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-61- 残された形跡

 これこそがサスペンスであるっ! …とは、やはり言いがたい事件? 含みの展開が、ここ貝巻かいまき中央署で起きていた。

「いや! 残された形跡からすれば、当事件の行方不明者を連れ去った犯人は明らかに中年男ですっ!」

 新任の刑事、御門みかどは鼻炎の鼻水をグスグスとすすりながら言った。

「犯人が連れ去ったかどうかも分からんじゃないかっ! 君はどうして、そうだと言い切れるんだっ? 失踪しっそうとも考えられるっ!」

 御門をたしなめたのは、毛髪がすっかりわびしくなった古参刑事の水濠みずぼりだった。

「状況からして、だいたいこの手の事件は中年男としたものですっ!」

「君はさっきから事件、事件と事件にしたがってるが、事件かどうかも分からんじゃないかっ! ひょっこり帰ってくることだってあり得るだろうがっ」

 水濠は、また窘めた。これで五度目だった。

「はあ、それはまあ…」

 五度も窘められ、御門はさすがにえた。

「科捜研からの報告があったように、現場げんじょうに残された形跡によれば、科学捜査の枠を超える初めての特殊事例である。地球には到底、存在し得ない物質が数片、発見されている事実は、水濠君の言ったように我々、人間の行いとは考えられず、事件とし難い事例かも知れん…」

 ド近眼のガラス瓶の底のようなレンズ眼鏡をかけた捜査一課長の田桜たざくらが、ブツブツと小声で言った。暗に異星人により連れ去られた失踪をにおわせたのである。

 翌朝、一件は簡単に解決を見た。行方不明者はどこにいたのかの記憶をなくし、欠伸あくびをしながら帰宅したのだった。…確かにサスペンスではなかった。


                完

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