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リアリティ・チェック  作者: こざかな
第1部 ― 鯨中学校学期
11/13

第10話:クルーズ研修、出航!

こんにちは!お待ちいただきありがとうございます!第10話です!

ついに日曜日がやってきた。


 時刻は午前4時30分頃。巨大なクルーズ船が停泊している港では、波が静かに船体に打ち寄せ、冷たい風が吹き抜けていた。


 3年A組の生徒たちは、その目の前にそびえる巨大な船”を見上げ、圧倒されていた。


 白と金で統一されたその船は、まさに豪華絢爛。何層にも重なった階層があり、全員収容するのに半分も使わないのではないかと思えるほど広い。側面には救命ボートが並び、いくつかの階にはバルコニーもあり、外に出て景色を楽しめるようになっている。


 誰もが、船内がどんな風になっているのか想像していた。探索できるフロアは無数にあり、しかも訓練はまだ先――つまり、思い切り楽しめるというわけだ。


「よっしゃあああ!! 時間だ!!」


 こんな早朝にも関わらず、小川はすでにフルテンションだった。周囲から一斉に視線が飛ぶ。


「朝早すぎるんだよお前は!!」

「うるせぇ黙れよマジで眠いんだよ!!」

「海に突き落としてやろうかコラ」

「やるかコノヤロー!」


 小川はそんな声を全部笑い飛ばしながら、木剣を無造作に振り回していた。


 本来の刀が使えないという不死鳥先生の制限には未だに不満があったが、それでも楽しむ気は満々だった。


 後ろからため息が聞こえる。


 振り返ると、松本、ヒュウガ、ウラナがぐったりしていた。ウラナは特に不機嫌そうに睨んでいる。


「マコト……今ほんとに無理。これ以上うるさくしたら、足の骨抜いてケツに突っ込むから」


 小川は冷や汗をかいてゆっくり前を向いた。


「……はい、了解です」


 松本が何か言っていた気もしたが、うまく聞き取れなかった。なぜか三人が少し遠く感じた。


 ふと右を見ると、田中がいつもの女子グループと話している。小川は、さっきまでの“最高の妄想”を思い出しながら近づいた。


「やあやあお嬢さん方! クルーズ楽しみだろ? 水着ちゃんと持ってきた? プール絶対行くぞ! ユメコちゃんも楽しみだよな? 今日絶対最高になるぞ!」


 女子たちは一瞬イラッとした顔を向けて、そのまま無視して会話を続けた。


「……あれ? 聞いてる? どこにプールとかあると思う?」


 一人が鼻で笑う。


「小川、ちょっとどっか行ってくんない? 話したくないんだけど。それにその質問キモい」


「キモくないだろ! みんなで楽しもうって言ってるだけだし! 島どんな感じなんだろうな? ビーチとか――」


「無理無理。行こ、みんな」


 田中は一瞬だけ小川を見て、そのまま他の女子たちと離れていった。


「えー、普通の質問じゃん……」


 小川はため息をつき、スーツケースを見る。


 一週間分の服、水着3着、菓子、その他必要か分からないものまで詰め込んでいた。


「……まあ後で楽しめばいいか」


 その時、前方から手を叩く音が響く。教師たちが集合を促していた。


 静岡先生が声を張る。


「はい、出席確認終わりました! これから乗船します! 各自すぐに部屋へ行って荷物を整理してください。その後ロビーに集合、週間スケジュールを配布します!」


 歓声が上がる。


「よっしゃああ!! パーティーだ!!」


-


ロビーに入ると、中はとにかく豪華だった。

ガラス張りのらせん階段が、見えるだけでも十階以上へと伸びている。赤い絨毯の床に、端にはグランドピアノ。あちこちにテーブルが置かれ、色とりどりの照明が光っていた。大きな窓からは海がよく見え、娯楽施設や買い物ができそうなエリアもいくつもある。


小川はすっかり圧倒されていた。


「うおっ……やっば、この船めちゃくちゃすげえ! 見ろよあれ! あとで絶対全部回ろうぜ!」


松本が鼻で笑う。


「はいはい、後でな。てかエアホッケー台あったら俺、お前ボコボコにするわ」

「望むところだ! でも卓球台があったら俺の圧勝だからな。速すぎてお前の首飛ぶぞ」


小川と松本が熱い小競り合いを始める一方、日向と占は周囲をきょろきょろ見回していた。


「海、すっごく綺麗で青い……! ヒキくん、あとで泳ぎに行きたくない? プール探そうよ!」

「ふふ、上の階じゃないかな。クルーズってだいたい上の方に屋外プールあるし、多分そこだよ」

「やった! ねえユメコちゃん、すごくないこれ?」


たまたま隣に立っていた田中へ、占が振り向く。

田中は小柄なピンク髪の占を見下ろして、それから興味なさそうに視線を外した。


「まあ、別に」


「もうちょっと私にも興味持ってよ!?」


「“バカ四人組”の一員と積極的に関わる気はないから」


田中は別のグループの方へ歩いていく。占は頬をふくらませた。


「いじわる!」


小川はくすっと笑って近づいた。


「気にすんなよ、ユメコちゃんはいつもあんな感じだろ? それは俺が一番よく知ってる!」


占は、さっき田中が自分に向けたのとそっくりの冷めた目を小川に向け、ため息をついた。


「……ふーん。まあいいや」


「え、何その反応」


小川が言い返そうとしたその時、不死鳥先生の怒鳴り声がロビー中に響いた。


「おいガキども! 集まれ!!」


その声だけで全員が一斉に先生たちの前へ集まる。

不死鳥先生が静岡先生へ顎をしゃくる。静岡先生が咳払いした。


「みなさんはこれから各自の部屋へ移動して、荷物を片づけてください。終わったら船内放送でロビーへの集合を知らせます。それから、今から部屋のカードキーを配ります。これは部屋の鍵でもあり、船内のお店で使う支払い用カードでもあります」


生徒たちがざわつく。


「ただし、あなたたちは三年生で、お金をあっという間に使い切りそうなので……使用上限は五十万円です。船内には休憩できる施設も、訓練できる施設もたくさんあります。計画的に使いなさい。ロビーに戻ってきたら、一週間分のスケジュールを配ります。さあ、今は勝手にうろつかず、自分の部屋へ行くこと。探索はそのあとです」


生徒たちはすぐに部屋へ向かい始めた。小川は松本と日向に追いつく。


「俺ら三人が同じ部屋で助かったわ! メグミも一緒ならよかったのに。まあ三〜四人部屋だし、女子だから無理か」


松本が半笑いで振り返る。


「いや、むしろヒキが一番残念がってるだろ。メグミと一緒なら――」


日向が松本の口を塞ぐ。


「と、とにかく! メグミは無理なんだからしょうがないだろ! 三人で十分だよ! ほら、早く行こう!」


「そうそう、マコト。今回の研修、台無しにすんなよ? 俺ら、こういうの必要なんだから」


二人はそのまま話しながら歩いていく。小川だけ少し立ち止まった。


(台無しにすんなよ? なんだよそれ。俺は俺らしくするだけだろ。……急に何なんだよ。まあ、まだ朝早いしな。眠いだけか)


-


205号室


「うわああ、やっと終わった!」


荷物を全部片づけ終えた小川は、ベッドに顔から倒れ込んだ。


「なんで俺らの部屋、二階なんだよ! 荷物持って上がるのだるすぎ!」


日向は隣に腰を下ろし、ため息をつく。


「大げさすぎ。そんな大した距離じゃなかっただろ。ほんといつも通りだな」

「おい、それどういう意味だよ」

「今のお前、うざい」

「思いやりゼロかよ」


松本がパンと手を叩く。


「はいはい、落ち着けお嬢さん方。三人部屋でよかっただろ。じゃなきゃお前ら二人を同じベッドで寝かせてたわ」


小川と日向は一瞬松本を見て、互いを見て、また松本を見た。


「それは無理」

「お前外に出す」


「ヒキくーん、辛辣~。メグミに言いつけちゃおうかなぁ」

「それはやめろ!」


狭い部屋の中で日向が松本を追いかけ始める。

その間に小川はベランダへ出て、海を見下ろした。まだ船は動いていないのに、それでも妙に胸が高鳴る。


「待ってろよリンゴ島! 小川マコト様が行くぞぉぉ!!」


-


245号室


「ユメコと同じ部屋になるなんて意外だったー!」

「……まあ、最悪ではないわね」

「とにかく、トラブルだけはやめてよね」


占は田中と日向マヤと同室になっていた。

他の女子たちは別の部屋にまとまっていて、田中と日向は元々二人だけだった。占は男子たちと同室になれるわけもないので、結果的にここが一番妥当な組み合わせだった。


「でもやっぱり、マコトたちと同じ部屋がよかったなあ!」


占はベッドへ倒れ込みながらぼやく。田中はため息をついて自分のベッドへ座った。日向マヤは言いたいことがあるようだ。


「なんで? あのバカどもに囲まれて疲れないわけ? あんたもあんたで似たようなとこあるけど、あそこまでじゃないでしょ。特にマコト。あいつにイラつかないの、ほんと謎なんだけど」


占は視線を落とし、少し申し訳なさそうな顔になった。


「……正直、最近ちょっと疲れてきてる。たぶん、もう三年生になったからかな。マヤの言う通りかも。ふざけるの自体は今でも楽しいけど……マコトには、そろそろちゃんとしてほしいって思う。

私たち、もうすぐ高校受験だし。マコトと違って、私はちゃんとした学校に入りたい。ジュンペイもヒキくんも、最近は似たこと言ってるし。みんな剣の術 ことも続けたいし、ちゃんと上を目指したい。でもマコトは、その辺全然分かってない気がする。怒らないようにしてるけど、最近はこっちも結構しんどくて……。だから、ちょっとでいいから……大人になってほしいなって」


占は手を重ね、親指同士を落ち着かなさそうにこすり合わせた。悪口を言っているみたいで、少し罪悪感があるのだろう。


田中が静かに口を開く。


「別に、悪く言ってるわけじゃないでしょ。事実を言ってるだけ。マコトは成長したほうがいい。時々、本当に五歳児みたいな精神年齢してるし。正直、あいつの良いところを考えるのって難しいわ」


「い、一応あるよ!? すごく面白いし……たまにはだけど」


田中は占のそばに移動し、その手の上に自分の手を重ねた。


「いいのよ。そう思っても。人間って成長するにつれて、他人に対してこういうこと考えるようになるものだし。高校って、きっとすごく大事な時期になる。だから、私たちも頑張ろう?」


占は顔を上げて、少し笑った。


「……うん。ありがとう、ユメコ」


「私も頑張る!」


日向も二人のそばへ座り、くすっと笑う。

三人が笑い合う中、田中は立ち上がってベランダへ出た。静かな海を見つめながら、後ろで楽しそうに話す二人を振り返る。


(占って、思ってたより悪くないのかも)


少しだけ見直した。ちゃんと真面目になるべき時を分かっている。それが田中には好ましかった。


田中は再び海へ視線を戻す。


(私は絶対にJ.R.S.アカデミーに入る。

そして、すぐに“剣聖”の一人になってみせる)

みなさん、こんにちは。更新を再開しました!

3月の間しばらく不在だった理由については、活動報告を読んでいただければ分かると思います。


ついに物語が本格的に動き出してきて、ここからもっと面白くて引き込まれる展開に入っていくので、私自身とても楽しみにしています!

これからも引き続き読んでいただけたら嬉しいです。


次の話は明日投稿する予定です!

それでは、良い一日を。そして、どうか健康に気をつけてください!


「よっしゃ! ついにクルーズ船だ! 見てろよ、ユメコちゃんを完全に惚れさせてやる!」

――小川マコト

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