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-59- 回り回って

 麹北こうじきた署の捜査本部である。先輩刑事の瀬戸と後輩の有田が問答をするように左右の席で言い合っていた。それを中央の椅子にドッカと座り、人ごとのように聞いているのは警部の九谷である。

「いや! それはおかしいぞ、有田。だいいち、それじゃ、犯人は鳥のようにフワフワと空を飛んだことになる!」

「瀬戸さんはそう言いますがね。今の時代、それは可能でしょう。例えば、背中にブロワを背負ってハングライダーで人間が飛ぶことは可能な時代なんですから!」

「それはそうだが、現場で犯人がそれを背負って飛び去ったとでも君は言う気か?」

「私はなにも犯人がそうしたとは言ってないですよ。フワフワと空を飛ぶことは今の時代、可能だということを言いたかっただけですっ!」

「だから、それは結局、容疑者のアリバイ[現場不在証明]が成立しないことになるってことだろっ!」

「ええ、まあ…。回り回って、そうなります」

「なにも回り回らなくたって、いいんじゃないか?」

 ここで初めて九谷が口を開いた。

「はあ、まあ…」

 九谷にダメダシされた有田は前面に二人の敵を抱えたような格好になり、萎縮いしゅくした。

「ただ一つ、私にも腑に落ちないのは、犯人が現場に残した食べかけのサラダと(はし)です」

 瀬戸が九谷に言った。

「ああ、まあな…。サラダには普通、フォークだわな」

 三人は意見が合ったように同時に首をかしげた。

「まっ! 回り回って食えなくもないかっ」

 瀬戸が、ぽつりと言った。

「それにしても、逃げる前に普通、食いますかね、それもサラダを箸で」

 有田の言葉に三人は大笑いした。事件は野菜盗難事件で、回り回って、犯人は届け出た店のあるじの偽装工作事件だった。ただ、何の利益もない虚偽きょぎの工作を、なぜしたのかまでは、いまだに分かっていない。


                完

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