閑話休題、日常回的なやつだね。
無事にヒュドラを倒したドラゴンスレイヤーとゆかいな仲間達、どうやらあそこが最下層だったようで魔法陣は一つしかなかった。(どのみちアインが重症なので帰ったが)
何とか帰還した俺達はダンジョン制覇と無事に全員生存出来たことに喜びながら、ギルドへと戻った。
「ようし、ここにいる奴ら全員!今日は俺たちの奢りだ!」
ギルドに帰り、ダンジョン攻略なんかの報酬を受け取り、早速そう宣言した。あっという間にギルドは一気にお祭りムードになった。
「…ねえ、こんな使い方して良かったの?」
「うん、この方が良いくらいね。」
「?」
冒険者になったばかりの新人が大手柄、なんて問題の種でしかないから、こうやって酒や料理で機嫌取りをする。これも大人の処世術ってね。
「おぉおう!のんでるかぁ!?」
うわ、ガウめっちゃ酔ってる。…酒くさい。あ、ちなみにお酒は15歳からというのがこの世界の常識らしい。ま、飲まないけど。
「おい、飲み過ぎだぞ。」
「いいじゃあねえかぁよ〜!べぇつにぃへるもぉんじゃねぇんだからよぉ〜、ヒック、うぅ…」
「はあ、悪いね。あ、コイツは俺が連れてくから。…ほら、行くぞ。」
「うお〜おれはまだのめるぞ〜、ヒック。」
「お、おう。じゃあな…兄ってのも大変だなぁ。」
あれを見るとうちの兄妹は案外大人しい、のかもなぁ。
「…ああはなりたくない。」
「…だね。」
夜も更けて、みんながテーブルやら床やらで眠りにつく頃、何とはなく夜空を見上げていた。
「…綺麗だなぁ。」
自分のいた場所では考えられないくらい綺麗な星空、見惚れてしまうほどだ。
(あれを見ると本当に異世界に来た、そんな風に感じるな。)
どうしてこんなところに来てしまったのか、何故この場所に来たのか、まだまだ分からないことばかりで、少し、『不安』になる。俺は、一体。
(どうなってしまったのだろうか。)
…今はいくら考えても仕方ないことだ。
「…ふう。さて、部屋に戻りますか。」
こうして今日も1日が終わる。
それからしばらくの時が流れた。ぶっちゃけ特に何も無く、日々が平和に流れていた。…まあ、魔物は日が経つにつれ増えているらしいのだが….、それも大した数ではないし、今のとこは安全だろう。
「ふんふんふーん。」
太陽が昇るか否か、そんな時間帯に俺はいつもの様に散歩をしていた。
「……♪」
スライムと。
何だか知らないが、普段はマナの部屋にいるのだが、どこからか俺の部屋に入って来て散歩をねだってくる。
「本当に何で散歩なんだ?」
犬なのか?コイツは。
「……♪」
…楽しそうだから、良いか。
散歩を終えれば、太陽は上りきっていて、もうすっかり街にもいつもの活気が溢れている。
「ふんふふーん。」
俺は部屋から武器を持って来て(新しく武器を買ったのだ。)ギルドの隣にある鍛錬場へ、まあ。修練場といってもただカカシみたいなのが置いてあるだけの場所だが…、まぁないよりはマシだ。
「…おや、来たのかい。」
「うん。新しい武器を試したくてね。」
彼はいつもここで練習をしている冒険者のおっさんだ。槍使いらしく、槍を持っているのだが、大体いつも酒を飲んでるか、ここにいるかしか見たことない。多分怠け者だ。
「…へえ、それ負けんだろ?よくそんな高いの買えたねぇ。」
「…金持ちなんでね。」
「さっすが英雄様。」
「褒めても何も出ないよ。」
「ハハハ。」
とまぁいつもこんな感じだ。てかこの剣が魔剣だと気づくとは、やっぱりこの人、只者じゃあないな。
そうしてそれぞれで鍛錬を始める。
(縦、横、斜め、そして!)
ガン!!とある音と共に、剣が伸びる。そうして、ぐさっとカカシに刺さる。
「へぇ、『槍』になるのかい。」
「はい、任意で槍と剣、二つのモ、形になります。」
「も?…いやぁ、面白い武器だねぇ。ちょいと手合わせしないかい?」
「え?」
「手合わせしてくれたら、槍の扱い。教えてあげるよ?」
「…分かりました。その提案、受けましょう。」
(これはプロ?から教わる良いチャンスだ、受けておいて損はない!)
それぞれ位置につき、準備を始める。本物の武器を使っても傷つかないように、魔法とか.色々するのだ。(ちなみに俺はおっさんにかけてもらった。)
「…それじゃあ準備は良いかい?」
「ええ、良いですよ。」
「それじゃあ、そちらからどうぞ?」
「…では。」
槍モードなら変形、相手は槍での戦いを所望だからね。さて、まずは手始めに。
「……ッ!!」
突き!
「いい突きだねぇ、でも」
「なっ…!」
突きで、相殺っだと!?いや、違う!槍が滑って!?
「うおっ…!!」
槍が、顔を掠める。
あっ危ねぇ…。
「ちょっと真っ直ぐ過ぎるかなぁ、もっとこう」
くっ…次は、横か!
「ふっ…!」
バックステップ…!!危ねぇ、当たるところだった!
「搦手、みたいなのも大事だよ?」
つ、強え!てか、速いッ!!しかもとんでもなく技量も高い、只者じゃあなさ過ぎるだろ!?
(や、槍で、か、勝てるビジョンが浮かばない。)
「さあ、まだ始まったばかりだろ?かかって来なよ。
」
「…ふぅ。」
ならば。
「…うおお!!」
「おや、また突きかい?まだまだ甘い、」
まさか、そんなわけないだろう。
「ふん!!」
柄を地面に叩きつけ、飛ぶ!!
「…なっ!」
そして、相手の頭上で。
「ッ突き!!」
「くっ!!」
ガァン!!
(止められた、しかし。)
「ソードモード!!」
「!?」
相手は柄で攻撃を止めた。つまり槍は今横を向いている!攻撃は出来まい!ここで槍を剣に、そしてそのまま横に!
(切る!!)
ガァン!
「チッ」
(槍を縦方向に、流石に思考が停止するとかはないか。そして)
「ふんっ!!」
「くっ…!」
落ちていく俺を柄で殴り、吹っ飛ばす。なんとか体勢を保たせるが。
「…負け、ですね。」
彼はもう俺の目の前に居た。
「…ふう。やれやれ…まさか空を飛ぶとはね。流石に予想外だったよ。」
「そうだろうなと思ってやりましたから。」
「なかなか策士、だねぇ。」
修練も終わり、こうして休憩がてらおっさんと会話をしていた。
「ちなみにだけど、よくあんなの思いついたよね。」
(某ハンティングゲームを参考にした、といっても伝わらないよなぁ。あ、そうだ。)
「小さい頃、流行ってたんですよ。棒を使って飛ぶの。それを参考にしました。」
「へえ、最近の子供は随分と、変な遊びをするんだねぇ。」
「まぁ、子供なんて大体そんな感じですよ。」
「そうだねぇ、うちの知り合いの子も虫を集めるのに夢中になってたし、そんなもんかも知れないねぇ。」
「おーい、そろそろ昼にしようぜー。」
「「おっともうそんな時間か。」」
「え?」
「うん?」
「「くっ…はははははは!!」」
「それじゃあ行きますか。あ、なんなら一緒に食べます?奢りますよ。」
「おや、良いのかい?じゃあ遠慮なく。」
「ご馳走様でした。」
(さて、お昼も食べたし、そろそろ仕事をしようかなぁ。)
「みんな、今日はこれからどうするんだ?」
「俺は鍛錬がてら、クエストに行くつもりだぜ。」
「じゃあ、一緒に行くか。」
「ああ、良いぜ。」
「他のみんなは?」
「私とマナとウィンは魔術の勉強ね。アインは?」
「俺はちょっと用事があるから、遠慮するよ。」
「そうか、じゃあ二人で…」
「おじさんもついて行っていいかい?」
「ああ、良いですけど。」
「よおし、それじゃあ早速行くとしよう。」
「なぁ、このおっさん誰?」
「いつも俺と一緒に鍛錬場にいるおっさん。」
「ふ〜ん。」
「…おっさん連呼はやめて欲しいかな。」
バァン!!
「うおぉ!?な、何だ!」
「はぁはぁはあ…。」
「ど、どしたん。話聞こか?」
「き、」
「き?」
「緊急クエストだ!!」
「…え?」