『殺し屋』と『茶菓子』
俺は、世界最強の殺し屋。
俺にかかれば、どんなVIPでも確実に殺せるだろう。
逆に言えば、俺がこの手をくだすことで、今の世界を変えることだって可能だ。
裏の社会の帝王。。。
しかし、そんな俺が今、喉から手が出るほど欲しいものがある。。。。
今、目の前にある『茶菓子』だ。
「いやぁ、あなたが最強の殺し屋と聞いて、殺しを頼みたいんだけど、要求はいくら?」
いつも応接間に来て思う。
あの、皿に盛られた茶菓子を食うタイミングが分からない。
殺しのタイミングなら完璧な俺を、こうまで戸惑わせるとは。。。
特に一番気になるのは、あの高級そうな和紙に包まれたあの茶菓子だ。
『ふんわり粉雪きなこもち』
なんて、ふんわり感のあるネーミングの茶菓子なんだ。
口の中でふんわりとろけて、甘みがとろけだす感が最高の茶菓子に違いない。
くそぅ、ここで俺があの、ふんわり系のお菓子をほおばりながら「要求は1億」とか言っても格好が付かん。
ましてや、口の周りが『きなこ』だらけでは、今後の会話にも支障をきたすかもしれん。
ここは我慢だ。
ぐぅぅぅぅぅ
「あ、すいません。実は、私食事がまだでして。ちょっと失礼」
野郎!
こともあろうに、俺との交渉中に『ふんわり粉雪きなこもち』に手を伸ばし、食いやがった!
なんてことだ、それは一つしかないいんだぞ。
しかも、案の定、口の周りを『きなこ』だらけにしてやがる。
お前の腹の周りを血だらけにしてやろうか!
「いや、失礼。実は、あなたに殺しを頼みたいのはこの男です」
とか、言いながら、なんで2つ目のお菓子に手を伸ばしながら言ってんだ。
「ほの、ほとこはへふね」
しかも、煎餅食いながらしゃべってんじゃねぇ。
殺しのターゲットの写真の上に、煎餅の食べカスが落ちてるじゃないか!
ある意味、お前がこの男を殺したわ。
それはさておき。。。
こいつの食ってる煎餅。。。
美味そうな香りじゃないか。
煎餅の入っていた袋の販売元には、煎餅王国『新潟』と書いてあるではないか。
なんてことだ。
あの『コシヒカリ』を贅沢に煎餅にしたあげく、じっくりと醤油と炙られたような香ばしいかおりが。。。たまらん!
俺も、我慢の限界だ。
煎餅は。。。。もう一袋ある!
チャンスだ。
やつは、違う茶菓子に手を伸ばしている。
これはもう、お互い茶菓子を食いながら話していこうという合図ではないか。
世間一般では殺し屋はバーでブランデーしか飲まないと思われているかもしれんが、そんなことはない。殺し屋仲間で「笑笑」や「魚民」で忘年会もする。ましてや、我が家には、お徳用お菓子がストックされている。
「ほれで、ほまへは殺ひてほひいのは」バリボリ「ほのほほほは」バリボリ
「ほのほほほを」くちゃくちゃ「殺へはいひおふえんやほう」くちゃくちゃ
こうして、殺しの交渉が成立した。




