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-92- 要領を得ない捜査

 棚引たなびき署の刑事、雲絶くもだえは刑事課長、月影つきかげの命を受け、食い逃げ逃亡犯、上乃句かみのくを追っていた。課長みずから、こんな些細ささいなことで課員に捜査を命ずるのはよくよくのことだった。というのも、月影は大衆食堂ヘ入ったとき、あとから入ってきた上乃句に注文の先を越され、腹を立てたのだった。その上乃句が、こともあろうに金を払わず逃亡したのだ。店主は、待てぇ~~!! と大声で追いかけたが、あとの祭りで逃げられてしまった。さあ、そこに居合わせた月影としては刑事課長のプライドが許さない。黙っていれば、その場にいた客も店主も気づかなかったものを、「私は棚引署の刑事課長をしております月影と申します…。逃げ去った者は必ず逮捕しますっ!」と名刺を渡しながら力んで言ったものだから、さあ大変! 話はとんでもないことになってしまった。店主は、まあ、いいか…とあきらめかけていた矢先だったが、名刺を渡され大上段に言われては退くに引けなくなってしまったのである。

「ああ、頼みます…」

「では、あとから本署の方へ被害届を…」

 そう言って格好よく店を出た月影だったが、よくよく考えれば昼はまだ食べておらず、腹はすっかり減っていた・・と、話はこうなる。

「いい、秋風が吹いているなぁ…」

 雲絶がそうつぶやきながら通りを歩いていると、偶然、防犯カメラに映っていた食い逃げ常習犯、上乃句によく似た後ろ姿の男が見えた。

「待てっ! 上乃句!」

「はい? なにか…?」

 男は立ち止まって、振り返った。男はよく似ていたが、上乃句ではなかった。要領を得ない捜査は続くことになった。


               完

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