表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
96/100

-96- 馬鹿馬鹿しい雑件

 鳥旨とりうま署の刑事、符来度ふらいどは、非番の朝、天気がよいということもあり例年のように神社でお参りを済ませた。というのも、年末年始は刑事にとっては繁忙はんぼうで、いろいろ種々雑多な事件が起こるからだ。

 鳥旨署の近くまでもどったとき、符来度は、妙な身なりの男が道をふさ)いでいるのに気づき、おやっ? と首をかしげ、車を止めた。署は目と鼻の先だから、さすがに通行妨害ではないだろう…と思いながら符来度は男に近づいた。男はどこかで見たことがある浮浪者風だったが、どうしても思い出せなかった。

「あの…ちょっと、ここは通行の妨害ぼうがいになるんですよ。がわへ寄ってもらえませんかね。私、そこの署で刑事をしております符来度と申します」

 符来度は威張いばるでなく軽く頭を下げ、警察手帳を見せた。そのとき、符来度は、ふとその男が何者なのかを思い出した。20年ばかり前、建設会社で羽振りのいい暮らしをし、美人秘書と結婚した親類の親類になる親類筋の男だった。遠い昔の当時は縁が深かったこともあり、付き合いも頻繁ひんばんにしていたから、符来度はよく知っていた。

「なんだ! 負知まけともさんじゃないですか? どうしたんです、こんなとこで? まあ、ここは危ないから、側へ寄りましょ」

 その男は側へより符来度の顔を見た途端、胸にすがりつき号泣ごうきゅうしだした。号泣されるのはいいが、少し悪臭が鼻につき、服も泥だらけの浮浪者風だったから、符来度はすぐ男を離した。

「ぅぅぅ…聞いてくれるか? 油衣ゆいちゃん!」

「ど、どうしたんです、負知さん!?」

「会社がつぶれて、秘書に捨てられたぁ~~!!」

「…」

 符来度はサスペンスでもなんでもないじゃないかっ! と馬鹿馬鹿しくなってきた。


               完

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ