表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
リアリティ・チェック  作者: こざかな
第1部 ― 鯨中学校学期
9/13

第8話:さまよう思考

第8話、公開しました!ぜひお楽しみください!

「小川! 集中しろって言ってんだろ!!」


「はい、すみません!!」


鯨中学校の訓練場では、合同訓練プログラムが進行中だった。各班は近い位置で、それぞれ別のメニューをこなしている。


青木班は剣の振り。

七瀬班は気の制御。

沢村班は反応速度の訓練。


そして青木班の中心には、いつも通り小川に苛立っている青木がいた。理由は単純。小川がまったく真面目にやらないからだ。


「剣の持ち方が違う! ちゃんと握れ!」


「に、握ってますって……俺なりに! ほら、動いてるし!」


小川は両手で剣を握った。……が、位置が両方ともズレている上に、振りがふにゃふにゃだ。もし実戦でそれをやったら、瞬殺で終わる。


「違うって! ほら、私みたいに!」


青木は刀を構え、左手を柄頭カシラ側、右手を鍔元のすぐ下に置く。


「いい? こう。……それで!」


青木が振り下ろした瞬間、空気が“裂ける音”がした。周りの生徒の中には、空気の揺らぎ――波紋のようなものを見たと言う者までいる。


小川は思わず見とれた。力任せではない。なのに、振りそのものが異様に重い。


「ねえ。今の振り、なんであんなに強かったと思う? 別に全力で振ったわけじゃないのに」


「……フォーム?」


「正解。そこまで分かるなら上出来」


「えっ、褒めた!?」


青木はくすっと笑った。小川のアプローチは心底うざい。だが“面白い奴”ではある。何より――ほんの少しでも努力すれば、化ける可能性はあると青木は思っていた。


「構えで気を巡らせて体を強化するのと同じ。戦い方にも“気”は連動する。

気を全身で制御して、刃に乗せる。そうすれば弱い振りでも、鋼を断つ威力になる。いい? 剣のアート・オブ・ソードを甘く見るな。真面目にやれ、小川」


小川はため息をつき、もう一度構え直す。フォームを直そうとして――


「もっと愛情くれたら、俺うまくできるのに!」


「夢見てろ。手を動かせ、小川!」


小川は情けない声を出しつつ、また練習に戻った。


少しマシになった振り(……と言ってもハードルは低い)が続く中、小川は他のエリートたちに目を向ける。七瀬班と沢村班は大体何をしているか分かっているので、正直興味はない。


小川が見ていたのは、ひとりだけ離れて訓練しているエリートだった。


(クルミ先輩、ずっと一人なのに……誰よりも追い込んでる。見てるだけで疲れる。もうこの剣振りたくねぇ……!

でもサボったらラナー先輩に怒られるしな。……怒られるのも、悪くない気がしてきた)


クルミサヤは、ただ素振りをしているわけではなかった。訓練用のダミー相手に、技を叩き込んでいる。


小川の目では追い切れない。

動きは速く、正確で、無駄がない。氷の上を滑るように軽いのに、攻撃は冷たく容赦がない。


(うわ……こわ。ユメコちゃんとホナミ、よく一日でも持ったな。絶対クソ厳しいタイプだろ。

俺が多少マシな剣士だったとしても、絶対に自分から“教えてください”って行かねぇ。自殺だろそれ)


クルミが一度攻めの手を止め、息を整える。視線を感じたのか、ふいにこちらを見る。


――目が合った。


小川は固まった。まさか自分を認識するとは思っていなかった。

ほんの一秒。けれど妙に長い一秒。


クルミは何も言わず視線を外し、また黙々と訓練を再開した。


小川は小さく息を吐いて、自分の練習へ戻る。


(今の、やば。怒ってるわけじゃないのに……怖い。二度と目を合わせたくねぇ)


その直後だった。


小川が剣を振り下ろした瞬間、握りが甘くて剣がすっぽ抜けた。

飛んだ剣は後方へ――ほぼ真っすぐ――日向ヒキの方へ。


「ぎゃああああ!!」


刃は地面に突き立ち、日向の足元数センチのところで止まった。

日向はゆっくり剣を見下ろし、ゆっくり顔を上げ、小川を見る。


小川は目を見開いたまま、気まずそうにへらっと笑った。


「おい!!」


「わ、悪い! ヒキ!」


「ふざけんな! どこに振ってんだよ! 握り強くしろ!!」


「ごめんって言っただろ!」


小川は剣を引き抜いて元の位置へ戻る。そこには青木が待っていた。


「小川」


「えっと……ラナー先輩、こんにちは!」


「……言葉が出ない」


「じゃあ“好き”って――」


青木はファイルで小川の頭をバシバシ叩きながら叫んだ。


「集中しろ!!」


-


一方、クルミ。


ダミーに最後の一太刀を入れて止まる。


(……はぁ。なんなんだ)


集中できない。理由は分からない。けれど“何か”が引っかかる。今までほとんど感じたことのない、奇妙な感覚。


そのせいで、今している訓練に意識が乗らない。


(小川マコト。鯨中学校の最下位。怠け者。どうしようもない落ちこぼれ)


クルミは水を一口飲み、刀を鞘に収めた。


(……どうして、あんなふうに“ふざける”)


クルミには理解できない。正直、クルミは普段あいつのことなど気にも留めていない。

授業は聞かない。青木にベタベタ絡む。目立ちたがりで、剣のアート・オブ・ソードに対する敬意も薄い。クルミの目には、ここにいるべき人間には見えない。


――なのに。


(……分からない。私にとっても、あなたは“謎”だよ。……道化師)

こんにちは!正直に言うと、これから数話は少し“つなぎ回(ちょっと日常寄り)”っぽくなります。ただしもちろん本編の正史メインプロットにちゃんと関わる内容です(笑)

「つなぎ回」というのは、単純に“あまり大きな出来事が起きない”という意味です。でも、もうすぐ大きな転機に入るので、ぜひ引き続き見守ってください!


それと今回の章は翻訳がかなり難しくて、何度も修正しました。もし分かりにくい部分や「ここどういう意味?」というところがあれば、遠慮なく教えてください!


「死にそうなんだけど! 続けられるように支えてくれ!!」

――小川マコト



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ