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-31- 真実

 取調室である。

「はっきり見たんですねっ!」

「ええ、それはもう…。ただね、私もここの虎箱でお世話になった口ですから、しかとは断言できませんが…」

 泥酔した挙句、蒲畑かばはた署で一夜を過ごした角鹿つのじかは、私服の馬皮うまかわに事情聴取されていた。角鹿が何も語らなければ、そのまま何事もなく蒲畑署を出ていたはずだった。だが、角鹿は語ったのである。というのも、角鹿が泥酔してフラフラと暗闇の裏通りを歩いていたとき、とんでもないものを見てしまったのだ。そのとんでもないものとはUFOが円盤へ人を吸い込む瞬間だった。馬皮は半信半疑で小笑いしながら角鹿の顔をジィ~~っと凝視ぎょうしした。

「ははは…、警察をめてもらっちゃ困りますな。どうせ深酒ふかざけで夢でも見られたんじゃないですかっ?!」

 馬皮は角鹿の話がとても真実とは思えず、まったく信じていなかった。こっちはいそがしいんだっ! 早く帰ってくれっ! というのが馬皮の内心だった。事実この日、人が失踪しっそうした通報があり、馬皮はその家へ向かおうとしていた矢先だったのである。

「とにかく、お聞きしておきます。ここへ連絡先を書いていただいて、今日のところはお引き取りいただけませんか」

 警察の方から迷惑だから引き取ってくれ・・と言うのは、相場とは間逆の展開である。

「まあ、それじゃ。そういうことですんで…」

「はいはい…」

 はい、を一つよけいに言ったところに、馬皮の迷惑気分の内心が垣間かいま見えた。

 数日後、失踪した人物が発見された。遺体ではなく記憶喪失で、である。

「本当に何も覚えておられないんですね?」

「はい! 私は誰でしょう? ただ一つ、UFOに乗っていて、高い空から地上へフワフワ降ろされた・・という記憶だけは残ってるんですが…」

 失踪者は馬皮に情況を克明に説明した。

「ははは…天孫降臨じゃあるまいし、ご冗談を」

「いえ、本当に…」

 馬鹿な話を…と、馬皮の笑っていた顔が一瞬、真顔に変わった。真実に思えたのである。馬皮の脳裏に角鹿の顔が浮かんでいた。


                   完

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