表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
37/100

-37- ゴマすり激怒事件

 馬糞まぐそ工業の総務課である。課長の毛並けなみは課員の蹄鉄ていてつに今朝も、ゴマをすられていた。ゴマをすられることに馴れている毛並は、そろそろ蹄鉄のゴマすりが鼻についていた。そして、この日、ついに毛並の怒りが爆発したのである。まさか、ゴマをすって怒られるとは思っていなかった蹄鉄はアタフタとした。このときの毛並の激怒が事件の引き金になることを誰が予想しただろう。

 毛並にゴマをすって怒られたことが蹄鉄の心のわだかまりになった。蹄鉄は今後、どのように毛並と話せばいいのかが分からなくなっていた。

 次の日の朝、突如として蹄鉄は会社に出勤しなくなった。いや、それだけではない。蹄鉄は世間から姿を消し、完全に消息を絶ったのである。蹄鉄は独身で一人暮らしだったことから、他に蹄鉄の行き先を知る者はなく、会社からの捜索願を受けた飼葉かいば署は苦慮していた。

「どうだ、なにか手がかりはあったか?」

「いや、まったくありません…」

 課長の乗鞍のりくらむちは小声で返した。

「そうか。まあ、事件性はないようだが…」

 その頃、失踪しっそうした蹄鉄は落語家主催のお笑い道場に住み込みで通い、ゴマすりの腕をきわめるべく必死に修行をしていた。

「師匠! いかがでしょう?」

「そんな甘かないよ君、世の中は…まだまだ」

「はい! 努力しますっ!」

 着物姿の蹄鉄は、声を大きくして言い切った。

「ああ…今日は、ここまで」

 師匠は座布団から立つと、稽古部屋から静かに去った。ゴマすり激怒事件は予想外の展開を見せていた。


                  完

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ