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-34- 微妙な落雷

 不審火による火災が発生し、梶北署の捜査員が現場へ出動した。家は廃家で、幸いにも誰も死傷者は出ていなかった。

「消防は火元から見て不審火としか考えられないとの結論でしたが…」

 組立くみたて刑事は体育たいいく主任の顔色をうかがった。

「ああ、漏電、その他の原因はなかったそうだからな…」

 体育は、少し威厳のある声で返した。

「立ち去った少年の目撃情報が取れましたが…」

坂立さかだちが洗ってるそうだな」

「はい! 今回はスンナリつかまりそうです」

「そうなればいいがな…。さあ、署へ引き上げるとするか」

「はい!」

 体育と組立は覆面パトカーへ向かった。

 数日後、少年は簡単に捕まった。それも当然で、逃げていなかったからである。少年は署へ連行されるとき、キョトン? とした顔で警官を見た。自分がなぜ逮捕されるのかが分からなかったのである。

 梶北署の取調室である。

「お前しかいないだろうがっ! ちゃんと目撃者の裏も取れてるんだっ!」

「そんなこと言われても…僕じゃないよっ!」

「それじゃ、お前を見たっていうのはうそってことだなっ!」

 組立は強い口調で自白を迫った。

「いえ、それは本当だと思う。確かにその家の前を通ったから…」

「やはり…」

「いやいやいや…」

 少年は片手を広げ、ブラブラ振りながら否定した。それを見て、組立の後ろに立つ体育がポツリと言った。

「吐けば楽になるぞっ…」

「あっ! あのあと、しばらくして落雷があったんだ…」

「落雷? 馬鹿かお前は。そんな天気じゃなかったろうが…」

「いえ、確かに。僕がその家の前を通り過ぎてから五分ほどしたときだったな」

「馬鹿野郎! 落雷したなら近所の者は皆、知ってるわっ」

「音も聞いてるだろうしな」

 また体育が後ろから付け加えた。

「いえ、信じちゃもらえないかも知れないけど、無音で落ちたんだよ」

「誰が信じられるかっ!」

 そのとき、体育の携帯が鳴った。体育は威厳のある態度で携帯に出た。

「体育ですが…。…はい。…はい。えっ? そんな馬鹿なっ!」

 体育の顔の表情が一瞬、けわしくなった。

「主任、どうされました?」

「全焼した現場で、無傷の雷太鼓が発見されたそうだ…」

「でしょ?」

「微妙だな…」

 少年はニンマリし、二人の刑事はアングリした。


                   完

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