待ち望んだ展開
よし、キタ!
原因は忘れたけど、俺は何かに巻き込まれた。
辺りは真っ白な空間と言いたいが、今は目を閉じていてふわふわそこにいる感覚しかない。
でも、気持ちいいからそんなイメージでいた。
そして、この声ー。
「お前の力が必要なのだ」
これって神さまだよな!
ときたならば、これは召喚ストーリーまっしぐらでしょう!
しかし、今のは男の声だった。
どうせなら、女神さまの声でささやいてほしい。
ワンモア。プリーズ!
「あなたの力が必要なのです」
よしよし!
そーでなくっちゃ!
ざわざわと人の声が聞こえてきた
『運命を変える鍵を』
『この窮地に救いの手を』
『神さま!』
『主よ!』
え?
もしかして、俺を望む人々の声?
すっげえ多くの声が聞こえてくる。
こんなに、俺は求められてんの?
「お前の力を」
「力を貸してくれますか」
男神と女神が交互に聞こえてくる。
普通、主役を導くのは1人の神さまなんじゃねーの?
さっきの救いを求めている声といい。
神さまといい。
俺ってー。
俺ってー。
とんでもない、大救世主なんじゃねーの!
体はぴくりとも動かないけれど、
心は暴れだしたいくらい興奮していた。
「「答えをー」」
わーったよ!
まとめてやってやらー!
「契約はなされた」
「それでは、参りましょう」
「待っているぞ」
「待って………っ!?」
男神と女神は交互に話しかけてくる。
女神の最後の言葉がつまったのに気づいたけど、ふわふわしていた空間か暖かくなって………。
ごおおっ!
いきなり強い風が俺の体に叩きつけられる。
ち、ちょっと!
なんだよこれ!
体は相変わらず動かない。
激しい風になすがまま、あちこちに飛ばされ変な体勢にさらされる。
イテッ!
イテテテテッ!
俺を丁寧に扱えっちゅーの!
救世主サマなんだろ!
何分続いたかわからない。
振り回されつづけ、俺の意識はもうもたなかった。