騎士団の部屋で(晶の朝)
テンプレいちゃエロ回です。
うーん。
……朝だよなぁ。
まだ目を開けてないんだけど、鳥の声が聞こえて来るし、顔に当たる日差しがなんとなくわかるから朝なんだろな。
雨の時期は過ぎてもう夏だ。
日差しが当たってる部分はほんのり暖かいんだけど、まだ気温は低くて寒い。
だから、手足は冷たくて思わず手も足もすりすり合わせてしまう。
どうしよっかな。
起きようかな。
「………っ……」
言葉にならない声が聞こえたかと思うと、後ろから暖かいものに包まれた。
正体はアルバンだ。
ここは騎士団宿舎にあるアルバンの部屋だ。
テオと再会して事情を聞いたときに、【騎士団宿舎】ってのを知った。
テオ達がそこに住んで訓練所に通うなら、俺も使って良いんじゃね?って閃いたんだ。
だけどそれを言ったら、アルバンとベセルが真っ青になって、シクステンも呆れたようにため息ついたんだよな。
男ばかりの宿舎に女は危険だし、冒険者のテオ達という部外者が入ったばかりなのに、また騎士団の連中の気が散るような事はできないと。
まあそうだよな。
そこで諦めたんだけど、1度本当にへとへとになっちゃったまま騎士団宿舎のアルバンの部屋に顔を見せに来たら寝ちまって、そのまま泊まる事になったんだよな。
それからなし崩し的にアルバンの部屋に3日に1回くらいは泊まるようになった。
宿舎は男の園だから、ベセルや侍女も近寄り難いし、アルバンの侍従や護衛の負担は確実に増える。
でも訓練所との行き来がやっぱ楽だし、その分鍛練に打ち込めるしでメリットが多くて…悪いことしたかなって思うけど、騎士団の連中も気づいていながら何も言わないでいてくれるから、甘えさせてもらっているところだ。
そして今、俺とアルバンはぬくぬくとベッドで寝てたわけだけど。
……………………
……………………
………………っ違うぞ!
後ろから寝ぼけたアルバンに抱き込まれて暖房具代わりになってるが、俺もアルバンも真っ裸じゃねーからな!
「う、う…ん」
ぐりぐりとうなじの辺りにアルバンが額を押し付けてくる。
抱き込む腕に力が入り、ばふんと長い足が俺の下半身の上に乗っかってきた。
そのまま絡み付くように俺の足に絡み付いてくる。
アルバンも手足が冷えるのか、俺の足先に自分の足先をすりすりと合わせてくる。
……………抱き枕状態だな、コレ。
起きようか迷ってたけど、これだけがっちり抱え込まれてたら、ほどくのもめんどくさいし、もうちょっと寝てるか。
…………………………
…………………………
…………………………
もぞもぞ。
…………………………
…………………………
…………………………
もぞもぞ、すりすり。
二度寝しようと決めて、背後から包む暖かさにうつらうつらとし始めた時、後ろの暖房具が動いて中々眠りにつくことができない。
お前なー。
背中にあたるアルバンの吐息で、起きてはいないとわかるんだけど、寝てるんならおとなしく寝とけよ。
お互いさまだからじっと暖房具に俺もなってやってるのに、なんで俺を寝かせてくれねーんだよ!
……ふにゅ。
「ひゃっ!」
急にしびれるような感覚が体に走り、びくんと震えた。
流石にバチっと目を開けざる得なくて、気づけばアルバンにの大きな手のひらが、俺の胸を包んでいる。
そしてその手が感触を楽しむかのように、うごめいていたのだ。
ふにゅ、ふにゅ。
「ちょ……っ!おま……っ!あっ!」
アルバンの指が胸の頂きをかすった。いつしか反応していたそれに触れられた事で、また強い痺れが全身にはしる。
こいつ実は起きてんじゃねーの?と頭を後ろに向ければ、すぴすぴ眠ったままのアルバンの顔が辛うじて見えた。
マジで?眠ったままなの?
でも、ふにゅふにゅする手は止まらない。
「マジで、勘弁………」
上半身は抱え込まれて動けないため、絡み付いてる足を強引に解いて下半身からアルバンと距離をおいた。
そしてアルバンの腕という輪を、下へすり抜けるようにして脱出しようとしたのだが。
「ぎゃっ!」
逃がさんとばかりにアルバンは片腕を俺の腰に巻き付けて引き寄せてしまったんだ!
「アキラ……」
呟きと熱い吐息がかかって、しっとりした感触がうなじに張り付く。
それに加え引き寄せられた俺の体……主に俺の尻に熱いものが押し付けられる。
こ、これはっ!
自分でも経験ある、アレじゃねーか!
アルバンは確か二十にもなってないはず。
俺とそう変わらないから、まだまだ元気になっちまうはずだ。
だから仕方ねーとわかってるんだけど、それとこれとは別だ!
全身を包む暖かさと明らかに熱さが違うから、むちゃくちゃ生々しくてなんだからいたたまれねぇよ!
しかも………ぐりぐり~と押し付けんじゃねぇ!
二度見してもやっぱり寝たまんまで、なんかとってもたち悪い!
しかも少し微笑んでいて、何かいい夢をているようだ!
「こっの………っ!むっつり馬鹿っ!」
少し動けるようになった上半身をひねって、呑気に寝てやがるアルバンの顔に肘打ちをくらわせる。
「っ!……いたっ……!」
流石に目が覚めたアルバンは、不快そうにしかめながら目をぱちぱちさせて状況を把握しようとしていた。
「なんだ、アキラ。何をした……?」
「こっちのセリフだってーの!馬鹿っ!このスケベ!離しやがれ!」
「なんなのだ、いきなり……」
「あっ……!」
無意識なんだか知らないがこの後におよんでも、俺の胸を包む手を動かすもんだから、変な声が出ちまった。
そこで、ようやくどんな状況になっているのか気づいたアルバンは、慌てたように飛び起きて体を離した。
「す、すまぬ!」
「このスケベ野郎……」
なんだか朝から要らん体力を使ったような奇妙な疲れを感じつつ俺も身を起こせば、申し訳なさそうなアルバンと目があった。
抗議の意味できっと軽くにらんでやれば、アルバンは少し目を見開き手で口を覆って視線を反らす。その耳は少し赤く、隠すように上掛けに覆われた腰を気まずそうに揺らした。
………まあ、健康優良男児だもんな。
寝ぼけたあの行為はともかくとして、朝のアレは仕方ねーよな。
「もういーや。……気を付けろよ」
「すまぬ」
ちょっとしょんぼりしたアルバンが少し可笑しくて、許してやることにした。
不思議だ。
初めてあった時はクソ王子だからとぶん殴る事にためらいはなかったんだけど、今じゃちょっと可愛いところある感じでどーも怒りきれねーんだよなぁ。
なんだろ。
でけー犬みてーなんだよなぁ。
つい頭をなでなでしてしまい、アルバンをまた驚かせてしまった。
「で?少しは収まったか?」
視線を下腹部にやると、アルバンはその意味を理解して顔を赤くした。
「なっ!お前はっ!」
「あー、ごめんごめん。じゃ、俺は顔でも洗ってくるわ」
しゅるりとベッドを降りて、顔を洗うために寝室を出ることにした。
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その時、晶は後ろに流していた髪を両手で一旦一つにまとめて後ろから鎖骨へ流したのだが、その様子を見ていたアルバンが、昨夜己が着けた印がそこにあるのを確認し嬉しそうに微笑んだのには気づかなかった。
そして。
その後、いつも通り髪を纏めて帽子の中に納めうなじを露にしたまま訓練所に入った際、シクステンがピクリと眉を動かし、テオが顔を赤らめ、ベセルは少し焦ったように汗拭き用の布を首にかけたのだが、その時点でも彼らの様子やその理由にもやっぱり気づいていなかったのである。
第3章はここまで。
晶のうなじに何があったのか。
「ひと休み」の方に3/28 AM2:00~載ります。
タイトルは『騎士団の部屋で(アルバンの夜)』
こちらもテンプレですが、よろしければどうぞ。