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-60- 生き返らせ事件?

 毛鼻けばな署に冥尚みょうしょう寺から訴えがあったのは、かれこれもう一年ばかり前のことである。だが、その訴えがあまりにも奇妙、奇天烈きてれつで、刑事課は事件として捜査したものかどうか、議論が二分にぶんしていた。

「我々は傷害、殺人とかの危害を加えた者を捕らえるのが仕事ですよ。それがなんですっ! 生き返らせたから寺の生計が成り立たないという理由で、その人をらえて欲しいとは馬鹿も休み休み言ってもらいたいもんだっ!」

 顔を真っ赤にして怒ったのは、課のリーダー的存在である高田警部だった。

「高田さん、そう目くじらを立てられずに…」

 なだめたのは署長の霧島である。

「そう言われますが署長、死んだ人を生き返らせる人をつかまえられますかっ!」

「…それはそうです。私もそう思います。医者が診離みはなして死んだ人を生き返らせた人だ。そんな神がかった人を捕らえるのは、やはりおかしいですな」

 霧島も得心してうなずいた。

「でしょ?」

「ええ…。しかし、被害届が出てますからな…」

 二人の話に割って入ったのは、高田の上司で副署長の村中警視だった。

「署長、それはそうなんですがね。だからさぁ~君、その被害届が果たして被害なのかって話だろ」

「ええ、それはまあ…」

「それにしても不思議な人物ですね」

 村中は霧島の顔をうかがった。

「ああ、村中さんが言うとおり不思議な人だ。聞くところによれば、死んだ人の顔に手を触れ、目を閉じただけで生き返らせるそうだね」

「はい、SF映画そのものですよ。とても私には信じられません…」

 高田は霧島へ大げさなジェスチャーを交えて返した。

「それは、私もだ…」

「私も…」

 高田の言葉に霧島も村中も追随ついずいした。結局、刑事事件ではないため、生き返らせ事件? の被害届は今も処分保留のまま宙に浮いている。


                完

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