序章 岩戸開き③
レイナ「突然の刺客、杉本先生には驚いたのだよ。早速、今日の出来事を振り返ろう。我々は〝岩戸開き”の鍵の手掛かりを見つけたい。まずミヨから、水無神社で感じたことを話してくれたまえ。」
ミヨ「杉本のインパクトが強すぎて…。ちょっと待ってね。」
私は深呼吸をし、心を落ち着かせた。水無神社で起こったこと、感じたことを少しずつ思い出す。
ミヨ「まず、夢で見た神社が〝水無神社“だった。社で瓢箪を持って手を合わせたら〝真実を知りたいか”〝扉の前にーーーなさい”と頭の中に響いて、その声がとても美しかったから女の人なのかな?と思う。」
レイナ「その後、私が話しかけてもミヨは5分程フリーズしていて反応はなかったね。」
ミヨ「うん。そしたら瓢箪が消えて左手に水無神社の紋章のようなマークが書かれていた。今も紋章は消えてないよ。」
サクラ「レイちゃんが話してくれた真実の歴史の隠蔽が気になるよね。今知っている歴史は偽装されたものと考えると、ミヨちゃんの〝真実を知りたいか”に繋がるよね。」
レイナ「うむ。〝扉の前にーーーなさい”は私たちの視野が狭いから、岩戸開きに繋がらない。だが、ミヨは歴史の真実を知りたくなったのであろう?」
ミヨ「うん。レイちゃんの話を聞いたら、本当の歴史を知ることで、私自身のことも知ることが出来るんじゃないかなって思って。二人と違って私、目標とかやりたいこととかないんだ。ただ流れに身を任せて生きてきたって感じ。自分の〝意志”を感じられないんだ。中学生の時、塾へ通った時もサクラやレイちゃんがいたからだし、高校だって…そう。自分の意志で決めてない気がする…。」
サクラ「私も…。お母さんに、貴方はお料理が上手だから管理栄養士目指したら?って言われたから、その道を選ぼうと思った。自分の意志で決めてない気がする…。レイちゃんは自分の意志で選択してる感じがする。」
レイナ「うむ。私は確かに流されてないね…むしろ周りや両親は放任主義だったからね。自分のことは自分で考えろという方針だったから。だが歴史を好きになったのは兄のおかげだな。兄が毎月買っていた月間ムーが山積みされていたのを見て、手に取って読んでみたら衝撃が走ったのさ。誰にでも好きになるキッカケはある。私だってまだ知らぬ私が存在すると思っている。歴史を追求することで、いろんな視点を習得することができるだろう?結果的に自分と向き合えると判断しただけなのだよ。」
ミヨ「なるほど。レイちゃんの頭が良い理由がわかった気がする。いつもそうやって疑問に思って考えてるんだね。私全然考えずに生きてきたんだって痛感するよ。」
サクラ「それにレイちゃんって人の意見を否定しないよね。それって…自分の価値観でモノを見ていないから出来ることだよね?」
レイナ「人の意見はある意味貴重なのだよ。自分に持っていない視点があるからね。例えば桜を見ても感じ方は十人十色になるのさ。それを否定することはできないだろう?どう感じるのか自由だからね。」
ミヨ「もしかして、岩戸開きって…本当の自分を知る覚悟が鍵なのかな。皆んなが皆んな十人十色の考え方を尊重し合うことができれば、争いごとは無くなる。けど、誰かが自分の価値観こそ全てだ!と主張している以上は争い事が無くならないってことなのかな?」
レイナ「うむ。現代にはない発想だね。まさに調和。憶測になってしまうが、縄文時代が長期に渡り平和だったのはお互いが尊重し合える関係性を構築したからだ。本当の平和とは白黒付けないことかもしれないのだよ。今の時代は白黒付けたがるのだよ。だからこそトラブルが絶えないのさ。」
サクラ「う〜ん…。岩戸開きって神話からすると、天照大神が素戔嗚の乱暴に幻滅して、天照大神が岩戸の中へ隠れたんだよね?外の光は遮断されてしまって〝太陽”を失ってしまった…このことから推測すると、天照大神が隠れるということは、太陽の死を暗示しているような気がする。多くの神々が集まって知恵を出し合って、無事天照大神を岩戸から出した時、再び太陽は復活し世界は光に満ちた。」
レイナ「その通りなのだよ。天岩戸のことわざが存在してね、〝おんなならではよがあけぬ“と言ってね、女性がいなければ何事も思うに任せず、夜も日も明けない。日の本は天の岩戸の昔から女ならでは夜も明けぬ国。」
ミヨ「だから日本なの!?ということは歴史的に〝女神“が歴史から消されているってこと!?」
レイナはニコッと微笑み、指を鳴らす。
レイナ「そうなのだよ!歴史には不自然な程〝女神“が隠されているのだよ。隠されているということは知られたくないナニカがそこにある!」
ミヨ・サクラ「岩戸開きって女神の復活!?」
レイナ「岩戸開きに必要な鍵が揃ったのだよ。早速今から、水無神社に行くのだよミヨ!」
ミヨ「うん!女神様の復活を祈って手を合わせてみる!」
◇
私たちは、水無神社へ向かうことにした。
◇
神社に着いた私たちは、早速社へ向かった。
サクラ「ミヨちゃん、頑張って!」
ミヨ「う、うん。」
ミヨは心を落ち着かせて深呼吸をし、ゆっくりと手を合わせる。すると、左手から水無神社の紋章のようなマークが少しずつ消えていった。
ミヨ「サクラ、レイちゃん!!左手の紋章が消えちゃったよ!!」
サクラとレイナはミヨの左手を覗き込んだ。
サクラ「ほんとだ…。やっぱり鍵は正解だったってことだよね?」
レイナ「うむ…。間違いなく正解だろう。根拠としては古事記や日本書紀から抹消された〝消え去られし女神の名“。この〝女神の名“を紐解いていく必要があるな。」
ミヨ「うん!一旦解決したぁ〜!!頑張ったご褒美にいつものカフェ行こう♡」
サクラ「はいはい。切り替え早いなぁ〜。行こっか〜!」
レイナ「ミヨ、走らなくて良いのだよ。夕方になると車通りが多くなるから気をつけるのだよ。」
ミヨ「大丈夫だよ!早く早く〜!」
サクラ「ミヨ!!危ない!!」
車のクラクションの鋭い音が周囲に響き渡る。
ガッチャンーー。キキキーッ。鈍い音とブレーキの音が同時に響いた。
レイナ「ミヨ!ミヨ!」
ミヨは血まみれになり倒れていた。呼びかけても反応はなく、虫の息だ。
サクラ「…ミ、ミヨちゃん…。ミヨちゃん!」
サクラはショックのあまり泣き崩れる。レイナは冷静になり唖然としている運転手に指示を出した。
レイナ「あなた、ぼっーとしてないで警察に電話するのだよ。私は救急車とミヨのお母さんに連絡をする。サクラ、君はミヨの様子を見ていてくれ。主に呼吸と意識の確認を頼むのだよ!」
ピーポーピーポー。
救急車の音が鳴り響く。
サクラ「ぐすっ…ミヨちゃん…救急車来たから、ぐすっ、頑張ってっ…ミヨちゃん…ーーあ!ーーーちゃーー。」
ミヨの意識が遠くなっていく。
◇
ミヨ「私死ぬのかな?やっと自分を探そうと決めたのに、見つかりそうだったのに…。」
周りを見渡すと白い光に包まれていて何も見えない。ひたすら真っ直ぐ歩いていく。
ミヨ「こんなところで私死にたくないよ。私は真実を知りたいの!この世界の真実を知りたい!私が何者なのかも知りたい!だからだから…」
夢で見た巫女が突然現れ、手招きしている。
ミヨ「あ…。夢で見た巫女。こっちに来いってこと?」
巫女の後をついていくと、眩い光に覆われ視界が遮られる。
??「見てきなさい。あなたが知りたいものを…。感じなさい。全ての真実をーー」
ミヨ「え!?」
ミヨは眩い光に吸い込まれた。
◇