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-29- 落としどころ

 ベテラン刑事の舟方ふなかたは、このところ持病の神経痛に悩まされていた。なんといっても困るのは、張り込み中にジワ~~っと痛み出すやつだ。

「舟さん、いいですよ。私が見てますんで、車で待機していてください」

 若い底板はそう言って舟方をフォローした。

「おっ! そうか、すまんな。動きがあったら知らせてくれ」

 舟方は、こいつも、ようやくモノになったな…と思いながら、助かった気分で覆面パトへ移動した。

 犯人のトマト泥棒が捕まったのは、それから数日後である。その犯人は妙なヤツで、トマト好きが通り越し、一日中、トマトを食べていないと体調が悪くなるという、ある種の病気体質の男だった。

「さっさと吐けっ! お前が食べながら走り出たのを生産農家の一人が見てるんだっ!」

「いえ、私はそんなことはしやしません…」

 男は頑強がんきょうに犯行を否認し続けた。

「なあ芋尾いもお、隠したって、いづれは分かるんだ。やましい心の痛みは、吐けば消える! なあ芋尾」

 舟方は落としどころを探っていた。そのとき、例の痛みがジワ~~っと舟方の腰にきた。舟方は一瞬、顔をしかめた。

「私が変わります、舟さん!」

 敏感に察知した立っている底板が舟方に小声で言った。

「おお、そうか? …」

 舟方は犯人と対峙して座る椅子から立つと隅の椅子へ移動した。舟方に変わり対峙した底板は、机をバン!! と一つ大きくたたいた。

腰痛こしいたの年寄りをわずらわすんじゃねぇ!」

 犯人は底板の態度の豹変ひょうへんに驚いてビビッた。

「す、すみません、つい…」

 その自白を聞き、舟方は落としどころは、そこかい! と、少しムカついた。


                   完

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