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美しき炎の魅技  作者: ナレコ
12/14

少女の優しさ半分自分勝手半分のトマトジュースはいかが?

なかなか出せなくてすみません。

stage???

side見神


燃えている。

俺の目の前が燃えている。

人々は逃げ惑い、黒龍が笑い、俺の家族が倒れていた。

俺はこれが夢だと知っていた。

何故か昔から火事の話を聞いたり見たりするとこの悪夢を見ていたからだ。

俺はこんな光景を見たことがないはずだというのに…。


俺は火が嫌いだ。

この火がまるで自分の愚かさを見ているようだったから。

俺は火が嫌いだ。

俺が大事にしていた何かがどんどん失われていくから。

俺は火が嫌いだ。

火は全てを奪ってしまうから。

俺は火が嫌いだ。

嫌いだ。

だいきっらいだ。

死ね。

死んでしまえ。

アハハハハハハ!!!!

憎い!目に写るすべてが憎い!

俺をまるで化け物のように見やがって!

死ね!死ね!みんな全部燃えてしまえ!

黒く黒く何者か分からなくなるまでドス黒く燃え尽くして灰になって死んでしまえ!

そうすれば俺は俺はきっとーー


「はっ!…夢か」


周りは月明かりに照らされていて夜目がよく効いていたためによく見えた。隣にはうつらうつらとしている赤髪の少女がいた。


「はぁ…はぁ…」


心臓がうるさい。

気分も凄く悪いし何より暑い。

酷く汗も掻いた。


「げほっげほげほ!」


息が…詰まる。

腕が震えだし、足もガクガクと痙攣している。

あぁ、ヤバイ。

このままだと気分の悪さと夢見の悪さで何か良くないことをしてしまいそうだ…!


「ぜー…はぁ…ぜーぜー…何とか外に出ないと」


とにかく外に出なければ…!

何とか身体を起こし、虚ろな瞳を宿したまま俺は外へと向かった。



stageトリスタの屋敷

side流瀬 鋼


…妙なことになってしまった。

何故俺はこんな犯罪者一歩手前みたいな状況になることが多いのだろうか。俺はなにもしていないというのに。

これもそれもきっとあの馬鹿が悪いに違いない。


本当はそうではないのは分かっているが、いつかの大馬鹿が俺に言ったのだ。

一人になるな。それくらいなら八つ当たりでも何でもしろと。

…気に食わないがこれも約束だ。

あいつの…奇妙で、変な、約束。


「ちっ…面倒なことを思い出しちまった…」


スヤスヤと気持ち良さそうに俺の隣で門の横にすがって寝る少女と並んで、俺はため息混じりに外を眺めていた。


さく、さく…。


「こんな時間に誰だ?」


気付けば屋敷の方から誰かが出歩く音がした。

この足音と気配…少し弱いが見神か?

何故外に出ているんだ?

俺は不思議に思いながらも門を開けて、中を見る。


「はぁ…はぁ…」

「おい、どうした?」


見ればそこにはどう見ても平常ではない顔の見神がいた。

なんでこんな状態にまでなってこいつ出歩いてやがるんだ?


「ハガネ…か」

「…凄い汗だな。そうか、暑かったのか。それならこっちじゃなくて庭のある縁側に行けばもっと涼しいぞ?」

「はぁ…はぁ…」


まともに口が利ける状態じゃなさそうだな。

シルフィの薬があまり効いてない。むしろ、酷くなってやがる。

龍には生半可な薬が効かない、そういうことか。


「…ちょっと待ってろ」

「…ああ」


何とか返事をする見神を待たせ、俺は恐らくこんな夜更けだろうがたぶん起きてるあいつを呼びに屋敷に入った。

あいつは元とは言え夜の帝王とか呼ばれていた種族。まだ起きてるはずだ。俺はあいつの気配を探り、…食堂でなにやら夜のお茶会と言う名の悲しいつまみ食いをしてる馬鹿のところに行った。


「起きてんだろロリババア」

「聞こえておるわい。…それで何の用じゃ」

「何の用か本当は分かっていて聞くのは止めろ。お前の耳が地獄耳なのはもう知っている」

「…相変わらずせっかちじゃのう」

「時間がないんだ」


俺が真面目な顔で見ると邪魔されてしかめっ面していたホルルトが「ふぅん?」という探るような目をしてーー


「……ごほーび欲しいんじゃがのう?」


ーー何故かあざとい要求をしてきやがった。

一瞬、目の前が赤くなりかけたが我慢した。

戦ってる場合じゃないから。


「…一日だ」

「3日」

「…分かった2日でどうだ」

「そ、それでいい」


何故か顔を強張らせるロリババアから目線を反らし、見神のところまで行く。

ノジャトマトには俺の本気の狩りを見せてやらんと駄目かもしれんな…。



stageトリスタの屋敷

side見神


「任せたぞ」

「あい、分かった」


外で待っているとハガネが赤髪の少女を連れてきた。ただ、俺がさっきまで寝ていた部屋にいた少女とは別の少女のようだった。

雰囲気も背丈も赤い髪の鮮やかさもだいぶ違う。

頭が上手く働かない俺でも区別できるくらいには彼女は存在感が違った。


「見神というのはお主かの? こんばんわじゃ」

「…ぜーぜー。…ばん…わ」

「こらこら無理をするでない。とりあえず中に入って縁側まで案内するから手を握るのじゃ」


彼女は少し慌てたような声音でこちらへ手を差し出す。

手を握ると門が閉まった音がした。

ハガネが外に出たのだろう。

そう言えば何故か外には人の気配があった。

もしかしたら外に誰かを待たせていたのかもしれない。

少女に手を引かれて縁側まで辿り着き、俺はその場で崩れ落ちる。


「喉が乾いたかの? トマトジュースでもどうじゃ?」

「…水で良い」

「ぜーたくな。ま、よかろ」


少女は食堂へと向かっていった。

俺は自分が情けなくて、鬱空とした気分になる。

少しするとすぐに戻ってきた。


「ほれ、水じゃ」

「ああ…助かる」


水を少しずつ、むせないように飲み干す。


「…少しは落ち着いたかの?」

「ああ…」

「それは良かった。それじゃここで涼むと良い。我は…あー、ちと氷を作ってくるのでな」

「………」


返事をするのも怠くなり俺は身体を休めた。

縁側に冬風が身体中の熱を奪うように俺の横を通りすぎた。

(…俺はトリスタに迷惑ばかりかけているな)

いや、トリスタだけじゃない。ここにいる皆に迷惑を掛けている。

俺は…ここにいてもいいのだろうか…。

トリスタは親友だからこのくらい当然だって言ってるけど…迷惑なことには代わりない。


「こんなんじゃ…駄目だな俺は…」

「氷を持ってきたのじゃ♪」

「つめたっ!?」


首に冷たい何かが押し付けられ、俺は驚く。

振り返るといつの間にか少女がおり、悪戯めいた顔で小さな袋を顔の前で揺らして笑っていた。


「い、いたのか」

「ま、さっきの」

「…そうか」

「じゃよ」


少女から袋を受け取り頭に乗せて横になった。

彼女は何も言わず、そのまま俺の隣に腰を下ろして外を見ていた。


「……」

「……」

「聞いたか?」

「聞いたの」

「……聞かないのか?」

「聞いて欲しいのかの?」

「………」


彼女も俺もそこからはしばらく何も言わなかった。

いや、俺は言えなかった。

こんな醜いそれを外に出すのはさすがに躊躇われた。


「…悩み事かの?」


外を眺めたまま唐突に彼女は聞いてきた。

俺はその質問にどう答えたものかと少し悩んだが、少し晴れた気分に身を任せ、俺もまたぽつりと答えた。


「…そうだな」

「ハハハ、そうかの。まあ、悩むのは悪いことじゃないよのう?」

「……」

「じゃが、悩みすぎて暗くなるのは悪いことじゃのう」

「…悪いことか」


確かにそうかもしれない。

だが、そうじゃなかったとしたら?

それが俺は酷く嫌だった。

すぐそばにある問題をただ放置してそのままにするのは酷く気持ち悪くて取り除いてしまいたい。それが俺の本音でもあった。


がぶりと、何かを食べる咀嚼音が彼女から響く。


「そうじゃのぅ。悩むのは若者の特権ではあるのぅ。老いてから悩むのは腰がおもぉーて、やるにもやれんことばっかりじゃからのぅ」


その言い分には彼女にもまた自分と違う悩みを抱えているようにも思えた。誰もが大なり小なり悩む。

いつか見た本にそんなことが書いてあったことを思い出す。


「それに、ずっと悩み続けるのは疲れるじゃろう。いつまでもくよくよと悩んでおっても良いことなんてひとつもないぞ? 分かりやすく例えるなら悩みは毒じゃの」

「…毒」


彼女はそこでこちらへと振り向き、ニヤリと笑っていた。

何故か俺はその笑みに誰かのそれと似ていると感じていた。


「そうじゃ。お主はトリスタの大馬鹿者やハガネの根暗脳筋とは違って頭が良い馬鹿者みたいじゃからのぅ」

「…意味矛盾していないか?」

「そんな細かいことはどーでもいいんじゃ!」

「細かいって…」


この人も案外、他人のことを言えないのではと思う。

だがしかし、とんとその例えは皮肉のようにも思える。

確かに俺は自分のことを馬鹿だなとは思っていた。

トリスタは馬鹿だ。が、彼は俺よりも博識な部分があるのも俺は知っていた。

それを考えると何処かその例えには皮肉が利いていると思わざる負えなかった。


そんなことを俺が考えているとは露知らず彼女は「フフン」とどや顔をしながら俺に言い放った。


「まあ、聞け。この経験豊富な大・冒・険・者・様であるこのホルルト・ロートモ・ヒルリアーベン様の言葉をな!」

「……」


何となく俺はこの人のどや顔がトリスタっぽいなと思った。

何処とは言わないが何となく馬鹿っぽいところが。


「なんじゃその目は!? あっ、さては疑っておるな? そうなんじゃな? ぐぬぬぬぬ……!」

(ぐぬぬぬぬとか言っている人っているんだ)

「ふん! 最近の若者はどうやら我のこの身に溢れ出す経験値が分からんようじゃの!」

(経験値て…)

「思えばあやつらは随分と生意気な態度を取っておった。やれ、花火だ、やれサンタだ、やれバレンタイントマトじゃ……うらやまけしからん!」

(全部トリスタが原因のイベントじゃないかな…)


前半聞いた言葉にはトリスタから聞いたことがある。

だが最後は聞いたことがない。最後のはたしかバレンタインチョコではなかっただろうか。


そこでホルルトと名乗る少女がピキュイーン!と目を光らせたような気配がした。

何故だか俺はこの気配に見覚えがあった。

そうこれはトリスタが大体良からぬことを考えたときにする気配だ。


「さてはお主…バレンタイントマトを貰ったのか?貰ったのじゃな!?」

「いえ、貰ってないです」


間違ってはない。

俺が貰ったのはバレンタインチョコだから。

というかこの人は貰ったのだろうか。

逆にそこが気になった。


「なに…? 貰ってないじゃと? そうか…そうなのか…ならば今度は我が贈ろうかの!」


何故か嬉しげな表情と声音で興奮している彼女。

どうしてそんな表情になるのか俺には分からない。


「ん、我か? 我はトリスタとハガネから貰ったのじゃ! トリスタのは甘くて美味しいスイーツトマトパフェだったのじゃ! あれが格別に旨くてのぅ。ハガネはクッキーじゃったの!」


トリスタが料理が出来るのは知っていた。しかし、スイーツまで作れるとは知らなかった。

だが何より驚いたのはハガネだ。

あのザ・武人の彼がクッキーを作ったというのは衝撃だった。

ハガネは基本的に野菜を丸かじりするような豪快かつ大胆なものを食べているのを知っていたから余計に。


「ふふふ…ふむ?」

「……?」


ふと、彼女の表情が変わった。

トリスタが作ったというパフェを語っている頬をゆるゆると緩ませて笑っていた顔から少し優しく暖かい表情へと変化していた。


「さっきよりかはましな顔になったかの?」

「え…あ…」


気が付けば俺は彼女の豊富な感情に引っ張られていつもの調子を取り戻していた。

まさかこの人はこれを狙って話してくれていたのだろうか?

俺の考えを知ってか知らずか彼女は話を続ける。


「やれやれ…大人ぶっておると思えばやはりまだまだ子供じゃの?」

「……」

「ふむ……それでまだ迷惑とか考えておるのかの?」

「……!」


いつの間に彼女はそこまで気付いていたのだろうか。

俺はまだ一言だって話してなどいないというのに。


「そう驚かんでもいいわい。こちとら何百年生きておると思っておるのじゃ。このくらい空気で察してやれるわい」

「…そうですか」

「ふむ…随分とまぁ素直になったのぅ」

「……」


何となく恥ずかしくなって顔を反らす。

しかし、言われてみればそうなのかもしれない。

何百年生きていると彼女は言った。つまり彼女は俺よりも長く生きている。それだけ長く生きていれば俺のような奴も一人や二人は知っているのだろう。

やはり年長者の成せる思慮というやつなのだろうか。

不思議と彼女にはトリスタとは違った親しみと暖かさを感じた。


「ふふふ…。お主くらいの素直な奴は我は結構好きじゃぞ」

「……っ!」

「はは…()()い。そう照れなさんな。こっちまで当てられてしまうよ」


ちらりと盗み見れば笑ってはいるが頬に少し赤くなっていた。

俺はそれを見るとなんとなしに敵わないなと思った。


「……見神よ。よく聞くのじゃ」


ひとしきり笑った後、彼女はまた何処か優しげで柔らかな笑みを浮かべていた。


「迷惑なんてものは生きていればどうあがいても必ずするものじゃ。じゃからそんなことを考えて無駄に暗くなることはないのじゃ」

「……」

「お主の思っとることは分かる。じゃが、それでもじゃ。ただ暗いだけになっては駄目じゃ」

「はい」

「迷惑の一つや二つ掛けたくらいで嫌いになるような連中でもあるまい。そんなくだらんことで嫌いになる連中など『本物』の友達でも家族でもなんでもないただの他人じゃ」


確かにそうだ。

トリスタ達は俺がどれだけ迷惑を掛けていようと、呆れた顔や溜め息を吐くことはあっても、俺を嫌ったことはなかった。

それにちゃんと助けに来てくれていた。


「迷惑を掛けたなら掛けた分また頑張ればいい良い。そうじゃろ?」

「……はい」

「じゃあ、もう寝ると良い。お主の体調が悪ければあの大馬鹿者のことじゃ。またなにかくだらんことを仕出かすに違いない。はよ元気になって止めに行ってきてくれ」

「はい……ありがとうございます…」


どうしてか彼女の言葉に俺は嗚咽が止まらなかった。

数時間前に感じていた喉の苦しみとはまた理由が違うそれに俺は涙が自然と出ていた。

彼女はそれを察したのか、また外を見て何も言わず俺の頭を撫でた。


「……ふむ。縁側で寝ると流石に幼女の体とは言え老骨に響くのぅ。まぁ、お主がそこで寝たら我はお主を部屋に戻す作業までせにゃならんから今夜はとことん疲れてしまうなぁ?」


また悪戯な目でクスリと艶めいた笑みを浮かべた。

何が言いたいのか何となく分かった。

だがしかし、彼女の側は心地よかった。

ハガネのように背中を預けた時のような心地よさとはまた違う穏やかなもの。


「…もう少ししたら、戻るのでもう少しだけ」

「…そうかのぅ。ふむ、仕方ないのぅ。もう少しだけなんじゃからな?」


そう呟く彼女の笑みはどこまでも優しかった。

小説と向き合うのはなかなか大変ではありますが頑張っていきたいと思います

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