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-39- 考えすぎ捜査

 朝の出勤ラッシュで駅構内は人の波であふれ返っていた。事件はその中で起こった。ホーム階段で一人の老人が足をすべらせ転倒したのである。その余波で数人の一般乗客が巻き添えを食らったが、幸い、命に別状はなく、軽い軽症でコトは済んだ。ただ、そのときの状況は複雑で、転倒した乗客の前の夫婦は、激しく口論しながら階段を下りていた。そして急に夫婦は階段途中で停止して激しく言い合った。夫婦が停止すると思っていなかった老人は二人に追突し、転倒したのである。当然、老人の後方を降りていた数人の乗客も巻き添えを食らって倒れ、軽症を負った・・となる。

 事件を担当した所轄警察の十月とげつ署は事故、傷害の両面から捜査を開始した。現場検証が念入りに行われ、この一件はサスペンス的な展開に発展しようとしていた。

「いや! そうともかぎらんぞ。夫婦が口論で止まったのは事実だが、老人が偶然、転んだとも考えられる」

 一課の主任刑事、出汁だしは若い鳥鍋とりなべに反論した。

「転んだのは立ちくらみ・・とかですか?」

「まあ、そういうことだったのかも知れん…」

「老人の後ろの数人は老人とは赤の他人ですが、ひょっとすると、老人に何らかのうらみがあった・・とは考えられないでしょうか」

「うむ、なるほど…。そういう可能性も否定は出来んな」

「あるいは、階段途中で止まった夫婦と老人の後ろの数人はグルで、老人の持っている遺産を狙う親戚に雇われていた可能性は?」

「う~~む! その可能性も捨てきれんぞっ!」

 出汁は少し興奮ぎみに言った。

「となると、これは作為ある悪質な犯行ということになってきますがっ!」

「捜査本部を設置してもらわにゃいかんなっ! 署長に言ってくる!」

 半時間後、出汁はショボく署長室から出てきた。

「老人の意識がもどったそうだ。スッテンコロリンらしい…」

 出汁は少し怒りぎみに不貞腐ふてくされて言った。

「オムスビころりん、でしたか…」

 鳥鍋は多くを語らなかった。考えすぎ捜査は終結した。


                  完

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