表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
95/100

-95- 夢逮捕

 非番の刑事、旅出たびでは日頃の疲れからか、和室に横たわりながらウトウト・・としていた。けていたテレビのニュースが何やら話しているのが聞こえる。旅出はその声を朦朧もうろうとする意識の中で聞いていた。

『犯人は車のハンドルをうばって逃走。現在、○△高速道は大渋滞となっています。現場から猪髭いのひげがお伝えしましたっ!』

 ああ、そうなんだ…と、聞こえる声に興味が湧き、旅出は薄目を開けた。テレビ画面には大渋滞する車列をヘリコプターから俯瞰ふかんして撮る映像が映し出されていた。旅出は、人騒がせで妙な犯人だな…と瞬間、思った。フツウ~は車同士の激突事故とかのニュースのはずで、こんな逃走事件でも現金の略奪りゃくだつとかが相場なのだ。ハンドル? そんなもん、どうすんだ? …と、旅出は和室のたたみから半身を起こしながら腕組みし、首をかしげた。画面はCMに移行しており、あわててリモコンを手にすると、旅出は国営テレビにチャンネルを切りかえた。さすがにCMはなく、現場の様子が臨時ニュースで実況されていた。しばらく観たあと、旅出は、こんな迷惑な野郎は早くつかまえんとな…と思いながらテレビを消し、また眠りについた。

 旅出は夢うつつの世界にいた。犯人が高速道を逃げていた。

『待てぇ~! ハンドルを返せぇ~~!』

 旅出はわめきながら犯人を追っていた。夢の中だからか、息切れはせず走ることが出来た。そしてついに旅出は犯人に追いつき、手錠ワッパをかけた。

『こんなもん、どうすんだっ?!』

 犯人が持つハンドルを取り上げ、旅出はたずねた。

『へへへ…格好よかったもんで、つい…』

 顔は幻想のためかボヤけていたが、犯人は薄笑いを浮かべながら、悪びれもせずそう言った。

『やかましいわっ!!』

 そう叫んだとき、旅出はハッ! と目覚めた。畳から立ち上がりながら、夢か…と旅出は思った。小腹がいていることに気づき、旅出はカップ麺でも食べるか…とキッチンへ行った。食べながらキッチンのテレビを点けると、先ほどの高速道のニュースが続いていた。

『犯人は先ほど、偶然、付近に居合わせた刑事により逮捕された見込みですっ! 現場から角鹿つのじかがお伝えしましたっ!』

 画面を見た旅出は一瞬、おやっ? と思った。テレビ画面にはハンドルを握り犯人を連行する自分が映し出されていた。んっな馬鹿なっ、俺はここにいる! これじゃ、サスペンス以上のオカルトじゃないかっ! …と旅出はゾッとしてテレビを消した。


               完

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ