。へいへい」


 ここは人が多いから誰が居ようと不思議じゃないが、友達だからってお泊まりまでするような仲の奴がいるのか? 

 …あぁ、いたなそんな奴。なんでもかんでも屋敷にあげようとする馬鹿が。シルフィが屋敷にいる間は問題ないと思っていたが、シルフィもシルフィでアホな時があるのも忘れてた。

 俺はため息を吐き、馬鹿馬鹿しい屋敷の連中に呆れた。


「…俺だけ真面目にやってるのが馬鹿馬鹿しくなるわ」

「君も君で染まっていると思うけどね」

「何か言ったか?」

「いーや、なんにも」


 雪が何かを呟いたような気がするが、気にはしない。


「さてと、僕はそろそろ行くよ」

「そうか」


 どこに行くのか知らないが、元気でな。

 さぁーてと、シルフィは三日月を屋敷に連れて行ったし、猫又はどっか行ったから、俺はもう少しここでゆっくりしようか。俺はもう旅の準備は出来てるが、女どもは準備がやたらと掛かると聞くしな。






stage「ライトウェルの町」

side真白 雪


 僕は真白 雪。猫又の魔法使いさ。この世界へと迷い込んだのはもう半年ほど前になるだろうか。仲間と離れ離れになってしまって心寂しく思うもこの世界での日々に徐々に慣れていき、今では冒険者になってから一年も経ってないルーキーでありながら、冒険者の中でも一目置かれるほどの実力を持つC級冒険者になっていた。

 本当は英雄クラスに近い能力があるんだけど、元の世界に帰るためにもあまり目立たないように活躍する必要があり、また変に誰かに狙われても嫌だから普段は実力を隠して日々を過ごしている。


 僕がライトウェルの町へ来たのはとある屋敷の噂を聞いたからだった。何でもその屋敷には亜人と人が一緒になって仲良く暮らしていると聞いたからだ。

 にわかには信じがたい話だった。一年も経ってないルーキーの僕でもそう思うほどに、この世界では種族差別が酷いのだから。

 種族間で行われる戦争に紛争、ギルドの中でも行われるいざこざに喧嘩、弱い種族に至っては奴隷なんてものもあったほどだ。

 もちろん、種族差別がない国だってある。しかしそこは人間至上主義者の国で人以外が平等に差別されているだけの国だったり、戦争をやりたいだけの戦闘民族達の国だったりと割りとろくでもないところばかりだった。

 だからこそ、確かめたかったのかもしれない。こんな世界で楽園とも呼べるそんな場所を。


 そして、僕はそれを見た。プライドの高い者同士の吸血鬼とエルフが互いに理解しあい夕飯を作る信じられない風景を、人間が馬鹿をやって他も仕方ないなぁと馬鹿をやりだす馬鹿馬鹿しさを、滅多に病気にならない竜人を相手に皆でなんの打算もなく意見を交換しあうところを、強力な力を持つ相手に物怖じもせず笑い合う人々を、僕は見てきた。

 とても自然で、とても明るくて、とてもあり得ないそんな場所だった。僕はそこに一筋の希望を見たような気さえした。

 僕はそれを見て嬉しく感じていた。この世界は辛いことだけではないのだと、そう感じさせられたからだ。


「でも、結局僕は元の世界に帰るんだけれどね」


 この世界にいることに何の未練もないかと言われればそうでもない。何しろ不本意とはいえ、もう半年はこの世界に留まっている。半年もいれば色々辛いこともあれば素晴らしいこともあった。

 だが、そうだとしても僕には向こうに仲間を残してきている。

 まだ別れの挨拶すらしてないのに、このままこの世界に留まるのはさすがの僕も不義理に過ぎるだろう。

 それにあの世界には約束がある。だから、名残惜しくても帰らなくては。


 僕は懇意にしている情報屋に会いに行くために森の中へと向かう。

 この辺りにいるはずなんだけれど……。


「…誰を探しているのかな?」

「だれっ!?」


 知らない男の声が後ろからした。

 慌てて振り返り、杖を構える。


「あん? なんだ猫人かよ…」


 そこにいたのは全身をローブで包まれた不気味な男の姿だった。

 でかい、背が高いとかそんなレベルじゃなく、2メートル半は確実にある。1階建ての小屋より少し大きいほどのあまりにも大きすぎる異様な身体。

 それだけじゃない。


ーー異形とも言える赤黒い大きな手が服の袖から出ていた。


 なんだあれは…まるで悪魔の手のようじゃないか。

 まじまじと男の手を見ていると、何かを持っているのが分かった。何を持っているのか目を細めて見ると何処かで見覚えのある犬耳の女の子がいた。


「ごめん…失敗した…」

「ルルっ!」

「ほう、この子はルルというのか」

「ルルに何をしたっ!?」


 男は厭らしい顔付きで笑った。


「ナンだよっ!? オマエラダチか何かなのかっ!? これは愉快じゃねえか!? アーッハッハッハ!!」

「その子を返せ!」

「返して欲しかったら奪ってみな?」


 キンキンと響く酷く不愉快な男の笑い声とルルの力ない声がして、僕は、僕は…。


 キィン!

「ぐはっ!?」

「うるさい」


 手加減抜きの無詠唱で殴るように《アイスボール》《アイスシャベリン》を男の胸とルルを握る手首へと放った。

 手首を斬り飛ばされ、身体を吹っ飛ばされる謎の男…いやフードから見えたそれはもはや人間ではない。あれは鬼、それもオーガと呼ばれるB級モンスター。

 B級モンスターと言えば、100人規模の騎士団で何とか倒せるか否かと言われるほどの強敵だが、今の僕に敵うような相手ではない。それもまだ全力じゃない今の僕だったとしても。

 僕は滑るように移動してルルの元へと向かう。


「ルル、無事かい? 今、助けるよ」

「あ、ありがとう…」


 ルルを握りしめた指を《フリーズインパクト》で、凍らせて粉々に砕いた。《フリーズインパクト》は対象の水分を凍らせてから内側から爆発するように衝撃を加えることで粉砕する合成魔法だ。


 ルルを助け出し、すぐにでも回復魔法を使いたいところだが、あのオーガの男がこちらに向かっているのが見えたため断念する。


「てめぇ、実力隠してやがったな…?」

「雪さん!」

「心配しないで、ルル。速く終わらせるからね」


 速い。もう右腕が半分も再生してる。普通の個体のオーガには見られない異常な再生速度…こいつ、異常個体か。

 首をグキグキ鳴らしながら、表情の読めない顔でゆっくりと迫ってくる。


「驚いたよ…まさか無詠唱で中級魔法を二連続もぶっぱなせる奴が他にもいるなんてなぁ。お前、何者だ?」

「…そういうお前こそ何者だ?」

「アァ? そういや名乗ってなかったか」


 思い出したように上を見上げ、笑った。


「俺はグレン。ドクター・ガオズの研究体だ」

「ドクター・ガオズだと?」


 その名には聞き覚えがあった。後ろのルルも息を飲んだように驚いている気配がした。

 ドクター・ガオズ。鬼を研究するマッドサイエンティストで知られている指名手配犯だ。研究のためなら村人をグールに変えたり、魔物を鬼へと改造して近くの町を襲わせたり、嘘か真か吸血鬼の真祖を産み出したこともあるという恐ろしき生物科学者だ。

 まさかそんな極悪人の研究体が彷徨いてるとは…思いもしなかった。


「なんでそんな奴の手下がこんなところにいる!?」

「チッチッ、俺は奴の手下じゃねぇよ」

「なに…?」

「信じられねぇかもしんねぇが、俺は元々人間なのさ」

「改造体、か」

「マァな」


 何処か自虐するように苦笑し、そして切り替わるように敵意のある…いやイカれた殺人鬼のようなギラギラした顔でこちらを見た。


「だが、この身体も慣れると悪くねぇ! 俺はよ、元々盗賊だったんだ。魔物に殺されるかしくじってボスや仲間に殺されるか、殺しにやってくる騎士団の連中に殺されるかの日々から脱け出せたんだからなぁ! 魔物も盗賊団のクズどもも口煩い騎士団の連中もみーんなこの力でぶっ殺せたんだぜぇ?」

「…ゲスめ」

「お前もそこの犬ッコロも俺に殺されるしかねぇんだよバーカ!」


 被害者と言えば被害者なのだろうが、こいつはダメだ。してはいけないラインまで越えて暴走している!

 ここで倒さなくては近くの町が危ない!


 僕の戦意に気付いてニィィと薄気味悪い笑みを浮かべて構えを取り始めた。


「さっきは油断しただけだ。もう油断はしねぇ。俺はこの身体になってから一度も負けたことがないんだ。もうまぐれはねぇ」

「…そうか。お前はまだ負けたことがないのか」


 ならばその調子に乗ったその顔、僕の氷魔法で凍り付かせてあげるよ。魔力を練り上げる僕と赤いオーガの戦いが今始まろうとしていた。

少しは上手くなったかな?

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