~激闘開始~
西側です。
シルバーウルフvsハイオーク!
ここは西の森、南との境界から少したったところ。
シルバーウルフとハイオークが対峙している。
ハイオークが西の森に侵入してからまだ30分程度のためまだそこまでの被害は出ていない。
まだ、であるのがシルバーウルフにとって辛いところではあるのだが。
すでに百は屠ったシルバーウルフであるがその周りには生きたオークはすでにいない。
残りの千近い数のオークはそのすきにシルバーウルフを回避しすでに奥へと進んでいる。
本来ならばそちらの殲滅に向かわなければならないのだが、それを制止しているのがハイオークなのだ。
「それにしてもゴブリンに続きオークとは。いくらなんでも杜撰過ぎる。クレアは何をしているんだ?よもやクレア自身が裏切ったわけではあるまいな。」
「ぶひひ、それに答える義理はないんだな。それよりあんたおでには攻撃を加えなくていいんだな?」
ハイオークの言う通り、現在はお互いにらみ合っている状況が続いている。
当然、ハイオークの目的は足止めのため攻める必要が無いのだが、シルバーウルフが攻めないのには理由がある。
「愚問だな。お主のように変なオーラを纏っている者に自ら近づくなど愚の骨頂。現にお主の周りの木々は駄目になっていっている。なんのスキルかは知らんが触れたものを腐食させるスキルか?」
そう、シルバーウルフは警戒しているのだ。そしておそらく誘っている態度からして目的が自分なのは明らか。
であればシルバーウルフに仕掛ける必要などない。
「賢いな。ぶひひ、だが、こうしている間にもおでの配下はお前の土地を蹂躙しているんだな。お前はおでにばっかりかまけているわけにもいかないんだな。ぶひひ。」
「それこそ心配いらんよ。たかが千で落とせるほど甘くはない。こちらの戦えるものは千程度ではすまぬぞ?たかがオークごときには無理だろう。
それにお主という司令塔を失った群れなど怖くはない。お主こそ早く群れに合流したいのではないか?」
これも正しい。もともと、よっぽどの戦闘能力差でも無い限り数で劣っていて、かつ、敵地に攻め込み勝つことはできない。
オークなら戦闘能力も高くはなく、心配するほどではない。
ゆえに、脅威になりそうなものの排除がシルバーウルフにとってのベストではある。
・・・本当に千ならば、だ。
「ぶひひ、千だと?ぶひひひひひっ。そんな少ない訳がないんだな!仮にも四天王一匹を丸ごと相手とるんだ。
さっき通った第一部隊の役割は攪乱とこうしてお前を釣るための餌みたいなもんなんだな!ぶひひ、後ろの本体はその十倍はいるがな。
すでにここを迂回して攻めている途中なんだな!」
「なに?冗談を言うな!どうしてたかがハイオークにそこまでの数が率いれる!キングならばともかく、貴様程度では不可能だ!」
「ぶひひ、それには色々とあるんだな。それに協力者もいるんだな。」
実際はそこまでの数はいない。不自然にならないようもう三千程度は用意していたが。
ハイオーク自身の見立てではこれでは負け戦である。
これはオークという種族上しかたないこととも言える。オークはほとんど知能を持たない魔物だ。その行動原理は本能そのままであり、協調などできるわけがない。
ハイオーク自身もそれを分かっており、ただ「好きにしろ」と言ってこの土地を襲うよう誘導しているだけなのだ。
本能的に勝てないというような敵がいなければほとんど突っ込んでゆくだけの戦いとも言えない稚拙な戦法。数に任せた戦い方は種族に適しているようにも思えるが数が同じになった途端にただの雑魚と化す。
そしてハイオークはこの土地にいる戦力をだいたいだが知っている。数で押すような戦法は使えないと知っている。
だから、早く目の前にいるシルバーウルフをどうにかして合流する必要がある。
だが、この状況になればシルバーウルフは動かないだろうということは予想できた。ゆえにハイオークは策を凝らす。
さすがに万のオークともなれば無視することはできない。シルバーウルフは無理にでも攻めなければならない。
ーーーそうすれば、おでの「マイナス」によってこちらが有利になるーーーそう、ハイオークは考える。
「マイナス」ーーーそれはオーラに触れた者の強さを9/10にするというもの。
例えそれが力があろうと、頑丈であろうと、知恵があろうと、落ち着いていようと、器用であろうと、速かろうと。
一切合切を切り捨てる。
まさしく、弱いものへのユニークスキル
これはハイオークの劣等感の押し付け。
オークに生まれながら知恵を持ち、その環境に、仲間に、そして自分自身に絶望した者の感情の現れ。
このスキルの恐ろしいところは触れるたびに発動するということ。
一度解除してしまえば元に戻るが、発動している間はどんどんと蓄積していく。
ただし、その範囲は極めて狭い。せいぜいが腕の届く範囲にしか巡らせられない。
そして必要なコストもバカにならない。
mpを毎分200と支払わなければならない。
今のハイオークでは6分しか展開できない。
だから、ハイオークはシルバーウルフを誘う。睨み合いのせいで残り時間は5分をすでに切っている。
この5分が正念場だ。
一方のシルバーウルフも攻めなくてはならない、となっている。
もし、万を超える大群がいるのであればこんなところでぐずっている場合ではない。
誘っているのは明白だが、実際に探ってみると別働隊がいるのも事実。
無理して攻めてこない、という姿勢もその推測を裏付けしてくる。
問題はやはりあのオーラだ、とシルバーウルフは考える。
このような手合いはシルバーウルフにとって未知のものではない。そして、そういったものは自分を強化するか、触れたものに対して反撃するスキルであった。
この場合、そのどちらにも当てはまらない。おそらくはユニークスキル、触れた瞬間に何が起こるかは分からない。
ただ、周りをみる限り、即死することはなさそうだーーーそう判断してシルバーウルフは攻めにでる。
この後を考えるとユニークスキルは使えないが、自身の持てる最大火力を持って目の前のハイオークへと叩き込む。
爪撃Ⅱに加えて魔術「水爪」
爪に水を纏い、攻撃力を上乗せする。
このとき、シルバーウルフの攻撃力は1100を越す。
その脚力をもって踏み込み、両の爪をハイオークへとふるう。
しかし、一撃目はハイオークの盾に防がれ、二撃目はハイオークの前に出現した透明な壁によって防がれる。
「堅い、な。防御特化型か?守っているだけではかてないぞ?」
ハイオークは何も言わない。ただ、シルバーウルフの攻撃を受けるだけ。当然こちらもスキルを使っている。「ガード」「盾補正」「攻撃緩和」「攻撃吸収」「バリア」実に五つのスキルを同時に使い、防御力の底上げを図っている。
それでも、本来ならspが減るため長くはもたない上にそれでもダメージは通っているのだ。
シルバーウルフの言うことはもっともではあった。
シルバーウルフが違和感に気づいたのはすぐだった。
「なんだ・・・?体が重い?」
しかし、時すでに遅く、その能力は半分程度までへと落ちていた。
長時間触れることに気をつけていたシルバーウルフは能力値の低下が触れるたびに起こっているとは気づけなかった。
むしろ、ヒットアンドアウェイの形は触れる回数を増やし、能力値の低下を早めるだけであった。
とはいえ、もともとの差は大きく、これでようやく同じくらいのステータス。
だが、確実にシルバーウルフの優位は失われていた。
「ぶひひ、どうしたんだな?早く攻めなくていいんだな?」
ここにきてシルバーウルフは己の失態を悟る。
今の状態では逃げ切ることすらできない。だが、このまま続けても、勝ち目はない。
ーーー切り札を切るか?
ここにきてもまだ余力があるのはさすがだが、それを使うということはこの後の戦いを放棄するとこに他ならない。
シルバーウルフはあと一歩のところを踏み切れない。
そして、ハイオークはユニークスキルを使われるわけにはいかない、と思っていた。当然だ。
現状でもギリギリ互角、守りに入ってようやく勝ち目がある、といったレベルなのだ。
とはいえ、「マイナス」も残り2分と少し。
これが切れてしまえば能力値の減少は元に戻る。
ユニークスキルを使われて延びてしまえばそのうちに時間切れだ。
そうならないうちに相手にダメージを与えておかなければ、そうハイオークは考える。
このまま普通に戦っていたとしたらどうなっていたのかは分からない。シルバーウルフが「限界突破」を使う隙もないままハイオークが勝利することもあったのかもしれない。
しかし、そこでナニカが起こった。
島の中央から光が島全体へと広がる。
それが収まったあと、シルバーウルフの能力値は1.5倍になっていた。
それだけでも破格のパワーアップではあるが、それだけでは終わらない。
その恩恵を受け取らなかったハイオークは理解していなかったがこのバフは島にいる反乱側以外の全ての生命体へと及んでいた。
そして、シルバーウルフはそれを理解した。
ゆえに、シルバーウルフは切り札を使う決断をする。
「ふむ、これなら我がいなくともなんとかなりそうだ。」
そう呟くと「限界突破」が発動した。
先ほどの光など比べものにならないほどの輝く光。
その効果は全能力値の強化。シンプルに強い。しかし、この能力の特筆するべき点は時間経過にともないその強化度が上昇していくことだ。
使用直後ですでに2倍。そこから30秒が経過するごとに倍、倍となっていく。
当然、反動も時間経過によって強くなっていくが。
何者かからのバフによってすでに最初の状態の能力値を越えている。
すでにハイオークの防御は追いついていない。
一撃目で腹を抉られ、二撃目で腕を切りとばされた。
もう、「マイナス」すら維持できず、強化された攻撃がさらに強くなる。
30秒経たず、ハイオークは瀕死となった。
「限界突破」を解除し、反動でふらつきながらもシルバーウルフは語る。
「ふん、我のこのスキルもお主と同じ劣等感の現れか。ただ違うところはそれから逃げるか向き合うか、
だ。
壁は乗り越えねば意味がない。逃げていれば決して状況は良くならない。そこを分かっていなかったようだな。」
そう言ってシルバーウルフはハイオークへととどめをさした。
「しかし、30秒でここまでの反動が生じるか。これでは加勢などできそうにないな。やれやれ、まあ、あいつらなら大丈夫だろう。」
そう言いつつも、シルバーウルフは戦場であろう場所まで歩く。
そこには誇りをもった、一匹の狼がいた。
次回は北へと移ります。
三人称、できてますでしょうか?




