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なぜ巨竜は死んだのか

この話は嘘です。そして、フィクションです。


勇者一行は山の奥深くに住むという化け物を退治するために、危険な森や湖、谷を越えてついにその棲家に到達した。酒場で聞いた噂によれば、その化け物はかつて大陸中の人々を大量虐殺した恐ろしい存在であるという。


住処と思われる洞窟に恐る恐る入ると、冷たい空気と嫌な湿り気が背筋をなぞり、腐った卵のような臭いが微かに漂っていた。洞窟内を進んでいくと、仲間の盗賊が突然足を止め、目の前の大穴を指さした。そこには巨大な影が佇んでいた。竜だ。間違いない。


気づかれないように奇襲を仕掛けるため、一行は一度洞窟を出て作戦を練ることにした。夜が訪れると、洞窟からは恐ろしい化け物の咆哮が響き渡り、彼らの心にさらなる恐怖を与えた。しかし、それも束の間、夜は再び静寂を取り戻した。


次の朝、大穴を覗き込むと、驚くべき光景が広がっていた。竜が血を吐いて死んでおり、その傍らには女性のものと思われる髑髏が、花畑のように広がる岩の上に横たわっていた。僧侶は祈りを唱え、勇者たちは周囲に潜む気配を警戒していた。


その時、薬師が突然叫んで僧侶を静止させた。「待って!あの花は…竜すら殺す致死性の猛毒がある、絶滅したと思われていた『竜殺しの青い薔薇』だ!」


僧侶は驚きと恐怖の表情を浮かべ、慎重に後退した。薬師はその後、さらに奇妙なことを口にした。「この竜は、もしかするとこの薔薇を育てていたのではないか?」


その言葉に勇者たちは驚き、薬師の意図を理解しようとした。薬師は続けて説明した。「竜はかつてその力で恐怖と破壊をもたらしていたが、この青い薔薇はその力を中和するために育てられたのかもしれない。もしかしたら、この薔薇が竜に対する最後の償いの証かもしれない。」


一行はその話を聞き、青い薔薇の存在が単なる毒ではなく、化け物の深い内なる葛藤や贖罪の象徴であることに気づいた。竜がこの薔薇を育てていたのは、恐怖と破壊をもたらす自身の力に対する贖罪の一環であり、最後にはその毒で自らを滅ぼすことで、自らの過去を償おうとしていたのだ。


この発見により、勇者たちは化け物の行動とその死に込められた深い意味を理解し、ただの敵を討つ戦いではなく、複雑な心の葛藤と贖罪の物語を胸に刻むこととなった。勇者たちは洞窟を後にし、この物語を記憶に留め、次の冒険へと歩みを進めるのだった。

次回:なぜ女はそこにいたのか

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