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救世主は花嫁候補!?  作者: せりざわなる
第二章 救世主、眠り続ける。
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捕らわれた冒険者


暗い地下牢の中で、テオは泣いていた。

自分の力のなさに泣いていた。


「どうしてっ!どうして、僕はっ!」


嘆くも今は一人きり。

ーいや、ぐったりと意識を失い、足元に横たわる少女がいた。

手足が痩せ細った身体は、長時間監禁されていた証しでもあった。


「準備はできたかね?」


背後から低い美声をかけられる。

テオは振り向かない。

わかっているからだ。

先程まで、セリノとともに冒険者として相対していた依頼主であったのだから。


「セリノは……セリノは傷つけないでくれるんだろうね」


ふ、と笑うような吐息。


「まだ、他人の事を心配するのか。君の方は要らないのだと言ったはずなのだがね。神官騎士との取引をわかっているならば、余計な事は言わず、さっさと行動に移したらどうなのだ」


テオはギリリっと唇を噛み締めた。


「ベリアン様。こちらは準備が整いました」


セリノの声だった。

思わず振り向くと、いつも側にいるセリノの姿があった。

しかし、テオは眉を潜める。

何故なら、依頼主ベリアン=オルザムによって拘束されているはずで、今ここにいるセリノはいつもの清浄な気配ではないからだ。


ーこいつは、セリノもどきだ。


「…なんだ、人間。その不細工な面は」


視線に気づいたセリノもどきは、テオを見下す。

その隣で、ベリアンは愉快そうに笑っている。


「少年。マオは実に見事にあの神官騎士に化けてくれたと思わないか。さあ、これを持って一緒にギルドにいってくるがいい」


テオは涙をふき、睨み付けたままベリアンが差し出す巻き紙を受け取った。

中身は「依頼完了」の証明書だ。


「君に頼んだのはもうひとつあるが、そのままどこかへ行ってもかまわないぞ。言封じの契約はしっかりなされていることだしな」


テオは、ちらりと足元の少女をみる。。

胸が痛んだ。

セリノが捕らわれている以上、テオはギルドから戻らなければならないし、戻れば少女を奴隷商人に売り飛ばすという悪事をやらざるえないからだ。


『ダメです!テオ!』


青ざめていたセリノの顔を思い出す。

セリノは、捕らえられてすぐに、僕の命の保証と引き替えに抵抗を諦めた。

あっさりと決断したのは、僕がいたから。

それ以外にない。

ごめんなさい。

ごめんなさい。

僕の力が足りないせいで。

でも、そんなセリノを僕は失いたくないんだよ。

だから僕も、事が成就した後のセリノの命の保証と引き替えに、奴らの企みへの協力と事を誰にも告げぬ言封じの呪縛とを受け入れた。

決めたのは自分。

悔しさにまだ揺さぶられてしまうけど。

今はやるしかない。


「僕は戻るよ。ーさあ、行こうか。セリノもどき」


テオは、セリノもどきがついてくるのも確認せずに牢から出ていった。









「君の宝石は随分勇ましいな」


地下牢の更に下、白い花が敷き詰められた祭壇がある石室に、笑いながらベリアンが入ってくる。

声に反応して、セリノは頭を上げた。

魔呪を施された首の鉄枷に繋がる鎖が、じゃらりと音をたてた。

細剣も防具も装飾品も奪われ、今はただの神官になっている。


「ーテオに何をさせるつもりです?」

「互いに案ずるのは同じだが、随分おとなしいな?あちらは泣きながらこちらを睨んでいたが、実に少年らしい振る舞いだった」

「私のやるべき事は決まっているのですから、今更ですね。しかし、テオは生きなければ」

「生きねば、か」

「全ては生きていてこそ、ですのでね」

「……………そうだな」


ベリアンの顔から表情が消え、セリノから祭壇へ目を向ける。

白い花に囲まれたそこにはひとつの棺がある。

棺には、ベリアンの最愛の女……であったモノが。


「愛おしいのですか」


ベリアンは再びセリノを見る。

セリノの目には皮肉が込められていた。


「愛おしいな」


それがどうした?とベリアンは視線を返した。

セリノはため息をつく。


「個人的には『どうそご勝手に』ですね」

「ああ、勝手にするとも。だから、神官のお前を使わせてもらう」

「…………やれやれ」

「まだ、材料は揃っていない。ゆっくりしているがいい。それに、ここもそんなに悪くないだろう?」


ベリアンは敷き詰められた花の一つを拾い上げた。

そして座り込むセリノの膝の上へ、ぽとりと落とした。

今日取り替えられたばかりの花は、まだその薫りを強く発している。


「材料」

「ああ、次のが当たりだといいのだがね」


その「材料」に対して、何の感情もない事をベリアンの瞳で見たセリノは、心の中で舌打ちする。


ベリアンは、花を踏まないように祭壇へ歩み寄った

そして、棺の縁に腰をかけ中を覗く。


「もう少し待っていてくれたまえ。そして約束を共に果たそう。なあ、テア」


先程と違い、ベリアンの瞳には溢れんばかりの愛情が見られ、セリノは複雑な気持ちが沸き上がった。


「本当に、ムカつきますね……」


目を背けずにはいられなかった。


ベリアン=オルザム 道から外れた召喚士。元冒険者

マオ 狐人 黒髪で前髪半分だけ白髪 双子の弟をもつ

リオ 狐人 金髪で前髪半分だけ黒髪 双子の兄

レオ 狐人 白髪で前髪半分だけ黒髪 双子の弟



主人公が出てきませんね。

女の子も出てきませんね。


予定では4話くらいで、主人公メインに戻るはずだったのですが。

もう少し、続きます。


セリノさんの枷が首なのは、友人のリク……アドバイスです。


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