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-94- 味捜査

 風雲、急を告げる鰻川うながわ署の捜査会議が刑事課署員、約40名を一同に会し、行われていた。

「いや、代替だいがえ品の売り出しは、明らかに我が鰻川署管轄の鰻業者の名誉を傷つけておると考えます。ここは、味がいい点を前面に打ち立て、一歩も引かず、名誉毀損の線で捜査すべきです!」

 椅子から立ち上がり声を大きくしたのは警部補の炭火すみびである。彼は、最近になりナマズを高価な鰻の代替品として売り出そうとしている業者に対し、見て見ないふりをする鯰署に闘争心をふくらませていた。

「炭火君、君の言わんとするところはよく分かった。心に留めておこう」

 なだめるように口を開いたのは、捜査本部長の団扇うちわ警視だ。ごく最近の人事異動で警部から警視に昇格して鰻川署に赴任しただけに、至ってご満悦まんえつで、少しえらぶった口調で炭火に言った。 

「ちょっと待ってください! 炭火さんのお考えは、いささか違うのではと考えます。自由経済の我が国で、商品開発を発起するのは明らかに違法ではないはずです。むしろ我が署管轄の鰻業者が、鯰業者に対する対抗策を立てるべきではないでしょうかっ!」

 炭火の発言に反論したのは、同じ警部補として炭火にライバル心を抱くたれだった。

「まあまあ、垂君」

 本部長の団扇は、荒げられては困るよ・・といった感じで垂を宥めた。

「そうだよ、二人とも。ここは、しばらく二業者と鯰署の出方を待とうじゃないか」

 デカ長の串焼くしやきが年功の重みを見せて言った。串焼の言葉に二人はうなずいて椅子へ座った。他の捜査員達から、俺は甘味がいい…とか、いや、辛い味だ…、醤油の濃い目味がいい…とかの個人的な好みの囁き声がした。捜査本部の鰻と鯰の味捜査は今後も引き続いていくことになった。


               完

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