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あれから

短編の設定を少々変更しました。

ーー夢をみていた

どうやら眠っていたようだ、とジニアはゆっくりと目蓋を開いた。

気だるい身体を起こし視線を周りに向ける。そこには、太陽に光に反射して神秘的に輝く泉があった。

とても懐かしく幸せな夢だった。


あれから七回季節が過ぎた。


景色は全くというほど違うのに、宝石よりも美しく輝く水を見ていると自分の唯一であった世界を思い出す。

母と自分だけの世界。生まれ育った森にある川。その川もこの泉のように太陽の光に反射して宝石のように輝いていた。


あの場所を飛び出したのはジニアが十のときだった。


故郷の思い出に浸っていたジニアを小さな手が引き戻した。

引かれた袖先に視線を移す。そこには愛しい、愛しい自分の宝物。


「マー、マー!」

「ルイ、ごめんね、寝ちゃった。」

もうすぐ二つになる小さくて脆い身体を大事に、大事に抱き上げる。腕の中にある暖かい体温を感じて口を綻ばせた。


ジニアは幼児のルイを抱いたまま立ち上がった。柔らかな風が吹き髪を撫でる。

懐かしいその香りを吸い込み、吐き出す。


「行こうか、ルイ」

自分の唯一になってしまった宝物に笑いかける。

そして、ジニアはその場から去った。


 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄


ーー凍えるようだ

肺に入ってくる夜の冷たい空気に、ジニアは思った。足の爪先がもう感覚を感じることが出来なくなってしまっている。

それでもジニアは足を止めることはしない。こんな寒さ、目的の達成に比べたらいくらでも我慢できる。


ジニアが向かうのは人里から離れた辺境にある森の一部。自分にしか感じることのできない忌々しい魔力に覆われている場所。


『人喰いの森』


一見、そこには何もなく、感じることのできない場所のように見える。しかし、この森に入っていった人間はほとんどの確率でもどってこないと噂の森だった。

運良く戻ってこれた人間はみな同じようなことを言う。

森のなかを進んでも、進んでも、入り口に戻ってしまう。どうしても、奥まで入ることができなかったらしい。

しかし、ジニアは入り口に戻ることなく進むことができる。


彼らと同族の(・・・)ジニアには。


ジニアは進む。その方角に迷いはなく。まるで、見えない糸を手繰り寄せるように進んでいく。そして、ジニアは足を止める。

そこには何もない。少なくとも森の一部である木々が生え拡がっているだけの寂れた景色が有るだけだ。もちろん、その先に道はない。

しかし、ジニアは足を進めた。


身体が弾力のある水のようなものに触れる感覚が伝わり、景色が水面に水が落ちたように歪む。それは徐々に上へ上へと広がり、回りの景色おも歪めてゆく。ジニアの進む道には大きな壁のようなものがその先の景色を覆っていたのだ。


ーー結界


それは、魔力で作り上げた、一部の対象を弾く見えない壁。教会などで秘術として使われ、一般には普及してない魔法技術だ。少なくとも、こんな場所で使われることはない。

この結界が森のはいるものたちを惑わせ、奥に進めないようにさせていたのだ。

ジニアは知っていた。原理は異なるが、似た性質を持った魔法が使える種族を。



進むたびに景色が歪んでいく。そして、絵が剥がれるように景色が紙のように破れ、中心に道が現れた。

その瞬間、ジニアは駆け出した。

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