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侵入

久しぶりに更新できました。

視点がコロコロ変わりそうなので章を切り替えます。

何とか話にオチをつけるまで持って行きたいなぁ…

二人の男の利害が一致し、物事は動き出した。

軋んでいた歯車が噛みあい、固まっていた潤滑油は本来の滑らかさを取り戻す。

目先の事、立ち位置、能力……そういった不足を補完し合えた結果は

翌日の朝にベイカーが出力したマップに集約されていた。


野良ストレイさんが何の処置も無い人だという事を考慮すると、経路は1つ」


黒焦ベイクげがセキュリティをオフにした直後に、登攀で侵入する。

これは、正面玄関に銃を装備したタレットが設置されている為だ。


登った後、セキュリティが取り戻される前であれば扉から、

失敗に終われば窓を破壊して侵入。以降の経路は無線でのナビとなる。


「内部のマップまで手に入ったのか」

「改築前のを基にしたデータです。無いよりマシだと思ってください」


ああ、無いよりはいい、と伏が言い、ベイカーも頷いた。



話し合いの後、腹を括ったベイカーは、ネットワーク上で情報を収集。

途中で3回ほど休憩を挟んだが、その甲斐はあったといえる。

伏は登攀用の道具、通信機材に武器を買い揃え、移動手段を手配した。

ベイカーはサポートに専念してもらい、運転手は別に用意した。


その後、入手した情報を元に作った地図が、いま2人の目の前にある物だ。


「入ってからは出たとこ勝負です。私がセキュリティを可能な限り抑えます。

 でも何か変な魔法で対策されていれば……お手上げです」


ベイカーの頬はこけており、その不健康そうな外見をさらに不健康にしていたが

瞳には確かな意思が宿っていた。


「心配するな。その時は、遠慮なく見捨ててくれればいい」


伏はベイカーに、自分が人の身体には無い能力がある点は告げていなかった。

切り札を晒すという事は、己の身を滅ぼす事にも繋がりかねないからだ。

伏とて、目の前の男が企業と繋がっている事を調べないほど愚かではない。

猜疑心ではなく、自衛として疑う。それが一匹狼にできる、精一杯の対応だった。




数時間語、伏はターゲットのいる館に足を踏み入れた。

やれるだけの事をした、などと言うつもりは無かった。


逃走用の運転手に待機してもらい、ベイカーは拠点から遠隔でハッキングをしている。

拠点に設置してある端末を遠隔操作しつつ、近くの建物から直接のアクセスを試みている。

カレラという男がサポートについているので心配はないと言っていた。


合図と同時にセキュリティがダウンした瞬間、壁は単なるアスレチックであった。

フックを引っ掛けて一気に壁を登り、建物の窓から忍び込む。

内部のドアは自分が正当な住人かのように滑らかに開き、古めかしい扉は

少し力を入れるだけで鍵ごと開けることができた。


地図の通りに作られている部分が多く、怪しげな調度品やら等身大の人形やら

ゴミだか骨董品だかわからぬ品やら、とにかく混沌としてはいるものの

特に迷うことなく、奥にある部屋を目指す。


それも目的の品が安置されているであろう廊下に足を踏み入れるまで話ではあったが。


「これは――」


明らかにおかしい、という言葉を飲み込む伏の前には、長い長い廊下が続いていた。

果ての見えぬ直進などというものが、この屋敷に存在していようはずもない。

だが引き返そうと思うも帰路は失われ、ただ永遠にも見える直線通路が広がるのみ。


「異常だ。ベイカー、そちらから俺を捕捉できているか」


通話状態の電話がきちんと繋がっているかを確認する。


「ええ。警備用のボットやアラームは、10分は無効化できます。一体何が?」

「今、俺の目には廊下が永遠に続いているように見えている。果てが見えない」


これが義体であれば声で会話する必要もないのだが、生身ではそうもいかない。

鼻で匂いを感じ、耳をそばだて、静かに呼吸する。

目が騙されているなら他の部分で補うしか方法はないのだろうか。


「待っててください……5mも進めば扉が見えるはずです。ちょっと駒を向かわせます」


そういうと、どこから現れたのか、警備用の小型機械が後ろから音を立てて現れた。

500mlのボトル程度の大きさだが内蔵しているスタンガンの威力は侮れない。


そのままロボットが前に進むと、ベイカー曰くドア手前1m地点でガスが噴射。

直後、小さな針が射出され、先行した機械は地面に縫い止められたような形で壊れた。


「……罠。ターゲットは内部だと思うか」

「間違いなく。さっきからアクセスかけようと思っているんですが、その奥は

 何があるのかも捕捉できませんし、完全にネットワークからは遮断されてます」

「気味が悪い。見える景色以外はお前の言うとおりだ。どうなってるんだこれは」


私にはわかりかねますよ、と言った返事があるかないかのタイミングで音が乱れる。

瞬間、何か得体のしれないものが扉の向こう側で蠢いているような感覚を覚える。


「……ここか……が本番み…です。こっちも先程から……まず……拠点が」


天井の照明が明滅する。この場に留まるのは危険だと判断し、

伏は扉のあるであろう位置に蹴りをいれると、内部に飛び込んだ。

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