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-40- 状況捜査

 物はいたむものである。目有めあり家では、主人の目有が物干し台から柿を採ろうとしていた。毎年、収穫しているのだが、今年はよく出来たせいか、たいそう手間取っていた。ほぼ半ばほど採ったとき、うっかり置いた高枝切りバサミを落としてしまった。当然、ハサミは地上へ数mほど落下した。そのとき、カチン! という音がするのが聞こえた。目有はしまった! とばかりに下へ降りた。鋏を拾おうとすると、取っ手の部分が割れて傷んでいた。一番重要な部分で、この取っ手が欠けては鋏は無用の長物となり、開閉が出来ないから切れない。もう少し慎重に採ればよかった…と目有はやんだが、時すでにおそし・・だった。これが人なら…と刑事の目有はゾォ~っとした。人なら、明らかに過失傷害の事件捜査となるからだ。鋏には申し訳ないが、まあ許してもらうしかないか…と目有はテンションを下げ、別の鋏をショップへ買いに行った。それにしても後味あとあじが悪い事件ならぬ物損になってしまったものだ…と思えた。

「お父さん、晩ご飯ですよ…」

「ああ、今行く…」

 目有は密かにそのときの状況捜査を開始した。者ではないモノだけに、捜査は難航なんこうした。なぜ、安易あんいに物干し台の勾配こうばいがある位置に挟を置いたのか…そのとき落ちる危険性を感じなかったのか…鋏を置いた瞬間の気持はどうだったのか…。なぞは謎を呼び、迷宮入りの様相ようそうを帯びていた。目に見えるモノの力より目に見えないモノの力は恐ろしい…と目有が感じたのはこのときからだった。


                  完

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