氷籠~ひさご~
目が覚めた時、私の喉が痛かった。
凍りつく息がアイスケージ内で白く煙った。
その息で歯裏は暖かくなり、歯表は氷つきそうなまで冷たくなっていた。
籠の中に一人居る私は、足元の冷たさが膝にまで
伝わって、意識もなく私の身体は震えていた。
私は服を着ていなかった。
私は逆に今、安堵しているのだ。
やっと死ねる、心から死ねるんだと。
私を囲む氷の箱の先には何もかもが闇だった。
闇というよりは無だろうか、何も先が見えなくなっていた。
この氷が溶けると私は死ぬのだろうか。
だが、溶けるという感覚はない。
そして、ここからどこかへ行くという事もないだろうと
私は思っている。
冷たく閉ざされた氷のケージで私は朽ちるのか。
それとも、このケージが溶け落ち奈落の底に落ちるのだろうか。
足底の闇は、私を喰らうのを待つかのように見えた。