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救世主は花嫁候補!?  作者: せりざわなる
第二章 救世主、眠り続ける。
32/83

シクステンの覚書

第二章の最後です。

短いです。

少女連続行方不明事件は、ベリアン=オルザムの死亡で一応解決。


しかし、やるべき事はたくさんある。


まずは急ぎ城への第一報。

調査だけでなく、乙女の救出にまで至ったのは想定外だったが、城の宰相と緊急連絡方法を決めて置いて本当によかった。

事件の解決と乙女の救出はもちろん、もう1つ、テオという少年とマオという狐人奴隷が遺棄した少女の保護についても早急に手配しなければならない。

今、テオとマオからその事情を聞き取り、まとめて一報を飛ばした。


そして狐人兄弟は、シクステンが仮の主人となって一切の魔法や攻撃行動を禁止し、牢に閉じ込め、クライブが見張りに立った。

セリノは乙女を寝かせる部屋を確保し、側についている。


兄弟の見張りはクライブと交代しながら行い、乙女の世話は魔法使いが薬師も兼ねているとの事で、神官騎士と交代で行うと決めたようだ。


テオという少年には、雑用を手伝ってもらう。

神官騎士はその提案に眉を潜めたが、本人が進んで引き受けた。

彼には、少女遺棄という罪がある。

事情はあれど、罪悪感があるのだろう。

逃れるためか、償いたいのかわからないが、行動していないと落ち着かないのはわかるので、遠慮なくやらせた。

正直、冒険者としてやって行くには弱いなと思うが、彼の人生にこちらから関わって行く気はないので余計な事だと考えるのを止めた。



一報を出し、あらかた今決めるべき事を終えた時、動きがあった。

それを目撃したシクステン、リーシェ、テオはとっさに動けなかった。

オルザム邸にいた誰もが忘れていたのだが、関係者はまだいたのだ。

そう、花を摘みに行っていたゴブリンである。

嵐のように事態が動いていた我々にとって、何事もなかったかのように花一杯の籠を背負って戻ってくるゴブリンの姿は、何かの劇のようであった。

そのまま、ゴブリンは多分普段通りに地下へ行こうとし、慌てて拘束したのである。

マオに問いただしたところ、ベリアンは契約した魔物を何らかの事情で失ったらしいが、ゴブリンは魔物側からの契約の為、彼の側に残っていたという。

つまり、ゴブリン側からの意志がない限り、彼の側から離れないだろうと。

聞けば聞くほど取り扱いに困る存在である。

セリノから、ゴブリンは言葉を交わす事が出来、それなりの判断が出来ると教えてもらい、駄目元で聞いてみれば主人の側にいたいと答えた。

協議の末、「おとなしくしていること」「現場や遺体に触れないこと」を条件にし、地下の石室でセリノに使われていた鉄枷に、繋いで置くことに決めた。





そして半日。

真夜中に、その集団は到着した。

馬の蹄や鳴き声、装備が重なり合う音、揺らめく灯りの数々に隠そうともしない多数の気配。

一刻も早く到着せんと駆けつけたのは明白だった。

玄関ホールからのびる大きな階段に腰をかけて待機していたが、出迎えようと腰をあげたところで蹴破るように玄関扉が放たれた。


「調査官どの!おられるか!」


案の定、アルバン王子だった。

乱れた服や髪や流れる汗もそのままに、シクステンの姿をとらえると、真っ直ぐ向かって来て両肩をつかんで揺さぶる。


「アキラ!アキラはどこだ!」

「気持ちはわかるが、少し落ち着いてくれないか」


肩を掴む摘みに王子の腕に手を置く。


「安全は確保している。すぐに案内するが、少し話したい」

「……すまない」


じっと目を見れば、王子は素直に激情を抑え込んだ。

理解はしたが、どうにも気持ちが逸るというのは隠しきれていないが、状況に応じてそういった切り替えをするのは流石身分のある者という感じである。


「では、いくつか頼みたい事がある。私の事を調査官と呼ばないでくれ。シクステンでかまわない。協力者達には明かしていないのでな」


まあ、これだけ大騒ぎで入った時点で、冒険者達がこちらの様子を伺っている事だろうが。


「それから、乙女の事だが、無傷といった訳ではない。協力者に神官騎士と薬師がいたので、治療はすんでいるが、今は眠っている。あまり無理をさせないほうがいいだろう」


無傷ではない、と言ったところで王子は顔色を変えたが、最後まで聞いて頷いた。


「後は……乙女と会ってからが良いな。では、こちらだ」


王子にとっての最優先は乙女だ。

まずは会わせて落ち着かせた方がいいと判断し促せば、王子は同じく汗だくな侍従に、連れてきた騎士達の配置を指示していた。

その間、使用人食堂にいたはずの女魔法使いがこっそりとこちらを覗いているのに気づき、目が合ったところでうなずいてやると、リーシェも頷き返しひっこんだ。

とりあえず、彼女達はおとなしく待っているだろう。


王子を乙女いる部屋へ案内する。

扉をノックすれば、一呼吸置いて中からセリノが顔を出した。


「ああ、シクステンどのですか。先程、大きな音がしたようですがー」

「悪いが、通してくれ。ライザールの王子だ」


セリノは目を見開きシクステンの後ろに視線をやったが、慌てて身を引いて扉を大きく開けた。


「ーアキラ!」


扉が開いて、ベッドに横たわる乙女の姿が見えたところで我慢出来なくなったのだろう。

王子は二人を押し退け部屋に飛び込んだ。

そのまま、ベッドに駆け付け、乙女を覗きこんだ。


「アキラ……っ!」


乙女に触れようとして躊躇う王子に、とりあえずは無理をさせないという話は聞いていたなと判断してセリノに向き合う。


「しばらく、お前が離れていても平気か?」

「え?ええ」

「では、王子に任せよう。……王子、しばらくしたら戻る」


王子の返事は待たずに、セリノを連れて部屋をでた。

動きが悪いセリノを見れば、目を見開いたままだった。



「その……良いのですか?」

「二人きりにさせてやろう」

「それだけではなく……その……………不敬で罰せられませんか……ああ、ええっと、城から依頼されてる方なんですよね。言葉くらい……いや、でも」



王子に身分を明かさないよう頼んだが、こちら側が変わらぬままでは不審に思われても仕方がないか。

失態に気づいたが、言い訳も思い付かず、口を閉じた。


まだ、セリノは一人で呟いている。



冒険者達が合流した時に、シクステンは城から依頼を受けた者であると自己紹介をしています。クライブに説明した内容と同じです。



第三章からは、主人公が動きますよ。


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