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-46- 目赤川転落事件?

 事件? は深夜に起きた。所轄しょかつ蚤多のみた署が通報を受けたのは明け方の6時前だった。通報したのは早朝のジョギングで偶然、通りかかったサラリーマンの蚊取かとりである。蚊取はようやく明け染めた目赤川に人が倒れているのを橋上から見たのである。おやっ? と思った蚊取は走る足を止め、その人影を凝視ぎょうしした。見間違えではなく、人に違いない…と思えたのは、しばらくしてからである。蚊取はあわてて川岸へ急いで降りた。すると、やはり一人の男が倒れていた。蚊取は持っていた携帯で警察へ通報した。

 倒れていた男、猪山は意識を失っていたが一命があったため救急搬送された。

「ふ~む。自殺か他殺か…」

 蚤多署の刑事、芋畑は現場の川岸から落ちたと思われる橋を見上げ、つぶやいた。

「芋さん、害者の意識が焼けた、いや、もどったそうです!」

 息を切らせて駆けつけたのは、若手の刑事、落葉である。

「うむ、そうか…。まあ、とりあえずよかった」

「それが、妙なんですよ。本人は橋からフワッ! とナニモノかに押されて落ちたようだ・・と言ってるらしいんです」

「それはおかしい。目赤川のあの橋の上からだと、どう考えても助からんはずだ。全身打撲で内臓破裂だろうが」

「ええ、そうなんでしょうが、本人はかすり傷で、意識を失っていただけなんですから…」

「どうも、分からん…」

 次の日、害者? の猪山への事情聴取が病院で行われた。

「なにげなく歩いていて、橋の上でフワッ! と押されたようだとおっしゃってるんですが?」

 芋畑は、やんわりと穏やかにはたずねた。

「はい、休日の散歩をしていたときですから、その記憶は鮮明に残っております。ただ、その後の記憶がございません」

「橋から落ちていく感覚も、ですか?」

 それまで黙っていた落葉が急に口を開いた。

「橋から何かの圧力を受けて身体が傾いたところまでです…」

「そうですか。何者かに押されたのなら傷害、いや殺人未遂事件になりますしね」

「あなたが、フラついて落ちたのなら、ただの事故です」

「こいつが言うとおりです。ただ、私らに分からんのは、本当にあの高さから落下されたのか? という疑問です。科捜研の話では、あの高さからの落下の場合、致死率は95%以上とのことですが…」

 この一件は被疑者が見つからないまま、未解決の一件として忘れ去られた。見えるモノだけが怖いのではない。見えないモノが真のサスペンスなのだ。


                  完

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