~遭遇、逃亡、そして・・・~
「だが断る!」
なんでわざわざ戦わなきゃいけないんだよ。
めんどくさい。
そんな獣みたいな理屈は求めてないです。
〈まんま獣ですけどね。〉
〈だいたいこんな感じでしたよ?〉
ちょっと脳筋なうさぎさんは黙ってて。
普通じゃね?みたいなこと言わないで。
「ふざけんな!」
このふーこと昔の知り合いだったと言う狼・・・長いからバトルジャンキー二号略してバルトと呼ぼう。
そのバルトが飛びかかってくる。僕は全力で飛び退くと、その頭に向かって思いっきり蹴りを入れてやった。
〈あっ・・・〉
「やれやれ実力差も分からないの?僕にその気があったら今ので死んでたよ?」
嘘です。完全なるはったりです。たぶんバルトが受けたダメージより僕の受けたダメージの方が大きいもん。
ぶっちゃけ、耐久力以上の力を出したせいで僕の足は限界だよ。筋肉が切れたみたいな痛みとバルトにぶつけた部分から血が流れ出してる。今は気休め程度の回復魔法をかけてるところだ。
ちなみにこいつのステータスはこんな感じ。
ウルフ lv40
hp2800 mp800
sp3200
atk380 def240
int160 min160
dex160 agi260
少なくとも限界値の230は越えなきゃいけなかった。もう一度やられると反応すらできん。
〈完全にわたしの時と同じですねー。格下だと思って油断して、一発もらって負けてます。クスクス。〉
まあ、普段はステータスall10だからなぁ。そりゃあ油断もするだろう。
「くっ、さすがはあいつに勝っただけのことはあるな・・・。あいつみたいな蹴りだった・・・。」
「あいつってふーこのことか?ふーこはもっと強かったぞ?」
「なに!!さすがは俺のライバルだな。俺も力をつけたと思ったがまだまだだったようだ。もっと修行せねば・・・。」
「ところで我が娘よ。お主『俺に1対1で勝ったら嫁になってやる!』とかなんとか言っておらんかったか?未だにそんな話がなくて父としては心配なのだぞ?」
「・・・。」
〈えっ、あの子あのときの冗談をそのまま言ってたの?〉
何か知ってるの?というかお前が原因?
〈いや、違いますよ?たぶん。
前にいい加減嫁げって言われてるっていう話をしてたときにだったらなにか条件をつければ?って言いまして、そしたら『俺に1対1で勝った奴にする!』って言いだしたんです。うん、わたしは悪くないですね。ちなみにそのときの戦いはわたしの勝ちだったんですよ♪〉
おかしいな。色々とつっこむところがある気がする。
ところでさ、バルトって雌?
〈雌です。〉
〈雌です。〉
ひょっとして・・・またやらかした?
〈まあ、まだ呼んでもないですし、そこまで嫌な名前でもないとは思いますから、好きにすればいいのでは?〉
〈格好いいの好きでしたから案外OKかもですよ?〉
「やっぱ待って!もう一年近く前のことだし!あの話は無しで!」
「ならば、帰ったら早速だれかみつけないとのう。このようなじゃじゃ馬だが、人気はあるしすぐに貰い手などみつかるじゃろ。」
「えっ。」
なんか複雑なことになってるなぁ。
おや、バルトが近づいてきた。
「非常に気にくわないが、前言ったことを無かったことにするのは俺の信条に反するからな!しかたないよな!」
これは・・・こいつ僕を生け贄に捧げる気か。
「(おい、あんなこと言ったがあくまでも振りだからな。お前はあいつの夫なんだろ?だったら協力してくれよ。)」
どうしたもんか。
〈バルトの言う通りにしてあげてくれませんか?ちょっと可哀想ですし。〉
やれやれ、ふーこが言うんじゃ仕方ない。
「別に良いけど。(そのかわり余計なことに巻き込むなよ。)」
「本当か!やった!(だいじょぶ、だいじょぶ。そこにいるだけでいいから。)」
ちなみに()の中の会話は聞こえないように小声になってる。
「ふむ、お主が娘とのう。」
あっ、親父さんのチェックが入るのか。
「まあ、娘に勝てるくらいなら大丈夫だろう。とりあえず、里の方に移動するぞ。お主には色々と詳しく聞きたいこともあるしの。」
あれ?なんかあっさりしてる。
移動中
「そういえばさ、お前は名前ってある?ないならつけたいんだけど。」
「?普通は名前なんてつけないぞ?あんなめんどくさいもの持ってるのは人間とユニークモンスターくらいだろ。」
「ユニークモンスターは名前を持ってるの?」
「そうだぜ。なんでも生まれたときに神様から与えられるらしい。あっちの管轄をしてるクレア様もユニークモンスターだろ?だから名前持ってるんだ。」
「ないと不便じゃない?」
「んー、お前とかこいつとかでなんとかなるからなぁ。なんだってわざわざめんどくさいもの考えなきゃいけないんだ。」
「だったら僕がつけていい?『バルト』って名前なんだけど。」
「バルト、ねぇ。なんかかっこいいな!そういえばあいつにも『ふーこ』って名付けたんだろ?人間は変わってんなー。」
「そうか?あった方が便利だぞ?それとこの子が『雪』だからな。僕じゃなくてふーこがつけたんだけど。」
「そっかー、あいつの娘かー。可愛いな。俺にも抱っこさせろよ。」
「さすがにちょっとな。第一どうやって脱稿するんだ?」
「こう、口に加える感じ?」
「アウトだから!絶対やらないでね!なっ、雪。お前も怖いよな。」
「ん~狼さん~?おかーさんが~案外いいやつだったって~言ってたの~。」
「ふーこ!ありがと!そして可愛い!なにこれめっちゃナデナデしたい!」
「雪は触らせんからな!僕だけのものだ!」
「ずるい!
ところでさ、なんでそんなピョンピョンしてんの?
人間・・・なんだよね?」
「気にするな。結局これが一番速かったんだ。」
「お主等ずいぶん打ち解けたのう。さてもうそろそろだぞ。」
こんな会話をしつつウルフの里へと向かった。
できればふーこの故郷も見に行きたいな、なんて思いつつのんびりする気まんまんだった。
このとき僕達が破滅への引き金を引いたというのも理解せず。
~???side~
どこかの洞窟の中。昼でも薄暗く、そこにいるものの影しか見えない。
今一際大きい影と小さな影がなにかを話している。
「慌てることはありません。所詮はゴブリン。いくらでも変えはきくでしょう。」
「ふざけるな!500も戦力を失ったのだぞ!」
「しかし、やつは新四天王の中でも最弱。むしろ、ゴブリン風情が四天王の中にいることがおかしかったのです。」
「あそこまでたどり着くのに何年を要したと思っているのだ!」
「そんなことより大事なことがあるでしょう?」
「!・・・たしかに、ただのラビ風情がゴブリンキングを倒すとは。それがユニークスキルの力ということか。」
「そうだ。死体は見つかっていないのでしょう?ならばどこかで生きているはずです。」
「くそっ。こちらの陣営にはもとから一匹もいないからな。」
「それも本来、あなたが得ていれば問題はなかった。あなたの力不足が原因ですな。」
「ちっ。とはいえまだ獲得してから一週間程度。上手く使いこなすことはできていない。・・・今のうちに攻め込むぞ。」
「時期尚早ではないかな?」
「あちらにはユニークスキル持ちが6、こちらには0、時間がたってユニークを十全に使われれば簡単に戦力差は覆される。ならば今のうちに叩くのが吉だろう。そもそも、あっちは私レベルの化け物が三匹だ。数で押すしかないぞ。」
「それもそうですな。では配下に声をかけてきます。」
「ああ、さっさと準備しろと伝えておけ。」
大きな体をした何者かが去ったあともう一つの小さな影のもとに4つの影が集まる。
「ああ!何も分かっていない!ユニークスキルを与えられてすらいない!
ふふ、実に滑稽。ただ、あの力は使い道がある。理想はやつとつぶし合ってくれることだが・・・。いや高望みはすまい。あの小娘ではせいぜいが傷をつけられるかといったところだろう。」
「あら?ずいぶんご機嫌ね。もう勝ったつもり?」
「くくく、そうではないよ。ただ、事前の情報に差がある。あちらはユニークスキルを持っている全員を把握していると思っている。こちらはそんなことはないと分かっている。そもそもあの場に出かけてないやつなど本来はおらんからな。」
「がはははっ、俺は強い奴と戦えればいいさ!そんなこと考えるだけ無駄だぞ?最終的に勝つのは俺だからな。」
「あら?ずいぶん自信たっぷりね。」
「この中で一番強いのは俺だからな!」
「ぶひー、聞き捨てならない。強いのは俺。」
「ああん?やんのかてめえ!」
「ちょっと!今喧嘩しないでよ!ほら、あなたも黙ってないでなんか言ってよ!」
「キシシシ。俺は、王には、興味ない。勝手に、やってくれ。」
「ちょっと!」
「はいはい!皆さん少し静かに!もともとの地力では勝てるか危ないんですからね?王を決めるのは全てが終わった後ですから。それまでは皆さんは仲間ですよ?では、とりあえず、皆さんの部下に出撃準備をさせておいてください。期が熟すとき、一気に攻め込みますからね?」




