表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
救世主は花嫁候補!?  作者: せりざわなる
第四章 救世主、動き始める。
51/83

正王妃と双子

長らくお待たせ致しました。


「まああっ!可愛らしいことっ!」


到着と同時に起こされた俺は、まだはっきりと目覚めてはいなかった。


ラウニに起こされ、手を引かれて馬車を降りたはずだったのに、正王妃が見たのはアルバンと手を繋ぎピッタリと身を寄せてまだ目をこすっている少女の姿だった。


おい!

いつの間に交代してんだよ!


俺は全然気づかす、突然両頬を挟まれて美女のアップが目の前に現れ驚いた。

しかも、驚きで思わず身を引きアルバンの後ろに隠れようとしてしまったのだが、美女は離してくれず、それどころかそんな俺の様子に何故か目を輝かせて益々顔を寄せてくる。


「母上。アキラが怯えております」

「あらあら、アルバンと本当に仲が良いのね」


流石に母親から俺を引き剥がす事は躊躇われるのか、アルバンは俺の肩を抱き寄せて母親自ら離してくれるよう行動で促している。

が、正王妃も離さないので、俺は顔を固定されたまま体だけを引き寄せられ、苦しい体勢になってしまった。


「……どっちも離してくれると、楽なんだけど」

「母上」


アルバンはするっと無視して、正王妃にまた促した。


「まあ、アルバンは結構独占欲が強いのね」


正王妃は楽しそうに笑うとようやく俺を離してくれた。

だが、アルバンは所有権を示すかのように俺を抱き込もうとしたので、肩に回った手を叩いてやる。

それを見てまた笑う正王妃に、今度は解放された俺から近づいた。


「えーっと。初めまして、アルバンのお袋さん?俺はアキラ。一応、アルバンの婚約者をしてる。その、言葉遣いは相応しくないかも知れないけど、取り繕ったって直ぐにボロが出そうだから、こーゆーので勘弁して欲しい」


俺の挨拶に正王妃は目を丸くした。だが、それは楽しそうで、ちょっとほっとする。


「まあ。その姿でとても変わった言葉遣いをするのね。でも、全く不快に感じないわ。不思議なこと」

「アルバンのお袋さん……?」

「お袋さんとは、母親を示す言葉なのかしら。初めて聞く言葉なのだけど、あなたの口から聞くとなんだか暖かいわ」


正王妃はにこにこ笑って俺の頭を撫で撫でし始めた。それにしても、初対面なのに平気でバンバン触ってくるんだな。アルバンも最近ぺたぺた触ってくるが、遺伝か?やっぱり。


「母上。そろそろ中に入りましょう」

「あら、そうね」


俺は寝ぼけていたが、ここは屋敷の玄関ホールだったようだ。

って言うかよく考えたら、王妃なのに玄関まで出迎えさせちゃったのか?


「うわっ!あ!ごめんなさい。俺が寝ぼけてたせいかっ?お袋さんに玄関でなんてっ!」


慌てたせいでよくわからない言葉になってしまったが、正王妃は笑顔のまま俺の頭を撫でて、そのあと 俺の手をとった。


「気にしなくていいのよ。私が早く会いたくて出てきたのよ。さあ、アキラちゃん、こっちで美味しいお菓子を食べましょう」

「母上!」

「……あ、アキラちゃん……」


正王妃はそのまま手を繋いで、中へ中へと俺を引っ張って歩いていく。

無礼ととってくれなかったのは良かったのだが、何だか【王妃サマ】のイメージがどんどん崩れていった。

まあ、あのおっさんの奥さんと思うと、似合いの夫婦だとは思うけどな。

でも、この夫婦から生まれたアルバンは【王子サマ】なんだよな。不思議だ。

ちらりと置き去りにされたアルバンを振り返って見ると、視線があったアルバンの少し不機嫌そうな顔がぱっと明るくなった。

そのままアルバンも足早に俺たちに近寄って来た。


まるで犬じゃねーか。

やっぱり、お前もどっか【王子サマ】じゃねーな。


そのまま俺達3人は、長い廊下を歩いて一つの部屋に入ったのだった。






入った部屋は応接室のようだった。

品のある調度品に囲まれたテーブルセットには、お菓子とお茶が置かれていた。

一瞬観察してしまったソファから、二つの小さな頭がピョコンと飛び出してきた。


「兄さまっ!」

「兄上っ!」


アルバンと同じ金髪の小さな男女の子供だった。二人はソファから飛び降りると、正王妃と俺の後に入ってきたアルバンに駆け寄って飛び付いた。


「シリル、デリル」


子供の勢いってのは中々侮れないんだけど、アルバンはものともせずに二人を受け止め、軽く抱き締めた後に頭を撫でていた。

へえ。仲良しなんだなぁ。


俺は一人っ子だから、ちょっと羨ましいところもある。だが、小さい子供が兄を慕ってちょろちょろとアルバンにまとわりついている様子を見てほっこりしていた。


「二人とも、お客様の前ですよ」


今だ俺と手を繋いでいる正王妃が二人をたしなめる声をあげると、二人ははっとし俺を振り返ってもじもじし始めた。


「し、失礼致しましたわ、お義姉さま。初めまして、デリルと申します」

「初めまして、シリルです」


そもそも【お義姉さま】じゃねーんだけどな。


心の中で突っ込みつつ、もじもじと顔を伏せる姿が可愛くて、俺は正王妃から手を離してもらい二人に近寄った。

俺から見ても二人はとても小さいから、二人の足元に片膝をつき背の高さをあわせ、視線を合わせるために下から覗きこんだ。


「はい、初めまして。ええっと、デリルとシリル。俺はアキラ。二人のお兄ちゃんの一応婚約者だよ。よろしくな。……二人ともいくつ?」

「私たちは7歳になりますわ。双子ですの」

「へえ。俺は………13だよ。お兄ちゃんよりは歳が近いし、仲良くしような」


今だにもじもじする二人の手を一つずつとり、ニッコリ笑うと二人はポカンとし顔を赤らめた。

何故かデリルが「お義姉さま…」とうっとりとしたような口調で呟いたが、スルーしよう。


ふふふと笑い声が響き振り返ると、正王妃がソファに座っていて笑っていた。


「二人とも、アキラちゃんと仲良くなれそうね。じゃあ、こちらでもっとお話ししましょうか」

「はい」


俺が立ち上がると、双子は俺の左右にピッタリとつき、それぞれが俺の手をとってソファまで引っ張っていった。

二人に促されるままソファに座れば、これまた双子は左右にそれぞれピッタリとくっつくように座る。

おい、お前ら。さっきまで兄のアルバンにたかってたんじゃねーの?


「あらあら。アルバン、こちらにお座りなさい」


アルバンは少し寂しそうに笑って、母親の隣に座った。


「それにしても、本当に可愛らしいわ。アルバンが夢中になるのも当然ね」

「母上…」

「あなたに会うのを楽しみにしていたのよ。前にね、アルバンが凄く機嫌がよい時があってね。どうしたのかと思っていたら、手に手紙のような」

「母上!」


アルバンが慌てたように言葉を遮った。

手紙?そーいや、字の勉強がてらアルバンに書いてたな。あれがどーしたっていうんだろう。


「お義姉さま。後で教えてあげますわ」


デリルがそっとささやいてきた。

別にどうしても知りたいわけじゃないが、デリルがそう言ってくれるなら、と俺は頷いた。


「……でも、本当にこうして会えて良かったわ。もう、お体は大丈夫なの?」


正王妃はふと笑みを消して、真っ直ぐに俺をみてくる。

そーいや、アルバンがここに滞在してた時に事件が起きたんだっけ。


「もう、とっくに。俺はずっと眠らされていただけだから、ちょっと体力が落ちただけで無事だったし。えっと……お袋さんにも心配させたんだ?…ごめんなさい」

「謝る事はないわ。娘になるんですもの。親として当然の事よ」


再びふふふと笑顔になる正王妃。


………っつーか。

さっきから、お義姉さまだの娘だの気が早すぎねーか?

そもそも初対面のはずなのに、こんなにすんなり受け入れて大丈夫なのか?

いや、悪かーないんだけど。


何か正王妃と双子の俺への態度が最初から好印象すぎて、きっとアルバンが何かしたんじゃないかと睨んでしまう。

だが、アルバンは睨まれる理由がわからず、不思議そうな顔で応えてきた。


まあ、後でとっちめるか。


「あら、アキラちゃん。どうかしたのかしら」

「え?いや。アルバンの家族って皆親しみやすいなあと思って。……そーいや。これでアルバンの家族に全員会えた事になるのかな。あ、もう一人奥さんいるっけ」

「ユーリアちゃんの事ね?」


一瞬、正妻の前で第2夫人の話をしてヤバイと思ったが、正王妃はあっさりと話を受けた。しかも、ユーリアちゃん、って。


「ユーリアちゃんは休んでいるわ。今が一番大事な時期ですもの」

「ああ、いいん……です。無理しちゃいけないもんな」

「アキラ。言っていなかったか?私にはもう一人弟がいるぞ?」

「え?シリルが第2王子じゃないの?」


横にいるシリルを見ると、何故かほんのり顔を赤くしてどことなく嬉しそうに話し出す。


「僕は3番目なんです。2番目の兄上はバートリットと言う名前なんですよ」

「アキラちゃんの2つ上よ。レオニール帝国に留学中なの。残念だけど、今は会えないわね」

「あら、会わない方が良いですわ。バート兄さまは口うるさいんですの。聞いているだけで耳が痛くなりますわ。お義姉さまをそんな目にあわせるわけにはいきません」


次々と第2王子のバートリットについて話し出す母子達。アルバンも俺も苦笑するしかなかった。


「アルバンもアキラちゃんも、しばらくはここにいられるのでしょう?」

「アルバン次第かなぁ」


俺がそう答えると、3人はぐりんとアルバンの方を見て睨んだ。


「アルバン?」

「兄上?」

「兄さま?」

「……そんな目をしなくても、そのつもりですよ、母上。…だけど、ゆっくりしに来たのだから、シリルもデリルもあまりアキラを振り回したりしないようにな」

「はい!」

「もちろんですわっ!」


そこでひとまず話は落ち着き、後はだらだらとおしゃべりをしてお茶とお菓子を楽しんだ。





やがて双子がはしゃぎ疲れて眠ってしまい、その場がお開きになって、滞在中に過ごす部屋へとアルバンと共に案内されたのだが、その途中ひどく面白く無さそうな声でアルバンに囁かれる。


「アキラ……お前、何で自己紹介の際に【一応】婚約者というのだ……?」


げっ!気づいていたのかっ!

ー俺は聞こえなかったふりをして、スルーした。

ライザール国王一家


ゼイン 国王

ズザナ 正王妃

ユーリア 第2妃

アルバン 第1王子

バートリット 第2王子←New

シリル 第3王子

デリル 第1王女

E?? 第4王子or第2王女

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ