第8話 盲目な青い薔薇
「プレンツと言ったな」
広場を出て曲がり角を通ろうとすると目の前に水色の髪の男性が立っていた。
舞台の衣装だろうか。白いスーツのような服を着ている。アクセントとして髪と同じ色の線がスーツに走っていてなんとも涼しげで気品ある格好をした人だ。
なにやら難しい顔をしている。
「はい。こんにちは。プレンツです。これからよろしくお願いします」
「ナレアと話していたな?」
「はい。話してました」
ん?一体なんだ?ナレアさんと話したかったところをぼくが邪魔してしまったかな。
「ナレアはな。とても人気があるんだ」
「はぁ」
「昨日観劇していたと言ったな。」
「はい。素晴らしいもの見ました」
「ふ、ありがとう」
何なんだこの人何が言いたい。
「あの声聞いただろう?」
「ナレアさんの声ですか?」
「そうだ」
「はい。聞きました。透き通るような声で心の底へも語りかけられるような素敵な声でした」
「ふむ。子供の割にはよくわかっているじゃないか」
「はぁそれはどうも」
「だが気に食わんな」
「はい?」
「ナレアの魅力を一番わかるのはこの私だ」
はぁそういうことですか。この衣装といい、きっとこの後舞台に出るのだろう。色恋沙汰もいいけどもう少し本番に集中しておくべきなのでは?
ど素人に言われたくないだろうが。
「……ナレアさんのこと好きなんですか?」
「!?何故それを!?」
いやわかるだろ!
「まさかフレンの奴めが吹聴しおったな!」
「いやいや違います!ただ……その……貴方の目がなんていうか、ナレアさんを写していたというか」
何言ってるんだぼくは。素直にわかりやすいからだと言ってしまえばいいものを何故か言い訳をしてしまった。本能的な処世術が発動した。
「!?お前!私のナレアに対するこの愛の炎を私の瞳から感じ取ったと!そう言うのか!」
違いますけどね。普通に好意ありそうなこと言ってたからバレただけですけどね。
「ええ、まぁはい。そうです」
「団長が昨晩言っていた団長ですらわからないお前の魔法はそういう魔法なのか!」
「いえ全然違います」
「まるで魔法だな」
「だから違うって」
自分で魔法と言っておいて『魔法だな』ってこいつアホなのか?
黙っていればクールな雰囲気で頭も良さそうなのに色々残念なやつだ。
「わかった。皆までいうな」
「いや全然わかってないですよ。話聞いてます?」
「ああ、わかっているさ。プレンツ。私とナレアのキューピッドになって欲しい。君の魔法ならできるだろう?」
「だからできないって」
シュバっと何か出した。薔薇だ。薔薇を口元に持っていきキスした。
何だこいつ。
「もちろんお前に全てを丸投げはせん。左手は添えるだけ。よくいうだろう?お前にはその左手を任せる。頼りにしている」
「するな」
「ではこれから頼んだぞプレンツ。これから舞台に立たなければならぬ故。Salut」
薔薇をぼくに投げながら行ってしまった。物を通路に捨てるな。大体名乗りもしないでお前一体誰なんだ。
頭が弱いらしい情熱派の涼しげなイケメンを見送り、部屋に着いた。拾った薔薇は机に置いた。造花だこれ。何とか二段ベッドへ上がり横になった。
心身共に疲れた……。少しだけ横になろうと思っただけだったのに気絶するようにそのまま朝まで寝てしまった。




