第6話:気になるヤツら
第6話を公開しました!
夕方もだいぶ深まった頃、小川はコンビニへ向かって道を歩いていた。母が作ってくれた夕飯は最高にうまかったのに、なぜか甘いものが欲しくなってしまったのだ。もちろん、この時間に家で何か食べるのは母に許されない。だからこっそり黒いパーカーとスウェットに着替え、夜の街へ出てきた。
「何買おうかな? おにぎりでもいいし、まあポテチで妥協してもいい。冷えた炭酸も欲しいな!」
頭の片隅には、日曜から始まるクルーズ研修のこともあった。丸々一週間、家から離れる。信じられないくらい楽しみで、気づけば小川は道を走り出していた。
「まあ、食欲も増えるしちょうどいいか!」
そう言って、コンビニへ一直線に駆け出した。
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コンビニの外で、小川は肩で息をしていた。窓越しの明かりが顔を照らし、汗が額から流れ落ちる。長袖長ズボンで全力疾走する季節じゃない。
「はぁ……はぁ……ちょ、ちょっと息整えよう。……五月の夜にパーカーとスウェットで外走るな、俺……。やば、帰ったらシャワー確定だ。ったく」
とはいえ、走った分だけ腹は減った。伸びをしてから扉へ向かい、開けようとしたその瞬間――反対側から勢いよく扉が開いた。
ギリギリで避ける。
「うわっ! ごめん! 急いでて!」
「あ、ああ、うん……だいじょ……ぶ……?」
小川が振り返ると、女の子が店から飛び出していくところだった。顔はよく見えなかったが、同い年くらいに見える。ピンク色のパーカーに短パン。金髪を短めにまとめ、小さなポニーテールにしていて、何かに追われるみたいに全力で走り去っていった。
「……なんだあれ。まあいいや。俺は俺で、夜食タイムだ!」
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その後、小川はなぜか渋谷スクランブル交差点にいた。別に用事があったわけではない。ただ、なんとなく夜をもう少し味わいたくなったのだ。外に出ること自体、あまりない。だからこそ、今夜は少しだけ寄り道してみたかった。
小川は段差に腰を下ろし、桃味の炭酸を飲みながら、ピザ味のチップスをかじる。横にはおにぎりが二つ。さらにポケットにはライチ味の炭酸も忍ばせてある。……そう、彼はそれだけ腹が減っていた。
「夜でもすげぇ人だな。みんな寝ないのかよ、はは」
正直、頭の中には別の心配もあった。クルーズ研修で、木剣のままどうやって訓練を乗り切るのか――というやつだ。
「うぐ……不死鳥先生、ちゃんと面倒見てくれんのかな。内臓吐くほど鍛えるとか、マジで勘弁なんだけど……」
ぼんやりしながら二本目の炭酸に手を伸ばした、そのとき。
悲鳴が上がった。
黒ずくめの男が、女性のリュックをひったくって走り去ろうとしていた。明るく人も多いスクランブルでやるとか、バカすぎるだろ……と小川が立ち上がりかけた瞬間、別の“誰か”が動いた。
同い年くらいの少年が、男の足を払って転ばせ、そのまま押さえ込んだのだ。周りの誰かが通報したらしく、すぐに係の人たちも駆けつける。少年は女性にリュックを返すと、何事もなかったみたいにその場を離れていった。
小川は、結局一歩も動けないまま、全部を見ていた。
「……今の、ちょっと……カッコよかったな」
またしても顔はよく見えなかった。でも年は近そうだった。青いセーターに黒いジーンズ。髪は樫みたいな色で、後ろがハリネズミみたいにツンツン跳ねている。小川の中では、漫画やラノベで言うところの“相棒枠”っぽい雰囲気がした。
「はは……なんだよ、変なやつ。……てか、今日ずっと人の顔まともに見えてなくね?」
小川はため息をついて、もう一度伸びをした。
「今日のイベントはこれくらいで十分だな。……って、今何時……九時!? やっば、母さんにバレたら殺される!」
残りの飲み物や袋をまとめ、小川は家へ向かって全力で走り出した。何だかんだ、今夜は妙に“出来事”が多かった。
あの二人と、またどこかで会うことはあるのだろうか――。
(……いや、ないない。さすがに)
こんにちは。短いですが、読んでいただきありがとうございます。今回は今後の章につながる内容で必要だと思ったので、先にこちらを投稿しました。そのため、もともと第6話として予定していた長めの章は第7話になります。
それでは、第7話もぜひ楽しみにしていてください!書くのが今から楽しみです!
「次の話も見逃さないでね! じゃあ、急ぐから!」――謎の少女




