~別れは新たな出発への道~
体に衝撃を感じ、僕の意識は現実世界へと戻ってくる。
そうして目が覚めて初めて見たのは鬼だった。
2メートルは優に超える身長に太く逞しい腕、決定的なのは頭の上についた一本の角。
鑑定をしてみる。
オーガ lv48
hp9600 mp240
sp7200
atk1104 def480
int48 min96
dex96 agi240
ユニークスキル『闘気解放』
頭おかしくね?どんだけ偏ったステータスしてるんだよ。
というかオーガとか絶対強いだろ。なんで僕みたいなのがこう対峙するはめになってるんだよ。
「ふん。体も佇まいも実に軟弱。期待はずれも甚だしい。強い奴と闘えると聞いたからここにいるものを。奴め、俺を愚弄するか。このような奴虫けらと変わらん。」
なんかすごい物騒なこと言ってるなあ。あ、でも助けてくれたのはこの人?なのかな。
だったらお礼くらいしといた方がいいよね。
「あのーこのたびは」
「うるさい。騒ぐな、虫けらの分際で。」
殴られた。
僕の体が跳ねる。
2回、3回とバウンドして止まる。ここまでの攻撃をくらったのはふーこと最初に会ったとき以来かもしれない。
オーガはまだぶつぶつと何かを言っている。
って、そんなのはどうでもいいんだ!
今はふーこの事の方が大事。幸い、オーガは僕の方に興味無いみたいだし関わらなければ大丈夫、だと思う。
そこでさ、セカさん。
今回もまた都合よく解決策持ってたりしない?
毎度毎度のごとくさ。
〈いや~そんなさすがの私も今回ばかりは……〉
本当に?ほんとの本当に?
〈まあ、無いことは、無いです。〉
やっぱりね!
〈でも、マスター、今回ばかりは助けにはならないと思います……。〉
なんで?解決策があるんでしょ?
〈というのもですね。マスターとふーこ様は現在『魂の軌跡』による一時的な繋がりがありまして、これを永続化する方法ならあります。
ただ、その方法は今までの「接続」から「融合」となるのでどちらにせよふーこ様の意識は消滅してしまいます。〉
なんだよ、それ。意味なんてないじゃないか。
〈もともと、『魂の軌跡』というスキルは他の魂を喰らうことが前提のスキルです。「融合」によって「接続」できる魂の数を増やしていく・・・そうして自身を強化するというスキルです。「融合」はお互いの同意が必要となりますが。〉
それじゃあ意味がないんだよ!
ふーこは皆で一緒にいたいって、消えたくないって言っているんだ!
せっかくのチートなんだからこれくらいの我が儘通して見せろよ・・・!
〈ショータ・・・。いいんだよ。無理してわたしなんかの我が儘叶えなくても。〉
違うよ。これは僕の、僕自身の我が儘だ。
絶対に幸せな未来をつかんでみせる。そのためには、なんだって使ってやる。
そうして、僕は一枚の紙を取り出す。
〈マスター、使うんですか?〉
ああ、今使わないでいつ使う。まさしくうってつけのものだろう・・・!
「質問だ。ヘルプさん。
僕のこの思い・・・。
いや、僕と、ふーこと、雪とセカさんと他の皆全員の『心』を満たすことのできるような、そんな未来はあるのか・・・?」
普段、ヘルプさんはまともに解答を返してくれなかった。それは知識の与えすぎが良くないものだから、なのだろう。
でも、僕は知っている。
ヘルプさんには感情がある。
あのとき、セカさんがなにかを得てしまったとき、あんなに焦ってたのは嘘じゃないはずだ。
だったら、少しでもこの悲劇を止めたいと思ってくれるなら、この想いに共感してくれるなら・・・
きっと、ちゃんとした回答を教えてくれる。
僕はそう思った。
・・・・・・・ピコン
前よりも反応までが遅かったような気がする。
まさか、「やっべ、見るの忘れてたわー」みたいな理由じゃないはず。
・・・ないよな?
そうして僕は紙に目を落とす。
そこにあったのは無慈悲な現実。
「ありません。」
と一言だけ書かれていた。
目の前が真っ暗になった気がした。
もはや、神様でもどうしようもないらしい。
全身から力が抜けて思わず仰向けになった。
というか、今の今まで気付かなかったけど、これふーこのお墓を作った花畑じゃないか。
なんたる偶然なのか。
〈もういいよ、ショータ。わたしは幸せ者だから。こんなに愛してもらったんだもん。
だからさ、泣かないでよ。
わたしはもうおしゃべりしたり散歩したりできなくなっちゃうけど、ずっとショータの中にいるから。
ショータの中でずっと応援してるからさ。
そんな顔してちゃ駄目だよ。笑って。お願い。その方がわたしも嬉しいから。〉
ふーこ。ありがとう。でも、ごめん。そのお願いはちょっと聞けそうにないよ・・・。
〈マスター、待って下さい!まだ、続きがありますよ!〉
え?
さっき見たときはそんなものなかったよ?
そうして見てみると裏に細かく文字が書かれていた。
前半はギリギリ読める範囲だけど、後半は全く読めないよ?
「一応付け足しておきます。
『心』の力は神ですら理解しきれません。
だからユニークスキルであれば解決できるかもしれません。
もし、この場にユニークスキルの種を持っていて、かつ、この状況に涙してくれるならひょっとしたら未来も生み出せるかもしれません。
以下はホントは少しだめなんだけど、サービス。
**************(以下略)」
どうゆうこと?
ユニークスキルの種って。
ああそうか。ユニークスキルを得たとしてもすぐに発現する訳じゃないのか。その準備期間にある人に協力してもらえってこと?
でも、もう知り合いで持ってそうなの全員もう、持ってたよな・・・。
というか、セカさんこの最後のなにか分かる?
〈はい。解析は終わっています。結界魔法の一部の式ですね。おそらくは魂を現世にとどめるための壁を作る魔法でしょうか。〉
それで保護するんじゃだめなの?
〈無理ですね。mpが持ちません。最大限効率を良くして十秒維持できるかってところです。〉
どうしろってんだよ・・・。
〈あともう一つ、マイナススキルというものについての説明ですね。スキルレベルは0を下回ることがあり、そうすることによって、なんらかの悪影響を与えることがあるそうです。レベルが上がらないとか、癒やしではなく破壊を生んだりとか、ステータスを下げたりとか。経験値によってレベルを上げればマイナスはプラスに転じるそうです。
こういったスキルには成長すると強いものも多く含まれているそうなのでそのための我慢の期間ということだそうです。〉
どうして、こんな情報を付け足したんだ?結界魔法の方は分からなくもないが・・・
レベルが上がらない、ステータスが低い、それってもしかしてーーー
「おい、そこの虫けら。何をぶつぶつと言っている。目障りだ。さっさと失せろ。」
「ああ、そりゃあすみませんね。」
お前の攻撃のせいで動けないんだよ!と心の中てわ悪態をつきつつ、この場から離れようとする。
「ああ、さっさとこの世からいなくなれ。」
そうして僕の頭の大きさくらいある拳が僕へと迫ってくる。
あ、これは無理だ、と体が勝手に判断した。
でも、次の瞬間目に入ったのは光りを纏ったバルトがオーガを突き飛ばしているところだった。




