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救世主は花嫁候補!?  作者: せりざわなる
第二章 救世主、眠り続ける。
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アルバンの苦悩

11月に入ってからPV数が増えてびっくりしてます。

本当にありがとうございます。

雨が降った日。

その知らせは、まだその日の夜が明けぬ時に届いた。


「馬を出せ!」


命がけと言っても良いくらい疲労困憊して、王子の前でありながら倒れてしまった伝令に、気を使うどころではなかった。

指示を飛ばそうとして振り返れば、侍従がすでに靴や武器などの装備品を素早く整えていた。

そのまま手伝わせ装備していると、母上がやって来た。


「城に戻るのですね」

「母上」

「こちらは任せなさい。いざという時は、力になれるよう整えておきましょう」

「申し訳ありません、母上」


母上は冷静だった。

気が逸る心に少し冷静さが戻る。

そう。

事は大事だが、ここで荒立ててはならない。


「では、お願い致します」


支度が整い、母上が頷くのを見て、館を飛び出した。




朝日が昇り、2刻ほどだった頃に城に着く。

後続の部下や侍従達が到着するのを待たずに、早速事情を説明しに駆け寄った侍女の案内で医療室に入る。

医療室には深緑の衣装を纏った男と父上がすでに入っていた。

見慣れぬ男に一瞬気がとられる、が。


「お守りできず……申し訳ございません」


父の足元に、女がひれ伏していた。

アキラの侍女のラウニ。

しかし、ひどい様であった。


全身に布を巻かれ、髪も燃やされたように縮れ肌が見えている。

巻かれた布も薬と血でじんわり色が染まり、実に痛々しい。

それでもなお、ラウニは涙を流しひれ伏している。


「魔法治癒である程度回復したとはいえ、そなたも死にかけたのじゃ。無理はしなくても良い」


父上は声をかけたが、ラウニはふるふると横に首を振った。

悔しそうに顔が歪められる。

気持ちはわかる、しかし今は。


「ラウニ。今は状況を知りたい。話せ」


ラウニは一瞬身を震わせたが、ぎゅっと涙を吹いて話はじめた。








それから2日。


アルバンはアキラの私室で、あげられる報告書を読んでいたが、持っていた書類をくしゃっと握りしめていまい、それに気づいて苛立ったように放り出した。

隣の寝室には今、本来の主ではなくその侍女ラウニが体を休めている。


『王子が予定を変更して城に戻って来た事は、婚約者たる乙女の急病ということにしようかの。乙女の部屋を整えたら、あの怪我した侍女を身代わりとして寝かせておけば良い』


父上がそう判断し、固持していたラウニに命令を下して寝かせている。

自分は婚約者を心配する心優しき王子役だ。


「情けない…… 」


何もできない。

どうにも動けない。

放り出した書類を見て、また悔しく思う。


城に戻って来た時に、父上の側にいた男。

神変調査官。

よりによってこの時に、彼は城を訪れていた。

父上から詳細は聞いていないが、十中八九アキラに関わる事だろう。

しかし、あの男は意外な提案をしてきた。


『よければ、協力をしよう』


不愉快だった。

初対面の男が、この大事に自ら関わると言い出したのだ。

神変調査官であれば、知力も武力も申し分はない。

力になってくれれば、頼りになるのは確実だが。

いつしかアキラの存在は、心を強く縛っていて、男こそがそれに楔をうつかもしれないため、関わらせるのに抵抗してしまう。


いや、それだけではない。


『この騒動で、私の訪問は目立たなくなった。動くには都合が良いだろう』


宰相のマーシャルがあげてきた報告書には、冒険者ギルドに寄せられた『連続少女失踪事件』の情報があった。

神変調査官はそこの調査を担うとあっさり請け負ったのである。

その自由さが、さらに不愉快にさせた。


自分こそが、アキラを探しだし。

自分こそが、アキラを救いだす。


口を開こうとした時。


『アルバン、動いてはならぬ。……理由はわかろうな。捜索はマーシャルと神変調査官殿に任せるのじゃ。やるべき事は他にもあるのじゃ』


父上には気持ちがわかったのだろう。

それでも、釘をさした。

父上と男の視線を受け、激情を押さえ込む。

いくつかの打ち合わせを経て、父上は職務に戻り神変調査官は調査に出た。


そうして、自分はここにいる。

城の警備強化と見直し、国内の動向を調査している。




本当に歯がゆかった。


この話はボツ予定でしたが、主役に続きアルバンも登場してないので載せる事にしました。

短いです。

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