-87- 新町交番・捕物控[後編]
え~~前編に引き続きまして、お付き合いのほどをお願い申し上げます。
さて、新町交番では巡査の棚下と江戸の十手持ち、牡丹餅の串八によります口論が続いております。その様子を窺うひとつの黒い影。さて、この黒い影こそが時空荒らし盗賊として未来警察の指名手配を受けております怪盗ルパンならぬ解凍ゴハンでございます。なんと申しましてもこの解凍ゴハン、警察専門に過去、未来と茶々を淹れては喜んでおるといった小悪党でございまして、これといった実害ある悪さをする訳でもございません。そんな神出鬼没の小悪党でございますから、未来警察でも手を焼いておった・・というようなことでございました。
「じゃあ、訊かせてもらおうじゃねえかっ! いってぇ、お前さんのお上ってぇ~のは、どちらさんでぇ!」
「お上? お上は…」
訊かれた巡査の棚下は一瞬、口籠もります。と申しますのも、はて? 警察署の上は? と、ふと思えたからでございます。
「お上は…お上は警視庁だよ、警視庁! あんたこそ、どちらさんだっ!」
「こちとらけぇ~。聞いて驚くなっ! 天下を束ねなさる将軍様よっ!」
串八も息巻きます。外を歩く通行人からはガラス戸越しに警官姿の棚下と丁髷に御用聞き姿の串八が言い争っているんでございますから妙な具合だ? としか映っておりません。ただ、二人の声までは届きませんから、それはそれで劇団の方かなんかだろう…と人だかりになるといったことまでにはならなかったのでございます。
「こっちは忙しいんだっ! 暇なアンタに付き合ってなんかいられねえんだよっ!」
切れた棚下は、ついに引導を串八に渡します。すると不思議なことに、その言葉が終わった途端、串八の姿は跡形もなく交番から消え去ったのでございます。
「フフフ…これ以上は危険だな」
串八が消え去ったのを見届けたあと、解凍ゴハンも捨て台詞を残し、消え去ったのでございました。格好よくはございますけれども、実はこの解凍ゴハン、お腹が空いていた・・という、ただそれだけのことでございました。
サスペンス味には至りませず申し訳なきこのお話の続きは、続編として孰れまた、お出会いできました折りにでも語りとう存じます。
完