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夢を求めて、異世界転生。  作者: したのまちS
4/8

出会いは一期一会、しかし油断は禁物だ。

映画を見た帰り、子供の落としたボールを拾いに行ったら車に轢かれた俺は、気がついたら見知らぬ森の中にいた。そこには俺の知らない種族の人たちが暮らしていた。そこで10年暮らし、そして……。

「お、森の出口が見えて来たな。それじゃあ、出口あたりで一度休憩しようか。」

「うん。そうたね。」

村の大樹にある図書室で司書をしていたマナという女性と共に、旅に出ていた。

「おお、あれが冒険都市か……。」

「…大きい。」

森を出た先は広い平原が広がある。そこに一つ大きな丸い何かが見える。あの丸いのこそ、冒険者が作り、冒険者が集う、冒険者の街…。

「冒険都市ユーマ、かぁ。」

この世界の冒険者は昔こそ世界を股にかけ、未到の地へと踏み込む、名の通りの職業だったが……、

「ん?何か気になる事でも?」

「いや、冒険者も今じゃただの万屋とはな〜って。」

「あっそう。」

未知なる大地が無くなれば、冒険者の役割を無くなる。そうして行き着いた先が万屋、つまり何でも屋だ。夢のある仕事の末路がこれとは、なんとも言えない気持ちになるな。

「ところで、さっきから対応がなんか冷たくない?」

「…気のせい、だよ。」

…ま、いいけどね別に。

「さて、休憩も程々にして先に進もうか。」

「…ねぇ、今日中に着く?」

「…う〜ん。まぁ、無理かな。一度、何処かで一夜過ごさないとね。」

「…分かった。」




そうして夜、平原にて野宿をすることになった。

今、俺は見張りをし、マナさんは寝ている。よくある交代しながら見張りをするやり方だ。何故こんなことをするのかといえば、もちろん動物を警戒する意味もあるが…。

ぴちゃぴちゃ。

ぴちゃ。

目の前にいる、ちょうど両手で抱えられるくらいのサイズの丸い半透明な物体…いや、生物?(まぁ、分かりやすくいうならばスライムだ。)とにかく、この世界にいる魔物…これらにも気をつけなければいけないのだ。

「…。」

つついてみる。

ぷるんと揺れる。

「…。」

餌をあげてみる。

……跳ねた。…どうやら喜んでいるようだ。

俺の手に近づき、体を擦ってくる。…どうやら懐かれたようだ。

(かわいい。)

「まぁ、でも流石に街に持っていけないなぁ…。」

可哀想だが、ここに置いていくしかない。

…まぁ、今夜くらいはいいだろう。



日が昇り、朝になった。

「さて、出発だ。」

「…うん。」

スライムと別れ、あと少しの旅路を続ける。

目的の都市は、すぐそこにある。

「…ねぇ、本当にその子置いてくの?」

…スライムが俺の足に引っ付いてくる。

「…仕方ないだろ、街に持って行くわけにはいかない。」

「…別に、大丈夫だと思うけど。…魔物をペットにすることもあるし。」

「え?」

まじ?

「…いけちゃったよ。」

検問所にスライムを持って来ても全然注意されなかった。兵士さん曰く。

『確かにスライムは油断できない魔物だ。でもそれは大型の個体だけの話だ。小さい個体は大した事は出来ないし、そもそもスライムは人に懐きやすいからな。…それに何かあっても俺たちやうちの冒険者がなんとかするし。』

とのことだった。

「…スライムはペットの中だとかなりメジャー、だからどこの街でも大丈夫。」

そう言いながら俺が抱えているスライムを優しく撫でる。どうやら彼女も気に入ったようだ。

「さて、気を取り直して冒険者の集まる場所…ギルドに行こう。」

「…うん。」

「…何か言いたそうだね。」

「…ううん。そんなことない。」

冒険者になるのも、依頼を受けるのもギルドでしか出来ない。まずは登録をし、冒険者になった後、次の日から冒険者として活動をしていくつもりだ。

もう午後だし、お金は結構(師匠から貰った。)あるしあまり無茶をしたくないからね。

ギィィ…。

ドアを開け、ギルドの中へ入る。冒険者らしき人がたくさんだ。どうやら定番通り酒場(確か宿屋もやっているはずだ。)も経営しているようで、酒らしき液体を飲むものや食事をする者、談笑する者など様々だ。

「…カウンターは…あそこか。」

早速冒険者登録をして、宿をとってしまおう。

「おい。そこの坊主待ちな。」

おや?おやおやおやおや?これはもしかして…。

「こんなところに何しに来たんだ?」

振り返るとそこには1人の男がいた。こう言うのは失礼かもしれないが、いかにも悪人って感じだ。

「冒険者になりに…それが何か?」

取り敢えず、舐められたら終わりだと思ったので少し生意気に答える。ついでにマナさんを自分の後ろに移動させる。

「…ふん。」

そう言いながら、その男は行ってしまった。

「…なんなの、あの人。」

全く同感だが、う〜ん…何か引っ掛かる。

「ま、とにかくさっさと登録するかぁ。」

あの男のことは置いておき、冒険者登録や宿泊などを済ませる。これで、冒険者としての一歩が踏み出せた。ちなみに、スライム君は使い魔として登録できたのでしておいた。こうしないと一緒にクエストが受けられないそうだ。

(よく分からないけど、まぁ置いていくよりかは一緒の方が安心だからね。)

「さて、後は自由時間としよう。部屋で休むのも良し、どこか出かけるのも良し、本格的な活動は明日から行おう。」

「…分かった。じゃあ私はこの子と部屋にいるね。」

「…随分と気に入ったんだな。」

「……うん。」




自由時間に俺は街を探索することにした。拠点の地理が分からないでは今後が大変だろうし、

(色々見て回りたいしね。)

そうして色々な店を回りながら街を探索した。

武器屋、道具屋、防具屋等…お決まりなお店がいっぱいだ。

(色々買えたし、そろそろ帰ろうかな。)

そんなことを思った矢先、とある建物が目を引いた。

(ん?あれは…。)

何処にでもあるような、それでいて何処か異質に感じる。不思議な家のような建物だ。よく見ると建物の前に看板がある。

「…書店マジマール?」

どうやら本屋らしい。

(まあ、街の本屋にはこういう普通の家っぽい所にあったりするから…普通かぁ。)

しかし、どうにも気になるので、入ってみることにした。




店内は特に何かあるわけではない、普通の木製だ。

ただ…。

「…なんて書いてあるか分からない。」

修行中に文一通り字は教わったが、こんな文字は見たことがなかった。なんじゃこりゃ?

「何、あんたこれが読めないの?」

と、誰かに声をかけられた。声のする方え顔を向けると…。

(わお。)

金色の髪、白い肌、そして何より長く尖った耳。

俺のよくイメージするエルフそのものな女性がいた。

「…なに?さっきからこっちのことじっと見て。」

気味が悪いとでも言いたげに彼女はこちらを睨んでいる。

「…いや、綺麗だったからつい…。」

ここは適当なことを言って切り抜けよう。

「…っ!ふ、ふ〜ん?なら仕方ない?わね。」

チョロ。

(チョロ。)

「…チョロ。」

「ん?…まぁ、いいわ。それで?魔法文字マジーワも読めないあなたは何でこんな所に。」

「まじーわ?」

「ええ、この本の文字のこと。…本当に何も知らないの?」

なるほど。どうやら魔法使いの人には当然の知識らしく、とても怪しまれている。こりゃまじーわ。

「…ええ、まぁ。なにも知らないどころか、魔法すらまともに使えないです。なんならここが何のお店かも知らないです。」

「本当に何でこんなとこ来たのよ…。まぁ、いいわ。ここは魔法使い向けのお店で魔法書…つまり魔法について書かれた本を販売しているわ。ついでに言うとその本は煙魔法について書かれている本よ。」

「へえ…。」

そんな店があったとは…。この本も中を開いてもなに書いてあるか分からないし、本当に魔法使い向けのお店のようだ。

「ま、そう言うお店は基本的に夜にやっていることがあるし、ただの一般人が迷い込むことも…あるのかしら?まぁ、たとえあなたが魔法使いでもその本を選んでいるんじゃ、まともに才能は有りそうに無いだろうけど。」

「えぇ、そうですか?煙だって色々使い道はあると思いますけど…。」

「…じゃあ、何か思いつくこと言ってみなさいよ。」

「例えば、煙を周囲に発生させて、目隠しや逃走に使ったり…。」

「後は、煙を相手に吸い込ませて窒息させたり。」

「…え?」

「後は…う〜ん、ガスとかに変化できれば炎を付けて焼き尽くすこともできるけど…いやそもそもガスは煙なのか?」

「ちょっ、何!?さっきから…何!?」

何でそんな慌ててるんだろうか?

「…ああ、ガスが分からないのか。」

「そうじゃないわよ!?」

「え〜?…なんか変な事言ったかな?」

「はぁ〜。…あんたが何で魔法が使えないのか分かった気がするわ…ほんと使えなくて良かったわ。」

えぇ〜?…まぁ、いいけど。

「…まぁ、あんたの発想自体は良かったと…思う、わ。」

「別に悩むくらいなら下手なフォローなんか要らないよ。」

「…フ、フォ?…何言ってるか分からないけど、すごく馬鹿にされた気分だわ。」

彼女はそう言ってうんざりとした表情で俺を見た。…まったくひどいなぁ。

「…ふぅ、何だかとても疲れたわ。」

そう言いながら彼女はカウンターへ煙の本を持っていく。

「あれ、その本買うの?要らないみたいなこと言ってなのに?」

「…まぁ、一見使えなさそうでも何か役に立たこともある、…何となくそう思ったのよ。」

…ふ〜ん。

「それじゃ、…またね。」

「あぁ、うん。」

そうして彼女は店を出た。俺も何が書いてあるか分からないので、(後、めちゃくちゃ高かった。)このまま店を出ることにした。

「…。」

店の店員のおばあちゃんが、微笑ましそうにこちらを眺めていた。



一通り付近を見て回り、(夜も近づいて来たので)宿へ帰ることにした。ちなみに宿は冒険者ギルドの2階以降である。冒険者ギルドに近づくと、なにやらおとがきこえてくる。

「……!……、……!」

「……?……。………!」

「…何やら争いの予感。」

まぁ、冒険者は色んな人がいるから争いも多いのだろう。関わらないようそっと上に上がるとしよう。

扉を開けて、慎重に…。

「あれ?」

思わず声を上げたせいで、渦中の人物2人に気がつかれた。…最悪なのは。

「じゃあ、私この人と行くから!」

「ハァッ!?」

その2人の内、片方が先ほど店であったエルフっぽい人だったからだ。

(なぜ、こうなったのだろう…。)

そうして俺は今…、

「すいません、うちの者が本当に…。」

「いえ、これも何かの縁というやつですし…。」

渦中の人物、そのもう1人の兄弟に謝られながら、ダンジョン攻略へ赴くことになった。


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